終活をしていく最中で、「死後事務委任契約」という言葉を耳にすることもあるでしょう。
ここではこの「死後事務委任契約」を取り上げ、その内容と、実際の契約について解説していきます。
死後事務委任契約とは、「自分が死んだ後の事務作業を、だれかに委託する契約」をいう
死後事務委任契約とは、一言で言うのなら、「自分が死んだ後に発生するであろう事務作業を、だれかに委託する契約(を結ぶこと)」となります。
人が亡くなったときに行わなければならないことは、非常に多くあります。まずだれもが思いつくのが、「通夜や葬儀」でしょう。「独り身なので通夜も葬儀も必要ない」という人であっても、遺体を火葬する必要はあります。日本では土葬は認められていませんから、一部の特例(水葬など)を除き、必ずこの過程が必要となります。そして焼きあがった後の遺骨を処理する手続きを行う必要もあります。
「高齢者施設に入っていた」という場合を除き、ガスや電気、水道などのライフラインを止める必要も生じます。また高齢者施設に入っていた場合でも、そこにお金を払ったり、居室の片付けをしたりといった作業を行わなければなりません。人は一人で死ぬことはできないのです。
家族がいるのならば、このような作業は彼らが担当することになるでしょう。しかし人の縁が薄い場合、「自分が死んだ後の跡片付け」を頼む人がいません。
そんなときに効力を発揮するのが、「死後事務委任契約」です。この死後事務委任契約を結んでいた場合、契約をした人がこのような事務作業をしてくれます。
死後事務委任契約を頼める相手はどんな人?
家族(相続人)がいる場合は彼らが事務作業にあたることになると思われますから、ここでは「家族(相続人)がいない場合」を想定します。
そのような状況のときに頼める選択肢としては、以下の4つがあります。
1.パートナーに頼む
2.知人に頼む
3.業者に頼む
4.社会福祉議会に頼む
それぞれみていきましょう。
1.パートナーに頼む
「結婚はしていなかったが、事実婚の相手がいる」「同性のパートナーがいる」という場合は、彼らに頼むのが一般的です。日本でも少しずつ状況が変わってきつつありますが、現状では彼らの法的な立場が確立されているとはいいがたい状況です。
そのため、「事実上の家族である彼らに任せたい」ということであれば、死後事務委任契約を結んでおく方がよいでしょう。
2.知人に頼む
親しくしている友人に頼む方法もあります。「家族はいないけれども、60年近く付き合ってきた友人がいた」「ご近所に親しい人がいた」などのような場合は、このケースに該当します。
3.業者に頼む
司法書士や行政書士などのように士業を営む人に頼んだり、死後事務委任契約を扱っている企業に頼んだりするのもひとつの方法です。特に士業を営む人に頼んだ場合、事務作業以外の作業も受け持ってもらえる可能性が高いので非常に便利です。
死後事務委任契約を扱っている葬儀社などに相談するのもひとつの手ではありますが、「どこまでが業務範囲に含まれるか」は、その業者によって異なります。
4.社会福祉議会に頼む
公的な性格を持つ社会福祉議会に頼むのも良いでしょう。どんなときでもだれかが業務を遂行してくれるので、非常に安心感があります。
ただし社会福祉議会に頼む場合は、「相続人がいない」「社会福祉議会の会長の判断で。死後事務委任契約を利用する必要があると認められた」などのような条件がつけられることもあります。
なおどの方法を選ぶ場合でも、公正証書を作成することをおすすめします。
どこまでを契約の範囲に入れるべきか
死後事務委任契約を結ぶ場合は、「どこまでの範囲をお願いするか」を決めておかなければなりません。
上で挙げた
・通夜や葬儀、納骨
・ライフラインの停止
・病院や高齢者施設への支払い
・病院や高齢者施設の片付け
などが基本となりますが、それに加えて、「家の片付けもしてほしい」「さまざまな書類を提出してほしい」「人に連絡をしてほしい」などの要望を持つ人もいることでしょう。また現在は、「SNSでの告知及びSNSのアカウントの消去をしてほしい」「パソコンやスマホの情報を消してほしい」などのような希望を持つ人もいるかもしれません。
このため、死後事務委任契約を結ぶ前には、まずは「自分が必要とする範囲はどこまでか」「どこまでお願いができるか」をしっかり考えていく必要があるでしょう。迷った場合は、できるだけ広範囲をフォローできるような契約書を作ると安心です。
なお死後事務委任契約を行う際には、「お願いする範囲」の洗い出しを行わなければなりません。そのため必然的に、「自分の希望する葬儀・埋葬のかたち」「連絡先の整理」などを行う必要も出てきます。
「おひとりさま」で過ごしている人にとって、「死後事務委任契約」は極めて現実的な選択肢です。その基本を頭に入れておきたいものですね。