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任意後見契約の手順や注意点を解説【信頼できる人を後見人にできる】

認知症などで判断力が低下した時に備えて、後見人(代わりに判断する人)を契約により立てるのが「成年後見制度」です。

成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。

・法定後見制度:裁判所が後見人を選任
・任意後見制度:被後見人(本人)が後見人を選任

本記事では任意後見契約の概要と、契約をする手順を解説します。あわせて任意後見契約の注意点を紹介していますので、成年後見制度の利用を考えている方はぜひ最後までお読みください。

任意後見契約とは

任意後見契約とは被後見人の判断能力があるうちに、あらかじめ公正証書による契約によって後見人を選定しておく方法です。法定後見制度と異なり、自分の意思で契約内容を決められるため、希望のライフプランを実現しやすいというメリットがあります。また任意後見人は親族だけでなく、弁護士などの専門家や知人など誰でも選任できます。

ただし下記に該当する場合は、任意後見人として選任できません。

・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
・破産者
・被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
・行方の知れない者

任意後見契約の手順

任意後見契約人を選んでから、実際に契約が開始するまでの手順は下記の3ステップです。

1.任意後見人の選任・契約内容の決定
2.公正証書による書面の作成
3.任意後見監督人の選任申し立て

任意後見人の選任・契約内容の決定

後見人を選任し、話し合いにより契約内容を決定します。

決定すべき内容としては、具体的に下記のようなものがあります。

・希望のライフプラン
・生活・医療・介護
・財産の管理
・後見人の報酬

契約内容が決まったら、原案を作成しておきましょう。

公正証書による書面の作成

作成した契約内容の原案と必要書類を公証役場に持ち込み、公正証書作成の申し込みを行います。

近くの公証役場は下記から探せます。
>>日本公証人連合会:公証役場一覧

申し込みから公正証書が用意できるまでの目安は1〜3週間程度です。公正証書の用意ができたら、公証役場にて被後見人と後見人、公証人3人の押印をもって、公正証書を完成させます。

公正証書の作成に必要な書類は下記の通りです。

・被後見人と後見人:住民票・印鑑証明書・実印・本人確認書類
・被後見人だけ:戸籍謄本

公正証書の作成にかかる費用は、公証人手数料や登記手数料などあわせて、2,3万円程度です。

任意後見監督人の選任申し立て

被後見人に判断能力の欠如が見られたら、家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任申し立てを行います。任意後見監督人とは、後見人が契約に従って行動しているかを確認・監督する役割の人です。その業務内容から任意後見監督人には弁護士や司法書士などの専門家が選ばれるのが一般的です。

具体的な業務には下記のようなものがあります。

・財産目録の提出管理
・家庭裁判所への報告業務
・被後見人と後見人の利益相反時における被後見人の代理

任意後見監督選任申し立てを行えるのは、下記に該当する人のみです。

・被後見人
・被後見人の配偶者
・四親等内の親族
・後見人

任意後見監督人の選定が行われた後、後見人は契約に基づいた仕事を開始します。

任意後見制度には取消権がないことに注意

任意後見制度では取消権がありません。取消権とは、被後見人が行った法律行為を後見人が取り消す権利です。例えば、後見人の知らないうちに被後見人が高額な商品を購入した場合、後見人はその購入を取り消せないということです。判断能力が低下している人は、訪問販売で不要なものを買わされるなど、消費トラブルに巻き込まれやすくなります。

任意後見制度は「被後見人をトラブルから守る」という面では穴があると言えるでしょう。ただしケースによっては、契約内容に「紛争解決の代理権」を盛り込むことでトラブルを解決できることがあります。

任意後見契約を結ぶときは、「紛争解決の代理権」について決めておくほうが良いでしょう。

まとめ

任意後見契約を利用することで、自分が信頼できる人に将来の判断を任せられます。そのためには今のうちから、後見人の選任や、契約内容について考えることが必要です。よりよいライフプランの実現の手段の一つとして、任意後見契約を検討してみてはいかがでしょうか。