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退職後の健康保険選択に迷わない!国民健康保険、任意継続、扶養家族に入る、それぞれのメリット・デメリットを完全解説


(クリエイター:craftbeermaniaさん

長年勤めた企業を定年退職、再就職せずにゆっくりされる人も多いのではないでしょうか。退職して無職になるとき、すぐに直面するのが健康保険をどうするか、という問題です。

なぜなら会社員時代は企業の健康保険一択、保険料もお給料から源泉徴収され、何も考える必要がなかったからです。

日本国民は退職後、原則どこかの健康保険制度に加入しなければいけません。というのも日本は全ての国民に健康保険制度の加入を義務付けている国民皆保険制度の国だからです。では退職者が取れる選択は、という疑問の答えは次の三通り。

・国民健康保険に加入する
・任意継続制度を利用する
・パートナーの勤める企業の扶養家族になる

とはいっても、いったいどれを選べばいいの?と思う退職をひかえた会社員の方は多いと思います。仕組みをしっかり知って失敗なく選びたいところですよね。そこで本記事では、退職後の健康保険制度について解説します。

そもそも健康保険制度ってなに?

健康保険制度とは、国民の病気やケガ、死亡といった事態に備えるため、公法人が運営する保険の制度を指します。

健康保険制度には三種類あり、一つ目は特定の企業に属する従業員やその扶養家族が加入する健康保険、二つ目は個人事業主や無職の人が加入する国民健康保険、三つ目は75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度です。

加入者は、各健康保険制度や後期高齢者医療制度のもと、病気やケガの治療費が1割から3割(年齢による)になったり、高額な医療費に対して保険金が支払われたりする保障を受けられます。

健康保険とは

特定の企業に属する従業員やその扶養家族は原則健康保険に加入します。健康保険の運営は厚生労働大臣の認可を得た健康保険組合です。

企業の従業員が加入する健康保険組合は大きく二種類あり、一つ目は主に大企業が独自に設立した自前の健康保険組合、二つ目は中小企業の多くが参加している協会けんぽ(全国健康保険協会)です。

保障内容に大きな違いはありませんが保険料は組合ごとに多少の違いがあります。これらの保険制度、従業員にとても手厚いのです。なぜなら保険料は事業主と折半できるうえ、家計を共にする家族も扶養家族として同一の保険に加入できるなど、好条件な保障を受けられるからです。

ところが、退職して無職になると扶養家族も含め健康保険から脱退しなければいけません。その時に選択できるのが、先に述べた「国民健康保険に加入する」、「任意継続制度を利用する」、「パートナーの勤める企業の扶養家族になる」のいずれかです。

国民健康保険に加入する

退職後に国民健康保険に加入すれば一人当たりの保険料はそれまでの支払い金額と比べて2倍になります。なぜなら、企業と折半だった保険料が全て自腹になるからです。さらに扶養家族として保険料を支払っていなかった家族にも支払い義務が生じます。

保険料は前年の所得をもとに計算されますので、退職して無職になった翌年度の健康保険料は、驚くほど高額になることが予想されます。

ただ翌々年の保険料は年金だけの所得になるなど高所得にならないかぎり低額に抑えられます。

保障内容は会社員の時に加入していた健康保険と同一の部分もありますが、異なる部分もあります。例えば、病気やケガの治療費は健康保険と同じ3割です(6歳未満は2割)。また、高額医療保障の条件も同じです。

しかしながら傷病手当金(病気やケガで継続4日以上働けなくなった場合に支給される)や出産手当金・出産育児一時金は国民健康保険にはありません。さらに、各種健康保険組合が独自に実施していたサービス(人間ドックのオプション検査項目、追加の高額医療保障、インフルエンザ予防接種補助金など)もなくなります。

手続きは、資格喪失日(退職日の翌日)から14日以内(土日祝日を含める)にお住まいの区市町村の国民健康保険の担当係で行います。

任意継続制度を利用する

 そこで、ぜひ検討したいのが任意継続制度です。任意継続制度とは、会社員の時に加入していた健康保険制度が継続できる制度です。保障内容も変わりなく、扶養家族も加入できます。

ただし保険料は全額加入者の支払いになり、継続期間は2年間が限度です。さらに会社員時代の所得を元に2年間同じ保険料が継続するので2年目の保険料は国民健康保険と比較して割高になる場合もあります。

任意継続制度は、加入者の申し出によりいつでも国民健康組合に切り替えが可能です。従って、退職後1年目は任意継続制度、2年目は国民健康保険に加入することもできるのです。手続きは「任意継続被保険者資格取得申出書」を企業もしくは企業の所属する健康保険組合に提出します。

資格喪失日から20日以内(土日祝日を含める)に行わないと自動的に国民健康保険に切り替わるので注意が必要です。

パートナーの扶養家族に入る

もし同一世帯のパートナーが健康保険に加入しているなら、自身が扶養家族になれるかもしれません。

例えば夫が退職、同居の妻が現役会社員とすれば、夫の年収130万円未満(60歳以上のときは180万円未満)、妻の年収が夫の年収の2倍以上の条件を両方満たす場合、高い可能性で夫は妻の扶養家族になれるでしょう。

ここで夫の年収とは、継続して得られる年金、不動産収入、株の配当金などを指します。夫が妻の扶養家族になることで妻の給与に扶養手当がついたり、年末調整で扶養控除が発生したりして所得税が安くなるメリットもあります。妻の会社に問い合わせてみましょう。

後期高齢者医療制度について

以上、会社員が加入する健康保険制度と無職の人が加入する国民健康保険制度について解説してきました。

読者の中には75歳以上の人やもうすぐ75歳になる人もおられるのではないでしょうか。そこで、後期高齢者医療制度について少し触れたいと思います。

後期高齢者医療制度とは、原則75歳以上の人が加入する公的医療保険制度です。75歳になれば国民健康保険や健康保険から自動的に移行します。保障内容は病気やケガで治療費を支払ったとき原則総額の1割負担で済みます。

ただし一定以上の所得のある人、現役並みの所得のある人はそれぞれ2割、3割負担となります。ここで一定以上の所得とは、二つの条件を満たす人です。

一つ目は世帯の課税所得(課税標準額)が28万円以上145万円未満、二つ目は「年金収入+その他の合計所得金額」の合計額が200万円以上(単身世帯)、あるいは「年金収入+その他の合計所得金額」の合計額が320万円以上(2人以上の世帯)です。

また、現役並みの所得とは世帯に課税所得合計が145万円以上の人がいる場合です。

ここで注意点は、個人でなく世帯で上記の条件に合致すると生計を共にする75歳以上の高齢者全員が2~3割負担になることです。つまり夫が3割負担に相当する現役並みの所得を得ていたら、年金しかない妻の医療費も3割負担になるのです。

(クリエイター:FineGraphicsさん

まとめ

以上、退職して無職になる場合に頭に入れておかなければいけない健康保険制度について簡単に解説しました。

まとめますと、

・企業の健康保険は保険料が会社と折半、家計を共にする扶養家族も加入できる

・退職して無職になると「国民健康保険に加入する」、「任意継続制度を利用する」、「パートナーの勤める企業の扶養家族になる」のいずかの選択をしなければいけない

・国民健康保険は扶養家族の概念がなく保障内容も企業の健康保険よりやや劣る

・任意継続制度は最大2年間健康保険と同様の保障内容を受けられ、扶養家族も対象になるが保険料は2倍になる

・生計を同一にする家族の扶養家族になれると条件が最もよい

・75歳以上になれば国民健康保険、健康保険から後期高齢者医療制度に自動的に移行する。一般の所得者は医療費が1割負担、世帯の収入と所得によって2割、3割負担となる

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執筆:みらいのびた