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遺贈寄付の3つの形態と選び方:あなたの想いを確実に伝えるために

私たちの人生には、さまざまな選択肢があります。その中でも、自分の財産をどのように活用し、誰に引き継ぐかという決断は、人生の集大成として非常に重要な意味を持ちます。特に、社会貢献に関心がある方にとって、遺贈寄付は自身の想いを未来につなげる価値ある選択肢の一つとなるでしょう。 

本記事では、遺贈寄付の3つの主要な形態について詳しく解説し、それぞれの特徴や注意点を踏まえながら、あなたに最適な方法を見つけるためのガイドを提供します。 

遺贈寄付とは 

遺贈寄付とは、個人が自身の財産の一部または全部を、死後に特定の団体や組織に寄付する行為を指します。この方法により、自分の価値観や信念を反映させた形で社会に貢献することができ、生涯をかけて築き上げた財産を有意義な形で活用することが可能となります。 

遺贈寄付の3つの主要な形態 

遺贈寄付には主に以下の3つの形態があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。 

  • 遺言による寄付(遺贈) 
  • 相続財産の寄付 
  • 契約による寄付 

1. 遺言による寄付(遺贈) 

遺言による寄付は、遺贈寄付の中でも最もスタンダードな方法です。この方法では、遺言書を作成し、その中で寄付の意思を明確に示します。 

特徴と利点 

  • 法的拘束力: 適切に作成された遺言書は法的拘束力を持ちます。これにより、あなたの意思が確実に実行される可能性が高くなります。 
  • 柔軟性: 遺言書は生前いつでも変更可能なため、状況の変化に応じて柔軟に対応できます。 
  • 税制上の優遇: 遺言による寄付は、原則として相続税の課税対象外となります。これは、相続税が個人の相続に対して課されるものであり、団体への寄付には適用されないためです。 

注意点 

  • 遺留分の考慮: 各相続人の遺留分を侵害しないよう、慎重に計画を立てる必要があります。 
  • 税務上の判断: 寄付先の団体が遺言者の親族のみで運営されているなど、相続税回避目的と判断される場合は課税される可能性があります。 
  • 専門家のアドバイス: 遺言書の作成には法的な知識が必要なため、弁護士や公証人などの専門家に相談することをお勧めします。 

2. 相続財産の寄付 

相続財産の寄付は、法的拘束力はないものの、より柔軟な形で遺贈寄付の意思を示す方法です。 

特徴と利点 

  • 自由度の高さ: エンディングノート、手紙、口頭での伝言など、様々な形で意思表示が可能です。 
  • 相続人の理解と協力: この方法では、最終的な決定権は相続人にあるため、家族間の生前からのコミュニケーションと理解が重要になります。 
  • 税制優遇の可能性: 寄付先が国、自治体、認定NPO法人などの場合、相続税の申告期限までに寄付を実行すれば、非課税扱いとなる可能性があります。 

注意点 

  • 法的拘束力の欠如: 相続人の判断次第で、寄付が実行されない可能性があります。 
  • 相続税の課税: 原則として、相続人に相続税が課税されます。ただし、上記の税制優遇措置を利用できる場合もあります。 
  • 明確な意思表示: 曖昧な表現は避け、具体的な金額や寄付先を明記して意思を伝えることが重要です。 

3. 契約による寄付 

契約による寄付は、生前に寄付の約束を信託商品や書面で交わすことで、より確実に実現する方法です。 

特徴と利点 

  • 高い信頼性: 銀行の信託商品や死因贈与契約など、法的に確実な方法で寄付を約束できます。 
  • 生前の安心: 寄付の約束を交わすことで、生前から自身の意思が実現されることへの安心感が得られます。 
  • 確実な実行: 特に信託商品を利用する場合、専門家が管理するため、確実に寄付が実行されます。 

注意点 

  • コスト: 特に信託商品を利用する場合、手数料がかかる場合があります。 
  • 撤回の困難さ: 死因贈与契約の場合、一度約束すると一方的な撤回や解除が難しくなります。 
  • 税務上の考慮: 不動産を死因贈与する場合、遺言書よりも税率が高くなったり、不動産取得税が課せられたりする可能性があります

最適な方法の選び方 

遺贈寄付の方法を選ぶ際には、以下の点を慎重に検討することをお勧めします: 

  • 自身の価値観と目的: どのような形で社会に貢献したいか、何を大切にしているかを明確にしましょう。
  • 家族との関係: 相続人となる家族の理解と協力が得られるか、十分なコミュニケーションを取ることが重要です。  
  • 財産の状況: 寄付可能な財産の種類や金額を把握し、遺留分などの法的制限も考慮しましょう。
  • 税制の影響: 各方法における税制上の影響を理解し、最適な選択をしましょう。
  • 確実性と柔軟性のバランス: 法的拘束力の強さと、将来の状況変化への対応のしやすさを天秤にかけて考えましょう。  

まとめ 

遺贈寄付は、生涯をかけて築いた財産の一部を、社会貢献のために役立てられる最後の贈り物です。しかし、その実現には慎重な計画と準備が必要です。本記事で紹介した3つの方法—遺言による寄付、相続財産の寄付、契約による寄付—それぞれに特徴や注意点があります。 

あなたの想いを最も適切に反映させる方法を選ぶためには、専門家のアドバイスを受けながら、自身の価値観や家族との関係、財産状況などを総合的に考慮することが大切です。また、選択した方法に関わらず、定期的に見直しを行い、状況の変化に応じて柔軟に対応することも忘れずにいましょう。 

遺贈寄付を通じて、あなたの人生の軌跡が未来に温かい光をもたらすことを願っています。自身の想いを紡ぎ、確実に次の世代へと橋渡しする—そんな素晴らしい選択の一助となれば幸いです。 

参考文献: 
鵜尾雅隆, 齋藤弘道, 芝池俊輝, 樽本哲, 山北洋二, 脇坂誠也(著)「遺贈寄付ハンドブック [改訂第2版] 遺贈寄付を受ける団体や相談を受ける人が知っておきたい大事なこと」 特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会 2022年3月発行