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事業承継の成功への近道!親族内、従業員、第三者承継それぞれのメリットとデメリットを把握しよう

終活を始めるにあたり、自営業者、中小企業経営者は「自分のあと、会社をどうするか?」を考えます。全国の中小企業のうち、約65%が後継者不足となっている現状です。自分が納得のいく相手に、自社のバトンを渡すには、どうすればよいでしょうか?ここでは中小企業の事業承継と、スムーズな事業承継の方法について考えていきます。

事業承継とは何か

事業承継とは会社の経営を別の経営者に引き継ぐことを指します。「承継」に似た言葉に「継承」がありますが、二つの言葉には微妙なニュアンスの違いがあるので、注意が必要です。「承継」は地位や事業、精神を受け継ぐ言葉であり、「継承」は身分、土地や金品、具体的な財産を受け継ぐことを意味します。事業承継は会社を受け継ぐだけでなく、経営者としての企業精神、経営理念などを合わせて引き継ぎ、受け継ぐことを指す経営用語です。会社がこれまで築き上げてきた歴史、社会に与える影響なども同時に引き継がなくてはなりません。事業承継は主に3つのパターンに分類されます。

親族内承継の実際

以前は当然のように行われていた親族内承継は、今では大幅に数を減らしています。その原因は社会の多様化と日本の少子化が影響している、といえるでしょう。実際に親が経営する会社を引き継ぐ子や親族は、全体の半数を僅かに超える程度です。日本の平均出生率は1.36人であり、複数の後継者候補を確保するのは難しくなっています。事業の現状や社会情勢から「我が子に自社を継がせたくない」と考える経営者も多いようです。

誰を選ぶか?従業員承継

子ども、親族が承継しないと意思表示している、親族に適任者がいない場合は自社内の従業員から後継者を選ぶ方法が一般的です。親族以上に自社を理解し、経営を熟知している社員もいるので、今後の発展や企業の拡大を望むには、効果的な手段といえるでしょう。しかし従業員承継は誰を後継者に選ぶか、という難しい問題を孕んでいます。有資格者など技術的に会社への貢献度が高い人間でも、経営者として優れているとは限りません。

第三者承継、M&Aなど

自社を全く血縁のない、従業員でもない、第三者に承継する方法があります。M&Aは合併と買収と訳されますが、後継者不足に悩む企業にとっては自社の承継を成立させる有益な方法ともいえるでしょう。最近では「会社を譲りたい人」と「会社を受け継ぎたい人」を繋ぐ事業承継支援センターや事業承継マッチングサイトがさかんに活動をしています。特に古くからの伝統を受け継ぐ、地方の中小企業には大いなる福音となっているようです。一例をあげると、北陸地方の某日本酒造会社にとって後継者問題は深刻かつ切実な問題でした。経営者は第三者承継を決断して一線を退き、製造と経営のアドバイザーとして会社と関わっています。販売戦略などに変化はありましたが、代々続く日本酒の味は大切に受け継がれた、とのことです。

事業承継~それぞれのメリット

事業承継は中小企業の大きな転換です。事業承継の3つのパターンから、それぞれのメリットを見ていきましょう。

親族内承継のメリット

親族内承継は後継者教育を早期に行える点が一番のメリットです。早い段階で徐々に引き継ぎできるので、社員や取引先の理解が得やすくなり、承継がスムーズに進みます。また資産を生前贈与すると財産整理ができる上、相続時の節税に繋がります。

従業員承継のメリット

従業員承継のメリットは何よりも自社に詳しい人間に会社を任せられる点です。共に会社を築き上げ、育ててきた従業員は社内の状況を熟知しており、業務内容や現場に関する情報を既に共有しています。また、複数の社員の中から、最適な人材を選べる点も従業員承継のメリットといえるでしょう。

第三者承継のメリット

第三者に承継すると、後継者問題は解決し、自社は廃業を免れます。販売戦略の変更によって利益が上がり、残された社員に還元されれば理想的な承継となるでしょう。事業を譲渡した元経営者は現金を受け取り、借入金の清算や引退後の生活に役立てているようです。

事業承継~それぞれのデメリット~

事業承継はどうしても避けられないリスクやデメリットも存在します。メリット、デメリットを熟考し、後悔のない正しい判断に踏み切りましょう。

親族内承継のデメリット

自社の後継者としてふさわしい人材が親族内にいない可能性があります。後継を拒否される場合もあるでしょう。また、親族に後継者候補が複数人いると、社内や親族間で協議がまとまらず、トラブルに発展するケースもあるようです。

従業員承継のデメリット

従業員承継は親族内承継よりも外部の信用度が低いといわれています。経営者は関係者に対して十分な説明をし、従業員承継の理解と承認を得なければなりません。また社内後継者に資金力がないと、会社の株式買取が困難となり、事業の運営が難しくなります。

第三者承継のデメリット

第三者承継は希望する買い手がみつからない場合があります。公的機関やマッチングサイトを利用しても、理想とする譲渡先が見つからないと、時間ばかりを浪費してしまうでしょう。第三者に承継したものの、従業員や親族、取引先の理解が得られず、経営が厳しくなる例もあるようです。

事業承継、気をつけるべきこと

事業承継について、3つのパターンを解説しましたが、いずれにも共通する注意事項があります。事業承継は稼働中の早い段階で決断しなければなりません。後継者教育は時間をかけて注力し、経営と並行して行うことが必須です。黒字経営でありながら、後継者問題が解決せず、廃業に至るケースは廃業した企業全体の半数に及びます。後継者に伝えるべきものは自社の利益や経営だけではありません。自社がこれまで背負ってきた歴史、社会的責任、顧客からの信頼なども合わせて引き継がなければならないのです。信頼に足る後継者を早期に育成し、会社の更なる発展を見守る時間を、自分自身で確保しましょう。

まとめ

事業承継には親族内承継、従業員承継、第三者承継の3つのパターンがあります。承継は事業の大きな転換ですから、いずれの方法でもメリット、デメリットがあると理解しましょう。メリット、デメリットを熟考し、最も有益な方法で自社のバトンを渡してください。後継者教育には十分な時間が必要なので、早期に着手することが大切です。