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生前贈与とは何? そのやり方と注意事項について

「生前贈与」は、財産の受け渡し方法のうちのひとつです。

ここではこの生前贈与について、

・生前贈与の意味~相続との違い

・生前贈与のメリットと注意点

・生前贈与のやり方

について解説していきます。

生前贈与とは、亡くなる前に人に財産を譲ることをいう~相続や遺贈との違い

「生前贈与」とは、「自分が亡くなる前に、自分の意志において、人に財産を譲ること」をいいます。

名前からもわかる通り、生前贈与は「生きている間に」だれかに財産を譲ることを指すものであるため、「人が亡くなった後に」財産が渡される相続とは意味が異なります。

また、生前贈与と相続では「だれの意思が介在するか」に違いがあります。

相続の場合は、法定相続人には自動的に相続権が発生します。

受け取り手側になる法定相続人は遺産の受け取りを拒否することはできますが、「遺産を欲しい」と表明していなかったとしても、相続権自体は自動的に発生するわけです。

しかし生前贈与の場合は、譲る側が「渡したい」と意志を示し、受け取る側が「受け取りたい」とした場合にのみ成り立ちます。譲る側が「譲りたい」としていても受け取る側が拒否をすれば生前贈与を行うことはできませんし、受け取る側が「受け取りたい」と言っても譲る側が断れば生前贈与は成立しません。

生前贈与のメリットと注意点

このような特性を持つ「生前贈与」ですが、そのメリットと注意点(デメリット)についても解説していきます。

生前贈与のメリットは、大きく分けて以下の3つです。

1.だれにでも、いくらでも渡すことができる

2.財産を譲る時期を選べる

3.税金を軽減することができる

ひとつずつ見ていきましょう。

1.だれにでも、いくらでも渡すことができる

生前贈与のもっとも大きなメリットは、「だれにでも、いくらでも渡すことができる」という点です。

相続の場合は、何も記さなければ法定相続人がすべての財産を引き継ぐことになります。仮に法定相続人以外の人間に財産をすべて譲ると遺言書に記したとしても、法定相続人は遺留分を請求することができます。このため、譲る側の意志を100パーセント反映することはできません。

しかし生前贈与の場合は、だれにでも、いくらでも財産を渡すことができます。

一定金額以上を渡した場合は贈与税が発生しますが、それでも、「自分の意志で、自分の決めた金額を、特定の人間に渡すことができる」というのは非常に大きなメリットです。

2.財産を譲る時期を選べる

人が亡くなった後から開始する「相続」とは異なり、生前贈与は譲る側が決めたタイミングで財産を渡すことができます。

この特色が特に大きなメリットとなるのは、「不動産などの受け渡し」です。

不動産は現金とは異なり、その価値は一定ではありません。将来的に大きく値上がりする可能性が高いものもありますし、逆に将来的に大きく値下がりする可能性があるものもあります。

「将来的に土地の値段が上がりそうだから、相続税を軽くするためにも早めに譲る」などのような選択肢をとることができるようになるのです。

3.税金を軽減することができる

一定額以上の財産を相続した場合、相続税がかかることになります。しかし事前に生前贈与というかたちで財産を渡しておけば、この相続税を抑えることができるのです。

もっとも、1年間に110万円以上を贈与した場合は贈与税がかかります。

ただし、生前贈与にもデメリットがあります。

それが、「受け渡し方やタイミングによっては、税金が発生する」という点です。

上では「110万円以下ならば贈与税がかからない」としましたが、「毎年同じ金額を渡し続けている」という場合は、定額贈与であるとされて贈与税が加算されることもあります。

また、生前贈与を行ってから3年以内に亡くなってしまった場合、生前に渡された財産であっても相続税算出の対象となってしまいます。

また、不動産の生前贈与は有用なものではありますが、登録免許税などの税金がかかることも覚えておかなければなりません。

なお、「生前贈与であること」を税務署に認めさせる必要もあるため、書類や記録はきちんと残しておきましょう。

おひとりさまが生前贈与をするために

最後に、おひとりさまが生前贈与をするための方法をお伝えします。

1.まずは「贈与契約書」を作ります。

これは、「だれがだれに対して、どのような方法で、いくら渡したか」を記したものです。譲る側と受け取る側の両方が、自筆・実印で記します。

2.振り込みで行い、通帳を記帳する

生前贈与で現金を渡す場合は、振り込みで行うのが基本です。その際には通帳の記帳も忘れないようにしましょう。これによって、「だれがだれにいくら渡したか」がはっきりとわかります。

なお不動産の場合は、譲る側が

・不動産の登記事項証明書

・固定資産評価証明書

・登記識別情報あるいは登記済権利証

・印鑑証明書

を用意する必要があります。

上でも述べたように、生前贈与は税務署に認めさせなければならないものです。そのため、お金の動きがしっかりわかるようにしておかなければなりません。

なお、「親は死に、兄弟姉妹とは仲が悪かったが、姪は世話をしてくれた。姪にすべての財産を渡したい」と考える人もいるでしょう。おひとりさまの場合、配偶者がいませんから、特にこのような状況になる可能性が高いといえます。

甥や姪は、その親(亡くなる人にとっての兄弟姉妹)が生きていた場合、法定相続人にはなりません。彼らに財産を渡したい場合は、特にこの「生前贈与の手続き」が重要になってきます。