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【弁護士厳選】養子縁組と相続の関係性を徹底解説!実子との相続権の違いや影響について詳しく紹介

日本には「養子縁組」の制度があります。これはごく簡単にいえば、「生みの父親・産みの母親以外の人間を養親としたり、養子としたりする制度」のことをいいます。この養子縁組を結ぶことで、相続にも大きな影響が出ます。

ここでは、「養子縁組と相続」をテーマに、「養子縁組によって得られるもの」「養子縁組によって変わるもの」「親子関係の終了はどのように考えられるか」について解説していきます。

相続権の取得

「養子縁組」とは、産みの父母以外と養親―養子の関係を組む制度のことをいいます。なお「養子縁組」というと、「血のつながらない赤の他人と親子関係を築くもの」という印象を持つ人も多いかと思われますが、実際には「祖父母と孫」などのように血縁関係のある人であっても結ぶことができます。

さて、この「養子縁組」には、大きく分けて2つの種類があります。

普通養子縁組

普通養子縁組とは、養親と養子となる者双方の同意を得て成立することを原則とするものです。15歳以上であるならば自分の判断で普通養子縁組を結べます(※ただし未成年者を養子とする場合は、婚姻関係にある夫婦が養親となること、また家庭裁判所からの許可が必要です)。なお普通養子縁組を結ぶ場合は、「養親は成年になっていて、養子となる者は養親となる者よりも年下でなければならない(かつ養親の尊属を養子にすることはできない)」と定められています。

特徴的なのは、「普通養子縁組の場合は、たとえ養子縁組を結んだとしても、実の親との親子関係は切れない」という点です。つまり、実親ABから生まれた子どもCが、そののち養親(となる)DEと普通縁組を結んだ場合、Cは実親ABと養親DEの4人を「親」として持つことになります。またこの場合、Cは実親ABの法定相続人の立場を維持できるうえ、養親DEの法定相続人ともなり得ます。また、普通養子縁組を結んだ場合、養子の戸籍には実親・養親の両方が記載されることになります。

なお、「現在の日本では、同性との結婚は認められていないが、同性の恋人を法定相続人としたい」と考えた場合は、この普通養子縁組を組むことが有効です。年上の方が養親となり年下の方が養子となりますが、「親子関係」というかたちで財産を引き継ぐことができます。また、「再婚相手の連れ子を養子にしたい」と考えた場合も、原則としてこの普通養子縁組を結ぶことになります。

特別養子縁組

特別養子縁組とは、子どもの福祉を目的として成立した制度です。この制度は、実親が子どもを育てるのが困難な状態にある場合や、子どもを虐待していると判断されるときに、実親との関係を断ち切って、養親(となる人)との親子関係を成立させるものです。普通養子縁組と特別養子縁組では、多くの点で違いがみられます。すでに述べた通り、普通養子縁組の場合は原則として双方の合意の下で成立します。

しかし特別養子縁組の場合は、これを成立させるべきかどうかは家庭裁判所が決定します。そのため養親(となる人)と養子(となる人)の合意があったとしても、家庭裁判所が認めなければ特別養子縁組を組むことはできません。さらに、虐待や悪意の遺棄などの一部の特例を除き、特別養子縁組を組む場合は実親の同意が必要となります。

普通養子縁組の場合は、養親は「養子となる者よりも年上であり、養子となる者の卑属ではなく、成年に達していること」の条件をクリアしていることが必要です。しかし特別養子縁組の場合は、養親は「夫婦であり、片方が25歳以上で、その配偶者が20歳以上でなければならない」と定められています。また養子となる者の年齢は、15歳以下でなければなりません(2020年の3月までは「6歳まで」とされていました)。

特別養子縁組を結んだ場合、養子と実親の関係は消滅します。そのため、養子となった者は実親の法定相続人の立場からは排除されます。上記のケースでいえば、養子Cは実親ABの法定相続人ではなくなり、養親DEのみの法定相続人となるということです。

また、特別養子縁組の場合は、戸籍に実親のことが記載されません。

相続分の確定

普通養子縁組や特別養子縁組で子どもを迎え入れた場合、相続人の受け継ぐ財産に変動が見られます。現在の法律では、相続においては実子も養子も同じように扱われます。ただし相続税の基礎控除の計算式に組み込むことのできる養子の人数は、利用した制度と実子の数によって異なります。

・普通養子縁組で、養子となる子どもが結婚相手の連れ子ではなく、かつ実子がいる
→ 法定相続人とすることのできる養子は1人まで

・普通養子縁組で、養子となる子どもが結婚相手の連れ子ではなく、かつ実子がいない
→ 法定相続人とすることのできる養子は2人まで

・普通養子縁組で、養子となる子どもが結婚相手の連れ子である
→ 法定相続人とする養子(連れ子)は何人でも構わない

・特別養子縁組である
→ 実子の有無に関わらず、法定相続人とすることのできる養子は何人でも構わない

なお、「普通養子縁組をした子ども(上記のC)に子どもFが生まれた」という場合、FはCの実親ABの孫として代襲相続人となるだけでなく、養親DEの孫としても代襲相続人になることができます。しかしFが養親DEの財産の代襲相続人となるのはあくまで「普通養子縁組をした後に生まれた場合」に限ります。そのため、Cと養親DEが養子縁組を結ぶ前にFが生まれていた場合、FはDEの代襲相続人にはなりません。

また、上でも少し触れましたが、結婚相手の連れ子を法定相続人とする場合には、普通養子縁組を結ぶ必要があります。これを結んでいない場合は、連れ子は「自分の親の配偶者が亡くなった場合の法定相続人」にはなれません。

親子関係の終了

すでに述べた通り、親子関係が終了するのは「特別養子縁組」を選んだときのみです。普通養子縁組を選んだ場合は、実親との親子関係は終了しません。そのため、他家に普通養子縁組で入った人であっても、実の親からの遺産を法定相続人として受け継ぐことができます。

また、「他家の養子縁組になったこと」を理由として、実親からの財産の配分がほかの兄弟よりも低くなることもありません。たとえば実親の子どもとして自分のほかに2人のきょうだいがいて両親がともに他界した場合(でかつ遺言書が残されていない場合)は、実親の財産を3分の1ずつ引き継ぐことになります。

しかし特別養子縁組の場合は、実親との関係性が完全に断ち切られることになります。そのため、特別養子組のかたちで他家に入った場合、実親からは資産を受け継ぎません。養親の財産は、きょうだいで分けることになります。

普通養子縁組・特別養子縁組の違い

 普通養子縁組特別養子縁組
成立条件原則として養親・養子の同意家庭裁判所の判断
対象者養親:成年であり、養子となる者の直系卑属ではなく、かつ養子よりも年上である 養子:養親となる者よりも若い養親:片方が25歳以上で、もう片方が20歳以上の夫婦 養子:15歳未満
実親との法定相続関係ありなし
戸籍への表記実親記載あり実親記載なし
法定相続人となれる者の数・結婚相手の連れ子ではなく、養親に実子がいる……1人まで
・結婚相手の連れ子ではなく、養親に実子がいない…2人まで
・結婚相手の連れ子である…何人でもよい
何人でもよい
養子縁組の解消双方の合意があれば可、それ以外の場合は調停などを利用することになる原則無理