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老境に差し掛かった家族の終活を後押しするための、丁寧なアプローチと建設的な対話のテクニック

「家族が老境に差し掛かったので終活をすすめたいけれど、反発されそう……」

このように悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

ここではそんな人のために、「家族に終活をすすめる方法」について解説していきます。

なおこの記事では、主に親あるいは配偶者に終活をすすめることを想定しています。

「終活」という言葉は広まったけれど……

「終活」という言葉は、今や完全に市民権を得た言葉だといえます。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)が2021年にまとめた「終活意識全国調査の調査結果報告書」では、全体の96.4パーセントが「終活という言葉は知っている」と答えていました。すべての世代で90パーセントを超える結果となっていて、特に50歳~59歳と60歳以上の層では98パーセントに到達しようとする結果でした。

しかし「実際に取り組んでいるかどうか」を確認する質問においては、この数字は非常に低くなっています。

終活をするうえで必ず出てくる「エンディングノート」ですが、これを持っている人の割合はわずか87.8パーセントです。もちろん「エンディングノートが終活のすべてである」とまではいえませんが、それでも、この数字は非常に厳しい現状を表しているといえます。

また、同じく2021年に株式会社林商会がとったデータでは、「終活のことは知っているが、実際の行動は起こしていない」と答えた層が76パーセントと圧倒的多数でした。

このようなことから、あなたの親・配偶者もまた、「終活という言葉は知っているけれど、実際には取り組んでいない」という状況にあると考えられます。

では親・配偶者に終活を行わせるためにはどのような方法が有効なのでしょうか。

終活をすすめる方法その1:自分自身が終活を始めてみる

非常に有効な方法として、「自分自身(あなた自身)が終活を始めてみる」というものがあります。

身近な存在である家族が終活を始めたことで、親・配偶者もまた終活に興味を持つようになるでしょう。「自分より若い子ども・パートナーが終活を始めたのだから、自分も考えないと……」と考えて、自発的に終活に取り組むようになるかもしれません。そのため、この方法は特に配偶者が自分よりも年上の場合に有効です。

「私につられて、親・配偶者も終活に取り組むようになった」という場合は、終活の内容を「共通の話題」として取り上げるようにするのもおすすめです。こうすることで、終活に対してマイナスの印象を抱きにくくなります。2人で一緒に終活を進められることで、情報交換もしやすくなるでしょう。

終活をすすめる方法その2:自分の身近な人の話題として取り上げる

「私の友達のお母さんが終活を始めたんだけど……」

「僕の同僚がこの間倒れてしまって、病院で『このまま死んだら困る』と考えて終活に取り組み始めたらしいよ」

などのように、周りの身近な話題として「終活に取り組んでいる人がいる」ということを伝えるのも良いでしょう。終活は特別なものではなく、多くの人が当たり前に取り組んでいるものであると伝えるのです。

あまり悲壮感を持って話してしまうと、逆に親・配偶者の方が気後れしてしまいます。そのため、暗すぎる表情で切り出すことはやめておきましょう。「見苦しくないように死にたい」「残していく人間に迷惑をかけたくない」と考える人は多いものです。終活は、そのような願いを叶えるポジティブなものであるという価値観を持って、話を切り出すことが重要です。

「実際にこのようなことに困っていて」「このようなことをきっかけに始めようと思ったらしい」などのように切り出すことで、「自分のことだ」「自分も同じようになるかも」と考えさせることができます。また、介護の話題などを出すのもおすすめです。

終活を進める方法その3:葬儀・法事(法要)をきっかけに切り出す

葬儀や法事(法要)があったときに、それをきっかけとして終活のことを切り出すのも有用な方法です。上でも述べましたが、特に同世代の死は、人に「自分の残りの人生」を意識させる重要なきっかけになります。

また、アメリカのミシガン大学の心理学者クリストファー・ピーターソンは、「人は自分の葬儀を想像することで、前向きに人生を生きていけるようになる」としています。

人が亡くなるのはもちろん悲しいことではありますが、それを入口にして自分自身の葬儀と向き合うようになるケースは多いといえます。そして向き合ったときに沸き起こった感情は、その人が人生を前向きに歩んでいけるための力となりえます。

残されていく家族のためだけでなく、大切な親・配偶者のためにも、終活をすすめてみてください。