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2024年の改正を控えたNISAとiDeCoの比較分析:資産形成における両制度の役割と選択肢の検討


NISAもiDeCoも、両方とも資産形成において大きな意味を持つものです。ただ、この2つの間には違いもあります。

どちらが一概に良い・悪いといえるものではないため、資産形成を目指すうえでは、それぞれの特徴をよく知り、「自分にはどちらの方が向いているか」を考えていくことが必要です。

※NISAは、2024年の1月1日に改正されました。下記では基本的には2024年1月1日以降に実施されている制度の方を取り上げますが、2023年までのものと特に比較しなければならない場合は2023年までのものを「旧NISA」とします。

NISAとは何?そのメリットについて~iDeCoとの違い~

NISA(ニーサ。以下では英字表記に統一)は、2014年から開始された制度です。そして前述した通り、2024年の1月1日から改正されたものでもあります。

資産を形成していくための資産形成方法のうちのひとつであり、通常ならば課税対象となる投資運用益を、条件を満たすことで非課税で扱えるという制度です。

・NISAの場合はいつでも引き出せる

NISAとiDeCoの大きな違いは、「iDeCo(イデコ。以下では英字表記に統一)とは異なり、NISAはその資産形成・運用の目的が自由であること」にあります。iDeCoの場合はあくまで「老後資金とすること」を目的とするため、原則として60歳以上(※死亡時や、障がいを患った場合を除く)でなければ引き出せませんが、NISAの場合はいつでも引き出すことができます。

また、老後の資金としてのみならず、家を買うための費用や子どもの学費などにも利用できます。

・年齢の制限が緩い

NISAの場合は、対象年齢が18歳以上であればよいと定められています(旧NISAにあった「ジュニアNISA」は、2024年以降の新NISAでは撤廃されました)。

対してiDeCoは「20歳~原則60歳まで(条件をクリアすれば65歳まで)」とされています。そのため、iDeCoに比べてNISAの方が年齢制限がゆるいといえるでしょう。

・年間の投資枠が大きい

NISAには「つみたて投資枠(長期の運用を基本とする投資)」と「成長投資枠(自由度が高い投資)の2つに分けられています。

つみたて投資枠の場合は年間で120万円まで、成長投資枠の場合は年間で240万円までの投資が認められています。また、非課税で保有できる限度額は、つみたて投資枠+成長投資枠で総額1800万円です。ただし、つみたて投資枠と成長投資枠は併用できるものの、成長投資枠の限度額は1200万円とされています(つみたて投資枠の場合は、つみたて投資枠のみで1800万円まで非課税で保有することができます)。

iDeCoの場合は投資をする人の立場によって年間の投資枠が異なりますが、最大で82万円ほどです。このため、年間投資枠で考えた場合は、iDeCoよりもNISAの方が大きいといえます。

iDeCoとは何?そのメリットとは~NISAとの違い~

NISAの概要とメリットを紹介したところで、ここからはiDeCoの概要とメリットについて解説していきます。

iDeCoは、NISAに先駆けること13年ほど前の2001年に発足した制度です。NISAは、旧NISAであってもその始まりは2014年ですから、iDeCoの方がより長い歴史のある制度だといえるでしょう。ちなみに「iDeCo」という名前が付けられたのは2016年のことで、それまでは「個人型確定拠出年金」あるいは「日本版401k」という堅苦しい名前で呼ばれていました。また現在でも、「個人型拠出年金」と記されることがあります(ここでは「iDeCo」の表記に統一します)。

iDeCoはNISAとは異なり、「老後のための資金」と位置付けられています。そのため、特定の条件を満たさない限りは、60歳未満で引き出すことはできません。このような制限はあるものの、iDeCoにはiDeCoの大きなメリットがあります。

・非課税の保有限度額がない

NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つがあり、その2つを合わせた非課税保有限度額は1800万円と定められています。つみたて投資枠の年間投資枠は120万円、成長投資枠の年間投資枠は240万円ですから、毎年満額を投資していると、5年間で限度額に達してしまうということです(ただし薄値残高方式であるため、買値が1800万円に達しない場合は、その投資で利益が出ていてもそれを加味せずに再投資が可能)。

しかしiDeCoの場合は、この非課税投資額の制限がありません。iDeCoは投資者の立場によって年間投資枠の限界が変わりますが、もっとも多い第1号保険者(自営業者など)は年間で81万6000円を投資できます。

iDeCoは20歳から利用できますから、23年(43歳まで)満額で投資をし続ければ、その非課税保有額は1800万円を超えることになります。また、1800万円を超えてからも投資を続けることができます。

理論上、20歳になった時点から60歳までiDeCoを利用した場合、その積立元本は3264万円にものぼることになります。

シミュレーション参考▶ろうきん「iDeCoシミュレーション」
https://www.wam.abic.co.jp/contents/C642999/dcsimu/step4.html?income=500&age=20&kakekin=68%2C000&rate=1.0&asset=0&receiveage=60&spouse=2&family=&family_1=&family_2=&family_3=&family_4=&family_5=&family_6=&family_7=&family_8=&kbn=1

・税制優遇措置の範囲が広い

NISAもiDeCoも両方とも税制面で優遇を受けられる制度であり、投資でありながらもそこで得た利益を(条件付きで)非課税にできる制度です。

ただ、NISAに比べてiDeCoは、より税制優遇措置の範囲が広いものだといえます。

NISAの場合、非課税となるのは運用益に限られます。しかしiDeCoの場合は、運用益はもちろん、掛け金もまた所得控除の対象となります。さらに受け取る場合も、分割受け取りの場合は公的年金等控除を、一括で受け取る場合は退職所得控除の対象となります。

・元本保証型の商品を選べる

iDeCoの場合は、手数料はかかるものの、定期預金などの安全性が非常に高い商品を選べるのもメリットです。

これは「元本確保型商品」と呼ばれるものであり、手数料はかかるものの、安定した運用を行えるものです。

「老後に備えてお金を貯めておきたいが、投資ということで、大きく資産が目減りする可能性があるので怖い」という人にとっても、iDeCoは使いやすいものといえるでしょう。

NISAとiDeCoを見比べて考える

ここまでNISAとiDeCoのそれぞれのメリットを見てきました。まとめると、以下のような表になります。

【NISAとiDeCoの違いとメリット、早見表】

NISAiDeCo
対象年齢18歳以上原則として20歳~60歳
運用できる商品つみたて投資枠・成長投資枠投資信託はもちろん、定期預金などの
元本確保型商品も含まれる
非課税保有限度額つみたて投資枠+成長投資枠で
1800万円まで
上限なし
引き出せるタイミングいつでも引き出せる原則として60歳以上かつ加入期間が
10年以下の場合は制限あり
年間投資枠つみたて投資枠120万円、
成長投資枠240万円
立場によって異なるが、
14万4000円~81万6000円
非課税や控除の範囲運用益非課税、受け取り時には控除なし運用益非課税、受け取り時にも控除あり、
掛け金も所得控除を受けられる

このように見比べると、NISAに向いている人とiDeCoに向いている人の特徴が分かります。

「いつでも引き出せること」「自由度の高さ」を重要視する人ならばNISAの方が向いていますし、「豊かな老後を送りたい」「安定した資産運用をしたい」と考えている人ならばiDeCoの方が向いているでしょう。

もっとも重要なのは、「NISAとiDeCoは、二者択一の制度ではない」ということです。
NISAとiDeCoは、「片方を選んだら、もう片方を選ぶことはできない」と決められている制度ではありません。そのためNISAとiDeCoの両方で投資し、運用していくことも可能です。「資産形成においては、NISAとiDeCoの両方を併用することが推奨される」としている専門家も多くいます。

それぞれの特徴を踏まえたうえで、自身の資産運用方法を考えていきたいものですね。

※本原稿は2024年1月16日に執筆しています。実際に運用に踏み切る場合は、必ず最新の情報にあたり、金融機関に相談をしてください。
※商品や経済状況の変化によって元本割れするリスクがあります。