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特殊な性質を持つ「祭祀財産」、きちんとした手続きで受け継げば相続税対策にも

終活や相続について調べているとき、しばしば目に入るのが「祭祀財産」です。祭祀財産はほかの財産とは異なる性質を持つものであるため、その性質をよく知っておかなければなりません。

ここでは、

・祭祀財産とはどのようなものなのか

・祭祀財産を生前に持つことの意味

・祭祀財産を扱う場合の注意点

について解説していきます。

祭祀財産とは、ご先祖様をお祀りするために使われる財産を指す

「祭祀財産(さいしざいさん)」とは、ご先祖様をお祀りするために使われる財産のことをいいます。

代表例としては、

・仏壇や仏具、ご神体など

・家系図や家計負などの系譜

・墓石やお墓など

が該当します。祭祀に使うための道具や家系について記したもの、お墓関連のものが祭祀財産にあたると考えておくとよいでしょう。このなかでも特に「祭祀に使うための道具」「お墓関連のもの」は、終活において非常によく取り上げられます。

なおここでは「仏壇や仏具」としてお話していきますが、「仏教の道具でなければ祭祀財産とは認められない」ということはありません。

当然のことながら、キリスト教や神道、またそれ以外の宗教であっても、ご先祖様をお祀りするために使うものであるのなら祭祀財産として認められます。

ちなみに祭祀財産を受け継ぐ人のことを、特に「祭祀継承者」と呼びます。

祭祀財産を生前に持つことの意味について

さて、このような性質を持つ祭祀財産ですが、この祭祀財産にはほかの財産にはない特異性があります。

人が亡くなったときに残される遺産は、基本的に相続税の対象となります。

しかし祭祀財産は相続税の対象となりません。

「子どもたちに現金で残して、その現金で仏壇やお墓を買ってもらう」という場合は、その現金が課税対象となります。それに対して、「生前に仏壇とお墓を自分で購入しておき、自分が死んだときにそれを子どもたちに引き継がせる」というかたちをとった場合は、仏壇とお墓の購入時にも相続税は発生しません。また、これを子どもたちが引き継いだとしても課税されることはないわけです。

この「祭祀財産は相続税の課税対象とならない」という決まりは、非常に大きいものです。

そのため、相続税対策として、「生前にお墓を決めたり墓石を購入したり、仏壇などを一通り用意したりすること」が推奨されています。

またこのように生前に墓地・墓石・仏壇・仏具をそろえることは、残していく家族の負担を軽減することにも役立ちます。

「相続税の課税対象にならない」という金銭的な面はもちろんのこと、「大切な人が亡くなって忙しくも苦しいときに、仏壇やお墓を用意しなければならないという大変さを軽減できる」というメリットもあるのです。

なお、ほかにも祭祀財産と一般的な財産の違いがあります。それが、「祭祀財産は分割されず、かつ原則として1人だけに受け継がれるものである」という点です。

一般的な財産は法定相続人で分けられます。配偶者と子どもが3人いれば、4分割されるのです(配偶者が2分の1、子どもが6分の1ずつ)。

しかし祭祀財産の場合は、相続人は原則としては1人だけとされています。仏壇やお墓、墓地は、その性質上分割できるものではないからです。

祭祀財産の継承者は、基本的には慣習に従って決められます。ただし、遺言書などで「長男ではなく、次男に残す」などのように指定があれば祭祀財産の継承者は次男となります。一般的な財産とは異なり、遺留分も発生しません。

ちなみに祭祀財産は、その特性上、「家族(特に直系卑属)が受け継ぐもの」と考えられがちです。しかし相続人全員の同意があれば、友人や知人などがこれを継承することもできます。

祭祀財産の注意点

このように特異性を持つ祭祀財産ですが、そのなかでも特に「祭祀財産は課税対象外となる」という点は覚えておきたいものです。

ただ、「祭祀財産というかたちをとれば、どれほど豪華なものを作っても構わない」というわけではありません。

たとえば、「後で換金できるように」と純金の仏壇や仏像を作ったとしましょう。ケースバイケースではありますが、このように換金性が高いうえに著しく高価なものの場合は祭祀財産であると認められない可能性が高いといえるでしょう。

祭祀財産は、あくまで「ご先祖様をお祀りするために使われる道具を、課税対象と考えることは一般的な感覚になじまない」という理由で非課税となっています。相続税逃れのために祭祀財産とその考えを悪用することは許されていないのです。

このような注意点はあるにせよ、祭祀財産を生前に購入しておくことは残される家族の負担を大きく減らすことにつながります。また生前に購入することで、自分好みの仏壇やお墓を手に入れることができます。特にお墓は形も材質も多様化していっていますから、選ぶ楽しみもあるでしょう。自分にとっての最後の住処となるお墓を、自分の目で選んでみるのもおすすめです。