厳選 厳選

「終末期医療・介護」の問題に取り組むことで、自分と家族の「どんな風に死ぬか」を考え抜くことができる

人間にとって「どうやって生きていくか」と同じくらい大切になるのが、「どんな風に死ぬか」ということです。

自分にとっても家族にとっても納得のいく旅立ちになるようにするためには、その前に訪れる「終末期医療・介護」の問題について考えておく必要があります。

終末期医療・介護の考え方

終末期医療・介護は、人生の終盤に迎えることになる問題です。

「もう治療をしたとしても、命は助からない」「人の手を借りて生きていかなければならない」となったときに、どのようにして過ごしたいかを私たちは常に考えなければなりません。

たとえば終末期医療の場合は、「延命をするか、それともしないか」という選択肢にぶつかることがあります。

「辛い治療にも耐えるので、できるだけ長く生きて家族とともに過ごしたい」と考えるのか、「痛みを取るだけの対応をしてもらえればよく、長く生きることは重要視していない」と考えるのかで、医療の方針は大きく変わってきます。

「自分自身の力で呼吸ができなくなったら、そのときは旅立たせてほしい」「人工透析をした状態であっても、少しでも長くいきたい」などのように、具体的な場面を想定することも重要です。

これは、どちらが正しい・正しくないといえる話ではありません。かつては「延命処置を行うのが当然」と考えられていた時代もありました。しかし現在では、「無理な延命治療は望まない」と答えている人の方が多数派であるとされています。

「介護」について考えることも重要です。

「いつまでも自宅にいたい」と考えるのか、「プロの手で介護してほしいので、介護施設を希望する」と考えるのかで、介護の方針も変わってきます。

介護度が進んだ場合はどうするのか、についてもしっかりと考えておかなければなりません。

施設を希望する場合は、具体的に「どんな種類の施設に入りたいと考えているか」を、自分のなかで整理・洗い出しをしておくとよいでしょう。

人は「いつまでも元気」ではいられない

終末期医療・介護をどうするかは、元気なうちから考えておく必要のあるものです。

なぜなら、人は「いつまでも元気」ではいられないからです。

この言葉には、2通りの意味があります。

1つは、上で紹介してきたように、「自分の体が病などに冒されて、健康な状態でいられなくなること」です。

そしてもう1つは、「人はいつまでも『健常な思考能力』を持っていられるという保証はないということ」です。

認知症を患ったり、加齢とともに判断力が鈍ったりすることは、だれにでもあるものです。また、交通事故などによって前触れなく思考力を奪われてしまうこともあるでしょう。

このような状況に陥ったときにでも、自分が望む終末期医療・介護を受けられるようにするためには、健常な思考能力がある段階での準備が必要不可欠なのです。

「どのような終末期医療・介護を受けたいか」についての考えが定まったのであれば、早い段階でそれを人に分かるように記すことが重要です。

終末期医療・介護の希望を伝えるもっとも有効な手段のうちのひとつが、「エンディングノートに記すこと」です。エンディングノートは「死後の希望」を述べるためのものだと誤解されることもありますが、「どのようにして死までの時間を過ごすか」も記せるようになっています。このエンディングノートに、

・延命治療を希望するか、それともしないか

・延命治療を希望する場合は、どのような状態になるまで続けてほしいか

・病院や介護施設に入院や入所をしたいか、あるいはしたくないか

・訪問看護などの選択肢を考えていれば、その記載

・すでに契約をした介護施設などがあればその詳細、未契約だがあてをつけているのであればその施設の概要

などを記していきましょう。

終末期医療・介護は、あなた一人のものではない

終末期医療・介護には明確な正解・不正解はありません。そのため、当人の意思が何よりも尊重されます。

ただそれでも、「周りの考えをまったく配慮しなくても構わない」と言い切るのは乱暴です。

たとえば、当人は「延命治療は一切してほしくない、お金もかかるだろうから自分の口から食べ物をとれなくなったら静かに旅立たせてほしい」と考えていたとしても、ご家族が「お父さんのことが大好きだから、できるだけ長く、一日でも長く生きていてほしい。そのためならいくらでもお金を出す」と考えていた場合、話は難しくなります。

もちろん当人の意思だけで「それでも延命治療はさせない」とすることもできますが、ご家族と話し合って双方が納得のいく結論を模索していくことが重要だといえます。

また、現在では病院も「当人の意思を優先する」としているところが多くみられます。明確な希望が決まったのであれば、病院側ともその意思を共有しておくとよいでしょう。

「終末期医療・介護」は、多くの人がお世話になるものです。

今のうちからしっかり用意をしておきたいものですね。