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ペットと人間の絆を永遠に:飼い主が亡くなった後のペットの世話の受け継ぎ先は?終活の際の検討事項

ペットは、大切な家族の一員です。今もペットと一緒に住んでいる人も多いのではないでしょうか。ただ、ペットも人間もいつまでも一緒に生き続けられるわけではありません。ペットが亡くなったときは飼い主がその面倒をみることができますが、逆に、飼い主が亡くなってしまった後のペットの面倒はだれがみるのでしょうか?

終活のときに考えておきたい、ペットの処遇

飼い主が高齢化したり、病気を患ったりした場合、下記のような問題が起こる可能性があります。

・飼い主の体力や判断力が低下し、ペットの面倒をみることが難しくなる

・急病などで入院してしまい、ペットが取り残されてしまう

・飼い主が亡くなり、ペットの引き取り手がいなくなる

短期的な入院などの場合は、ペットホテルを利用すれば事足ります。ただペットホテルは非常に高額です。また入院が長引いたり、飼い主が亡くなったりした場合は、ペットホテルからの退去も考えなければなりません。

このため、終活の一環として「自分が死亡した後のペットの行く末」を考えておくことは非常に重要です。もっとも良いのは、「自分の家族(子どもなど)に、ペットの世話を頼む」という方法でしょう。また、友人や知人にお願いするのもひとつの方法です。

それが難しいようならば、保護団体を頼る手もあります。

また大前提として、「今飼っているペットの面倒は最後までみるが、新しくペットを引き取ることは慎重になるべきである」という認識を持っておくことも重要です。

犬も猫も、その平均寿命は10年~18年とかなり長いといえます。日本人の平均寿命は84歳ですが、健康寿命は73歳です。「ペットが最期を迎えるまで、飼い主として責任をもって見届ける」と考えるのであれば、55歳以降に新しいペットを飼うことには慎重になるべきだということがこのデータからもわかります。

出典:厚生労働省「令和2年版 厚生労働省白書―令和時代の社会保障と働き方を考える―図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移」

自分の死後もペットが安らかでいるために~ペットに遺産を渡すことはできる?

飼い主が死亡した場合、ペットは最悪の場合は殺処分というかたちでその未来を絶たれてしまいます。

このようなことを避けるために、「ペットに財産を残したい」と考える人もいるのではないのでしょうか。

しかし結論から言うと、ペットに対して遺産を渡すことはできません。

法律上では、ペットは「物」として扱われます。このため、「物」に分類されるペットに対して、直接遺産を渡すことはできないのです。

遺産相続において非常に重要であり、また強い法的拘束力を持つものとして「遺言書」がありますが、この遺言書に単純に「私の財産はすべてペットに残す」と記してあったとしても、これが認められることはありません。

ただし、「遺産」をひとつの材料として、ペットの世話をほかの人に託すことはできます。

その方法とは、「負担付遺贈」と「負担付死因贈与」です。

「ペットの世話をさせること」を条件として遺産を渡すことができる

負担付遺贈も負担付死因贈与も、「なんらかの条件をつけて、それを履行することを条件として遺産を渡す」という方法です。

詳しく見ていきましょう。

負担付遺贈……「ペットの世話をしてくれることを条件として、財産をAに渡す」とするものです。この負担付贈与の場合、財産の受け取り手側となるAの合意は必要ありません。遺言書を使って飼い主が一方的にAを指名することができるため、非常に手軽なやり方です。

ただ一方で、指定されたAを含めてほかの相続人全員が「この遺言書の内容に反対する」とした場合、Aはペットの世話を拒否することができます。

負担付死因贈与……こちらも、「ペットの世話をしてくれることを条件として、財産をAに渡す」とするものです。しかし負担付遺贈の場合とは異なり、負担付死因贈与では飼い主とAの合意が必要となります。書面をきちんと作成をしておけば、Aはこれを拒否することは基本的にはできません。仮に「負担付死因贈与の契約を結んだにも関わらず、Aはペットの世話を放棄した」となった場合は、Aの債務不履行にあたるとし、贈与を取り消すことができます。このため、「ペットの世話をきちんと行わなければ、遺産を引き継げない」ということになるのです。

負担付遺贈と負担付死因贈与を比べると、負担付死因贈与の方がより強い強制力を持つことがわかります。もちろん負担付死因贈与であっても、「贈与を取り消されることになったとしてもペットの面倒をみない」という選択肢を取ることはできます。しかし負担付遺贈に比べてかなり財産面でのマイナスが大きい選択肢であるため、わざわざペットの世話を放棄する人はあまりいないかと思われます。

このため「自分の死後も、ペットに安らかで安定した生活を送ってほしい」と考えるのであれば、負担付死因贈与の契約を取り交わすことが望ましいといえるでしょう。