長い人生を過ごす中で、遺贈寄付を検討する人が増えています。不安定な社会情勢の中、誰かのために最後まで生きようと行動したある二人の人物を紹介します。
第一話：濱田先生の500万円の想い
濱田さんは、生まれ育った街で小学校教師として子供たちの成長を60年間見守ってきました。
濱田さんの脳裏には、長年の教師生活で出会った数え切れないほどの子供たちの笑顔が浮かんでは消えてい来ました。厳しい時代もありましたが、それでも常に前を向いて、己の人生を歩んできた自負があります。定年退職後も、地域のボランティア活動や放課後児童クラブで精力的に活動し、地域社会との繋がりを大切にしてきました。
ある日、濱田さんは弁護士と相談しながら遺言書を作成していました。法的な手続きを一つ一つ確認しながら、自分の想いを言葉にしていきました。そこには、自身が生まれ育ち、一生を捧げた街に500万円を寄付する意向も記されていました。
「自分を育ててもらったこの街と、自分を受け入れてくれた子供たちに恩返しがしたい」と濱田さんは微笑んでいました。
その話を聞かされた妻は、最初こそ驚いたものの、夫の想いを理解し、支持してくれました。「あなたらしい決断ね」と優しく微笑む妻の言葉に、濱田さんは背中を押されたように感じました。
数年後、濱田さんが他界すると、遺言書が開封されました。遺族は驚きつつも、濱田さんの意思を尊重し、寄付の実現に協力しました。
寄付が実現すると、濱田家に国から紺綬褒章（こんじゅほうしょう）※が贈られました。息子の一人は、褒章を手に取りながら呟きました。「お父さん、最後の最後まで立派な先生だったね」
多くの教え子や地域住民が集まった追悼式では、濱田の生涯にわたる社会貢献が称えられて、みんな思い出に浸りながら涙を流しました。
喪主を務めた息子は、「父がしっかりと遺言書を残してくれていたおかげで、相続のトラブルもなく、父の想いを実現できました」と語っていました。
濱田さんの500万円の遺贈寄付は、金銭的な価値以上に、深い愛情と社会貢献の精神を次世代に伝える、かけがえのない贈り物となったのでした。
※紺綬褒章（こんじゅほうしょう）
国の褒章制度のひとつで、公益のために、私財（個人は500万円以上、法人等は1,000万円以上）を寄附した方に授与されます。
第二話：石井さんの10万円に込めた思い
81歳の石井さんは、夫や親兄弟に先立たれ、子供もいない「おひとり様」でした。孤独死への不安から、行政の支援を受けながら生前整理を始めていました。
ある日、テレビで遺贈寄付の特集を見た美代子は、「私にも、最後に社会に恩返しできることがあるのかしら」と心を動かされました。
年金暮らしで日々慎ましく暮らしている石井さんには大金はなかったが、「たとえわずかでも、私の想いを形にしたい」と決意しました。
自分の生活費や介護、葬儀のためにも貯金はとっておかなければならない。行政や友人にも資金計画を相談しながら、遺言書に、10万円の遺贈寄付の意向を記しました。
石井さんは遺言書を書き終えると、亡き夫の遺影に微笑みかけました。「あなた、私も最後に誰かの役に立てそうよ」
数年後、石井さんが静かに息を引き取ると、遺言に従って寄付が実行されました。寄付を受けた団体は「石井さんの想いを大切に活用させていただきます」と感謝の意を表しました。
葬儀に参加した友人は涙ぐみながら呟いた。「立派な最後だったわ、私も見習わないと。素敵な贈り物をありがとう」
遺影で穏やかに微笑む石井さんは、みんなの心の中に生き続けるのでした。
あなたは最後に何を残しますか？
この二つの物語はフィクションですが、実際に日本で行われている遺贈寄付の手続きを参考に作られたストーリーです。遺贈寄付は、人生の締めくくりに、自分らしさを表現し、社会とつながり続ける素晴らしい方法でもあるのです。
金額の大小に関わらず、一人ひとりの想いが社会に温かな影響として広がっていくことを教えてくれます。濱田さんの500万円も、石井さんの10万円も、それぞれの想いが込められた、生涯最後の贈り物なのです。
あなたも人生の集大成として、相続資産の整理整頓や遺言書の作成を始めてみてはいかがでしょうか。
