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「相続税対策に活用できる!?養子縁組の全貌を解説:遺言の作成、基礎控除の活用、解消方法まで」

「養子縁組と相続の関係」については、「養子縁組と相続:実子との相続権の違いや影響について」の記事で解説していきました。養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があり、それぞれに違いが見られます。たとえば普通養子縁組をした場合は養子は実親と養親両方の財産の法定相続人となりますが、特別養子縁組をした場合は養子は養親の財産の法定相続人にはなるものの実親の財産の法定相続人ではなくなります。

このあたりを踏まえつつ、今回の記事では、「養子と相続税」について解説していきます。

遺言との関連

まず、「養子と遺言の関連性」について解説していきます。

なお大前提ではありますが、現在の日本の法律では、相続においては養子と実子ではその法定相続分の割合に差はありません。たとえば母親死亡後に父親が死亡し、子どもが養子1人と実子2人であった場合、父親の遺産は養子3分の1・実子1に3分の1・実子2に3分の1が引き継がれるのが原則です(※後述するように、遺言で分配割合が指定されていた場合はこの限りではありません)

遺言に記したとしても、養子縁組を死後に成立させることはできない

初めに注意点として挙げたいのは、「遺言に記したとしても、死後に養子縁組を成立させることはできない」という点です。普通養子縁組は基本的に養親(となる人)と養子(となる人)の双方の合意によって成り立つものですし、特別養子縁組は家庭裁判所の判断をもって組まれるものです。このような原則があるため、かなり効力の強い「遺言」に書いておいたとしても、死後に養子縁組を成立させることはできないのです。

なお、しばしば誤解されるのですが、「養子」と「認知」は別のものです。「認知」は出生した子どもと父親の関係を確定するためのものです。「認知」をした場合、認知された子どもは、その父親の子どもとして認められ、法定相続人の立場を確保できます。

そしてこの「認知」は、「遺言認知」というかたちで、遺言をもって行うことができます。つまり、「死後に養子にすることはできないが、認知することはできる」といえます。ちなみに認知は、子どもが成人している場合は子ども自身の承諾で、子どもが胎児もしくは未成年の場合は母親の承諾によって行われます。

連れ子に遺産を相続させたい場合は、生前に養子縁組を組むか遺言を作成する必要がある

連れ子に遺産を相続させる場合は、生前に養子縁組を組むか、遺言を作る必要があります。

A…今回亡くなった人
B…前妻
C…AとBの子
D…Aの現妻
E…Dの元夫
F…DとEの子
G…AとDの子
という例で見ていきましょう。

この場合、Aの遺産を引き継ぐことになるのは、現妻Dと、AとBの子であるCと、AとDの子であるFのみです。Aの前妻であるBはもちろん、家族同然に暮らしていた場合であってもDの連れ子であるFはAの法定相続人にはなりません。

このようなケースでAがFにも遺産を相続させたいと考えた場合、AとFは事前に普通養子縁組制度を利用して、養親と養子の関係を築かなければなりません。もしくは、Aが遺言でFを財産の受取人として指定する必要があります。

なお遺言書は遺産の分配比率(たとえば「私が亡くなった後、Cに遺産の全てを渡す」など)を指定することもできます。ただしこの場合、法定相続人である現妻Dと、AとDの間にできた子どもであるGは、Cに対して遺留分(相続人全体で2分の1)を要求することはできます。

迎えられる養子の数には限界がある

養子制度は単純に「家族としてのかたちを作ること」だけを目的に行われるばかりではなく、相続税対策としても用いられることもあります。このようなことから、形態によっては、迎える養子の数に制限が出る場合もあります。

・実子がいる人が、普通養子縁組で、再婚者の連れ子ではない人を養子に迎える場合
→ 1人まで

・実子がいない人が、普通養子縁組で、再婚者の連れ子ではない人を養子に迎える場合
→ 2人まで

・普通養子縁組で、再婚者の連れ子を養子に迎える場合
→ 実子の有無に関わらず、人数に制限なし

・特別養子縁組で、養子を迎える場合
→ 実子の有無に関わらず、人数に制限なし

 実子あり実子なし実親の遺産
普通養子縁組×連れ子ではない1人2人引き継げる
普通養子縁組×連れ子制限なし制限なし引き継げる
特別養子縁組制限なし制限なし引き継げない

相続税との関連

相続時に発生する可能性のある「相続税」については、下記の基礎控除が受けられます。

3000万円+600万円×法定相続人数

これは、養子であれ実子であれ変わらない数字です。たとえばAが亡くなったとき、現妻であるDと、AとBの実子であるCと、AとDの実子であるGと、Dの連れ子でAと普通養子縁組を結んだEがいた場合、3000万円×600万円×4=5400万円までの遺産ならば相続税を支払う必要はありません。またここに、新たに養子としてHを迎えた場合、6000万円までが基礎控除となります。

ただし、上でも述べたように、実子がいる場合は新しく(※再婚相手の連れ子ではない)養子を迎える場合、法定相続人として数えられるのは1人までです。

なお、「祖父母が多額の資産を持っている。そのまま子どもに受け継がせてから孫に受け継がせる場合、相続税が2回発生するのでこれを避けて、1代飛ばして孫に資産を受け継がせたい」とした場合、たしかに相続税の発生回数は1回だけにはなります。しかしこの場合、その「1回の相続」に対しては、相続税が2割増しで加算されてしまうため、どちらが得になるかをよく考えなければなりません。

養子縁組の解消

普通養子縁組をした場合、養子と実親の関係は維持されます。そのため、養子は実親と養親、両方の法定相続人となります。特別養子をした場合、養子と実親の関係は消滅します。そのため、養子は養親のみの法定相続人となります。では、この養子縁組を解消したい場合はどうすればよいのでしょうか。

普通養子縁組の場合は、養親と養子、双方の合意があり、証人を2名立てて、協議離縁届を出せば養子縁組は解消されます。養子縁組を解消した場合、養子は当然に養親の法定相続人としての資格を失います。なお「片方が養子縁組を解消したいとしているが、もう片方は同意しない」という場合は、裁判所の力を借りて手続きを進めていくことになります。

特別養子縁組の場合は、原則として解消が認められません。特別養子縁組の解消が認められるケースは、

1.養親が養子を虐待や悪意の遺棄をしている
2.実親が子どもを監護できる環境にある
3.養子のために、特別養子縁組を解消する必要がある

の以上3点「すべて」を満たしていると判断される場合のみです。そのため「実質的には無理である」と考えておきましょう。

養子縁組が後に解消されると、その時点から養子の相続権は失われる可能性があります。しかし、解消前に養親が亡くなった場合、養子は相続権を行使できる可能性があります。

このように、「養子」を迎えた場合、遺産相続がかなり複雑になる可能性があります。そのため、特に相続税対策として養子を迎えようとしている場合、「だれを、何人養子として迎えるのか」「それによって本当に相続税は軽くなるのか」をよく考えなければなりません。迷った場合は専門家に相談する方が安心でしょう。