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身寄りのない高齢者に起きる「身元保証」トラブル

おひとり様の老後問題

日本の高齢化社会において、「身寄りのない高齢者」が年々増加しています。

身寄りがいないとは具体的に、手続きの支援や連絡のサポートをしてくれる配偶者や実子、親族がいない、もしくはいたとしてもサポートを期待できないことを意味します。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2050年には高齢者の単独世帯が約1,084万世帯に達し、一般世帯総数の20.6%を占めるとされています。

このような状況下で、身元保証人がいない高齢者が直面する問題が深刻化しています。


身元保証人が求められる場面とその理由

高齢者が身元保証人を求められる主な場面として、以下が挙げられます。

医療機関への入院:

医療費の未払いリスクや緊急時の対応を考慮し、多くの病院が基本手続として身元保証人を求めます。しかし、厚生労働省は、身元保証人がいないことのみを理由に入院を拒否することは正当でないと指導しています。ところが実態としては、身元保証人がいないことで入院や入所を断る病院が一部存在しているようです。

    介護施設への入所:

    介護費用の未払いリスクや退所後のケアを懸念し、医療機関への入院と同様に、施設側が身元保証人を求めるケースが多いです。やはり介護施設でも、身元保証人がいないことを理由に入所を断った事例が報告されています。

    賃貸住宅の契約:

    家賃滞納や居室内での事故、孤独死などのリスクを避けるため、賃貸契約時に身元保証人を求められることが一般的です。公営住宅でさえ入居時に保証人を必要とするところが存在し、一部住宅では高齢者や低所得者などに対しても保証人の手配を免除しないようです。

      身元保証人がいないと起きやすいトラブル

      このように医療機関の入院、介護施設の入所、賃貸契約などで、身元保証人を確保できない高齢者は、以下のようなトラブルに遭う可能性があります。

      医療・介護サービスの利用制限:

      適切かつ迅速な治療や介護サービスを受けられず、健康状態の悪化を招く恐れがあります。

      住居の確保困難:

      賃貸契約が結べず、安心して住める住居を確保できないリスクがあります。

      社会的、精神的孤立:

      身元保証人がいないことで、社会からの生活支援を受けにくくなり、孤立が深まる可能性があります。

      身寄りのない高齢者はどうすべき?対応策と課題

      身寄りのない高齢者が身元保証人を確保するための方法として、3つの対応策が考えられます。

      成年後見制度の利用:

      成年後見人制度とは、判断能力が不十分となった人に代わり、後見人が財産管理や契約を代行する制度のことです。

      判断能力が不十分な高齢者に対し、財産管理や身上保護を成年後見人が代わりに行うことができますが、成年後見人が本人に代わり全ての手続きを進めることができないのが実態です。

      例えば医療施設に関わる契約だと、入院や手術の際の同意事項について代わりに意思決定を行うことができないなど、現状は制限が多くあります。

      民間の身元保証サービスの活用:

      NPO法人や民間企業が提供する身元保証サービスを利用する方法もあります。

      民間事業者が入院・入所時の保証や日常生活の支援、死後の手続きなどを包括的にサポートてくれます。

      ただし、まだこのような民間サービスは歴史が浅く、規制法や監督する行政機関も存在しません。そのため、事業者ごとにサービス内容や費用、信頼性にばらつきがあり、契約不履行や返金トラブルなども報告されています。事業者を利用する際には慎重に選択する必要があります。

      地域包括ケアシステムへの期待:

      法的代理人や民間事業者ではなく、身寄りのない高齢者が実際に暮らしている地域社会全体でその人を支える仕組み作りが議論されています。

      取り組みは一部で始まっているものの、まだ地域差があり、社会福祉としては確立しておらず、今すぐに十分な支援が受けられない場面があります。


        おひとり様老後を安心して過ごすために何ができるか

        法整備や福祉の課題などは未だにあるものの、身寄りのない高齢者でも安心して生活できるために、今からできる対策をまとめました。

        1. 成年後見制度の利用

        高齢となり判断能力が不十分で手続き関係が不安な場合、やはり、成年後継人制度についてどこまでできるかを知り、制度の利用を考えるべきでしょう。

        家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選任し、財産管理や契約手続きの支援を受けることができます。

        2. 日常生活自立支援事業の活用

        各地域の社会福祉協議会が提供するサービスで、日常的な金銭管理や福祉サービス利用の援助を受けられます。

        緊急事態になってからではなく、健康に活動できるタイミングから将来の相談をしたり、支援を少しずつ利用するなどして、コミュニケーションを取っておくのも重要だと言えます。

        3. 身元保証サービスの検討

        入院や施設入所時に保証人が必要な場合、民間の身元保証サービスを利用する選択肢があります。

        ただし、サービス内容や費用、信頼性を十分に確認して、契約前に地域包括支援センターや消費生活センターに一度相談することが推奨されます。

        4. 死後事務委任契約の締結

        自身の死後の手続き(葬儀、遺品整理など)を信頼できる第三者に委任する契約を結ぶことで、万が一の際の不安を軽減できます。

        5. 地域包括支援センターへの相談

        地域包括支援センターは、高齢者の生活全般に関する相談窓口です。

        身寄りがないことに関する不安や生活上の課題について、専門職が適切な支援策を提案してくれます。

        6. 社会的ネットワークの構築

        地域のサークルやボランティア活動に参加し、日常的な見守りや支援を受けられる人間関係を築くことも大変重要です。

        このような対策を組み合わせることで、身寄りがない高齢者でも安心して生活できる環境を整えることが可能です。