「生命保険」という言葉は、だれにとってもなじみ深いものです。また実際にこれに加入している人も多いのではないでしょうか。
ただ、「生命保険信託」となると、「聞いたこともないし、意味も分からない」となる人もいることでしょう。
ここでは生命保険信託を取り上げ、
・生命保険信託と生命保険の違い
・生命保険信託のメリットとデメリット
・生命保険信託契約の流れ
について解説していきます。
生命保険信託とは、保険金の受取を銀行などに託すことをいう
生命保険信託とは、「生命保険で支払われるお金を、銀行などに託すこと」をいいます。一般的に生命保険は指定された個人が受け取りますが、この場合は銀行が受け取り手側になるのです。そして銀行がこの保険金を、管理・運用していきます。
生命保険の保険金を託された銀行は、それを管理・運用していき、本来の受け取り手側に対して定期的に保険金を支払っていきます。
「保険金の受け取り手側は銀行となる」としましたが、これは「銀行が好き勝手に保険金を使う」という意味ではありません。銀行がまず受け取って、それを本来の受け取り手側に渡していくのです。このため、銀行に使い込まれることはありません。
生命保険信託のメリット
生命保険信託には、いくつかのメリットがあります。
1.財産を守れる
そのうちの1つが、「財産を守ることができる」というものです。
「保険金を幼い子どもに残したいが、心配である」「認知症になった妻に渡して、介護費用としたい」としていた場合でも、当人が多額の保険金を受け取るわけではありません。そのため、判断力が心もとない人を受け取り手側にしておいても安心です。
2.家族親族以外を受取人に指定できる
また保険金の場合は、基本的には家族や親族のなかから受け取り手を選びますが、生命保険信託の場合は他人を受け取り手側に指定することができます。
そのため、「成人後に一度も会うことのなかった兄弟よりも、50年以上連れ添った親友に生命保険金を託したい」などのようなやり方を取ることもできるのです。
3.振り込むタイミングと金額を指定できる
多額のお金は、時に人を狂わせます。大きすぎる保険金を受け取ったことで身を持ち崩したり、事件に巻き込まれたりする人は決して少なくはありません。
しかし生命保険信託を利用すれば、「毎月10万円ずつ受け取り手側に渡して」などのように指定ができます。このため、一度に大金を手にして舞い上がったり、これが原因で人間関係のトラブルに巻き込まれたりするリスクを低くすることができます。
4.第一受益者が亡くなっても、第二受益者が生命保険金を受け取れる
死がいつ訪れるかを正確に読み取れる人はいません。
生命保険金を残そうとしても、その受け取り手側が死亡してしまうこともあります。
このような場合を想定した対策も、生命保険信託ならばしっかり立てられます。
生命保険信託の場合、第一受益者(初めに生命保険金を受け取り手側であると設定された立場の人)が亡くなっても、第二受益者や第三受益者がこれを引き継ぐことができます。
生命保険信託のデメリット
ただし、生命保険信託にはデメリットもあります。
生命保険信託は、「銀行」という「第三者」を間に挟む選択肢です。
そのため、当然のことながら手数料がかかります。毎年20000円前後の管理費用が掛かるケースが多く、受け取るときも数パーセント~10万円程度の費用がかかります。
このため、「満額を引き継がせたい」と考える人には向いていない制度といえます。
なお生命保険信託の対象となるのは、現金のみです。不動産などに関してはまた別途手続きが必要です。
生命保険信託の流れ
最後に、生命保険信託契約~支払いの流れについて解説していきます。
なおここで紹介するのは一例です。実際にどのような流れをとるかは、契約会社ごとで多少異なります。
1.ライフプランナーからの説明
2.申し込み
3.事務手数料を払い込む
4.保険金の受取人を銀行に変更する
5.契約書の確認
6.生命保険信託を申し込んだ人間が亡くなった時点で、ライフプランナーに連絡する
7.保険金請求のための書類を作る
8.保険金の支払い日などの情報が、受け取り手側に伝わる
9.保険金が交付される
このような流れをとって、生命保険金が支払われていくことになります。
なお不明点があった場合は、必ず該当の企業・銀行に問い合わせをしてください。
生命保険信託を利用するためには当然手数料などがかかるというデメリットもあります。
生命保険信託は、「自分の望む人に生命保険金を渡したい」「しかし一度に大金を渡すことで、受け取り手側の人生を狂わせたくない」「未成年や認知症患者などの家族に、現金を残したい」と考える人にとって、非常に有用な選択肢となるものです。
このような状況にある人は、一度生命保険信託を検討してみてもよいでしょう。