終活のかたちは、日々移り変わっています。50年前には想定もされていなかったものが終活の対象となっていますが、その代表的な例はやはり「パソコンやスマートフォンなどのデジタル遺品」でしょう。
今回はこのデジタル遺品との向き合い方について解説していきます。
デジタル遺品とは何のこと?
デジタル遺品とは、パソコンやスマートフォン(「スマホ」の表記に統一します)に入っているデータのことです。
この「デジタル遺品」は、大きく
・画像や写真、ワードファイルなどのデータ
・オンラインショッピングやSNSなどのアカウント
の2つに分けられます。
パソコンやスマホは、個人情報の宝庫です。現在はほとんどの人がこれを持っていますし、またこれがなければ生活自体が立ち行かないという人もいるでしょう。
その分パソコンやスマホが持っている情報は膨大なものとなっていますし、また非常にデリケートなものでもあります。
その分、デジタル遺品の扱い方には慎重さが求められます。
上でも述べた通り、パソコンやスマホは個人情報がぎっしり詰まっています。そのため悪意のある第三者に悪用されるのを避けるために、「3回以上パスワードを間違えると、データを初期化する」などのような設定になっているものもあります。
これは「家族であろうとも見られたくないデータを削除する」という意味では非常に有用なのですが、同時に、「家族に整理してほしいデータ」「家族に解約してほしいデータ」もそのまま削除されてしまうという危険性があります。
特に、「財産目録をパソコンやスマホで管理している」「家族にも言っていない財産がある」という場合は、この「削除」によって生じる損失は膨大なものであるといえます。
終活で「デジタル遺品」に向き合う意味とは
終活では、「デジタル遺品」に向き合うことが重要です。
これによって
1.家族の思い出となる写真などを家族に残せる
2.家族にも見られたくないデータなどを削除できる
3.管理していた財産の存在を伝えられる
4.SNSなどでつながっている人に対して、「自分が死んだこと」を伝えられる
5.利用できなくなった契約(サブスクなど)を解約できる
というメリットがあります。
それぞれの目的に応じた対応方法を紹介していきます。
1.家族の思い出となる写真などを家族に残せる
クラウドサービスを利用したり、家族がだれでも見られる共有フォルダに入れておいたりするとよいでしょう。
また自動保存機能を使って、ローカルメディアに保存していくのも良いものです。
ちなみに今回は「デジタル遺品」をテーマにしていますが、実はもっとも確実なのは「プリントアウトをしてとっておくこと」です。データは消える可能性がありますが、印刷したものは(多少の色あせなどはあるにせよ)消えることはありません。
特に大切なものは、このようにして保管するとよいでしょう。
この手続きは随時やっていくようにします。
2.家族にも見られたくないデータなどを削除できる
家族であっても見られたくないデータについては、「一定期間にわたってパスワードを打ち込まなければ、データがすべて削除される」というサービスを使えばよいでしょう。
現在は無料のソフトも出ています。
このソフトの導入は、まさに、「今すぐに」行うべきです。
見られたくないデータは「残すこと」を想定としていませんから、「自分が不慮の事故などで死んだときでもすぐに対応できるように」と考えてすぐに導入することをお勧めします。
3.管理していた財産の存在を伝えられる
管理していた財産についてまとめたページにアクセスするためのパスワードなどを、エンディングノートなどに書いておくとよいでしょう。
またこれは「財産」としての性質を強く持つため、遺言書を合わせて作成しておくことをおすすめします。
財産は、時間とともに変わっていくものです。
「財産状況が変わるたびに更新して1つのフォルダに入れておいて、パスワードを共有する」という形式ならばあまり問題になりませんが、遺言書にまとめている場合は定期的に内容を確認するとよいでしょう。
4.SNSなどでつながっている人に対して、「自分が死んだこと」を伝えられる
コロナ禍であるため、「友人や知人とSNSでゆるくつながっている」という人もいることでしょう。
このような人にとって、「自分が死んだことをSNSで告知してほしい」と考えるのはごく自然なことです。
この場合も、エンディングノートにログインパスワードなどを残しておくことをおすすめします。
またパソコンやスマホのロックがかかっていない(あるいはロックを解くためのパスワードを共有している)のであれば、そこに入っているアプリからアクセスすることもできます。
「自分が死んだら、インスタやライン、ツイッターなどで告知してほしい」などの希望を出しましょう。
パスワードやアカウント名を変更した場合は、その都度情報を更新します。
5.利用できなくなった契約(サブスクなど)を解約できる
サブスクの契約解除の手続きを行うためには、まずは「どのサブスクに入っているか」を家族が知れる状態にしなければなりません。
そのため、今すぐにでも加入しているサブスクのリストを作りましょう。また、新しい契約をしたり、古い契約を解除したりした場合は、都度情報を更新します。
またこの作業をすることで、不要な契約に気づきやすくなり、無駄に料金を払わなくてよくなるというメリットもあります。