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老後資金の確実な築き方とリスク管理のポイント


労働延長と住宅資産運用のメリット・デメリット

「老後に子どもに迷惑をかけたくない」「豊かな老後を送りたい」という考え方から、老後の資産形成を考える人は多くいます。

今回はそんな人のために、老後の資産形成の方法として、

・労働期間の延長
・投資
・不動産の現金化/リバースモーゲージ/リースバック

について解説していきます。

もっとも確実性の高い「労働期間の延長」という選択肢

老後の資産を形成する方法のなかで、もっとも確実性の高い手段として「労働期間の延長」が挙げられます。60歳以上あるいは65歳以上になってからも働き続けることを選ぶものであり、ほかの手段と比べてリスクがほとんどないのが特徴です。

就労期間を延長することで、5年間で1,000万円以上の収入増加が見込めます。65歳~69歳の平均年収は非正規雇用で270万円、正規雇用で360万円です。社会保険料などが引かれることを考慮して、実際に入ってくる収入が200万円だとしても、5年間で1,000万円以上の「余力」が生まれるのは非常に大きいといえます。

また、この「労働期間の延長」は、収入以外のメリットも多いといえます。ジョブリサーチセンターが8,000人を対象としてとったアンケートでは、高齢者が仕事をしたい理由の1位として「生活費のため」が1位で約42パーセントになっていますが、2位の「健康維持のため」も38パーセントとなっています。また、3位には「お小遣いのため」が入っていますが、4位には「社会とのつながりのため」が入っています。

このようなことから、労働期間の延長は、単純に収入の増加・維持以外の「やりがい」「孤独感の甲斐性」などのような意味をも持っているといえるでしょう。

実際に、働く高齢者の数は、過去11年以上にわたって右肩上がりで上昇しています。2021年に総務省統計局が出した「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」によれば、60歳~64歳のうちの7割以上が就業しているということがわかりますし、65歳~69歳でもその就業率は反芻を超えています。

女性の65歳~69歳の場合は就業率が4割程度にとどまっていますが、60歳~64歳では6割を維持しています。

男性の場合はさらにこの傾向が顕著で、64歳~69歳でも6割、60歳~64歳の場合は8割を超えます。

ただし、公的な年金のひとつである「老齢厚生年金」が支給対象外となってしまう可能性があることには注意が必要です。

老齢厚生年金は、給料+年金額の合計が、一定額を超えたときに支給が停止あるいは減額されてしまうものだからです。

ちなみに老齢厚生年金は、保険料の納付期間によっても左右されます。そのため個々でもらえる金額が変わってくるので、自身の納めてきた保険期間などを見直す必要があります。

出典:
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1322.html
ジョブリサーチセンター「【基本報告書】シニア層の就業実態・意識調査2023(個人編)」
https://jbrc.recruit.co.jp/data/data20230512_2656.html

※上記数字は小数点以下四捨五入

投資はリスクもあることを覚えておくべき

昔に比べて現在は、「銀行にお金を預けていても、ほとんど利息を受け取れない時代である」といえます。年利は0.1パーセントを割り込むケースも多く、多少高いところであっても1パーセントを超えることはほぼないでしょう。

このため、銀行に預けた資産の利息だけで生活をすることは、よほどの資産家以外は無理だといえます。

このような現状を見た場合、有益な方法といえるのが「投資」です。

現在はNISAなどの制度もありますし、投資によって資産形成をするという考え方は一般的になりつつあります。投資は、銀行に預けるよりもはるかに大きい収入を得られやすく、老後の資産形成を考えるうえで非常に有益な手段といえます。また、「好きな企業を応援できる」「地球環境に配慮した企業を応援できる」などのメリットもあります。

ただ、投資をするためには、もともとの資産がある程度なければなりません。もちろんレバレッジをきかせるなどして、手元資金以上の取引をすることもできますが、これはリスクも伴います。

また、投資はそもそも「確実にもうかる手段」ではありません。投資には必ず失敗のリスクがあり、元本割れをする可能性もあります。たしかに安定性の高い投資方法・投資先もありますが、これも「元本は担保されるもの」ではありません。場合によっては、老後の資金を貯めようと思って投資を始めたのに、逆に老後の資金を失うことすらもあります。

現在の住宅資金の運用を考える~不動産の現金化・リバースモーゲージ・リースバック〜

ここからは、「現在不動産を持っている人」が、その不動産を老後の資金として考える場合の選択肢について述べていきます。

なおここでは、「現在持ち家が1つあり、そこに住んでいる場合」を想定します。

不動産を現金化する…

今現在住んでいる家を売り払い、そこで得たお金を老後の資金とする方法です。

この方法は、「現在の家が建っている場所の立地が良い」「今住んでいるところは不便なので、より快適なところに住みたい」と考えている人にとって非常に有用です。また、持ち家を処分して賃貸物件に移ることで、死亡後に遺族が担うことになる財産整理の手間を減らせます。

ただこの方法の場合、長生きをすることで、賃料+生活費>売り払ったときのお金 となる可能性があることは覚えておかなければなりません。

売り払ったときに得た金額が小さければ、「住む家もなく、生活費もない状況」に陥る可能性があります。

リバースモーゲージの制度を利用する

リバースモーゲージとは、現在住んでいる自宅を担保として金融機関からお金を借りる方法をいいます。お金を借りていた人が亡くなった場合、金融機関は担保としていた自宅を得られます(現金も可能)。

生きているときは住宅に住み続けることができますし、毎月の支払いも利息だけで済みます。また、借りた人が亡くなった場合でも、配偶者が住み続けられるような契約を結ぶことが可能な場合も多いのもメリットです。

ただしこの方法は、長生きをすることで融資可能額の限界に達してしまう可能性があります。また、変動金利であるため、金利の変動による影響を受けやすいのもデメリットです。

さらに、担保となっている住宅の価値が下落した場合、融資可能額の見直しが行われることもあります。

リースバックの制度を利用する

リースバックとは、現在住んでいる住宅をいったん売却したのち、そのまま家を借り続ける制度をいいます。

上記で述べたリバースモーゲージは、不動産を担保としてお金を借ります。しかしリースバックの場合は、一度住居を売却してから借りることになるので、「借入」「担保設定」が不要です。

リバースモーゲージとは異なり、住宅を売却したときのお金を一度に得ることができます。また、資金の用途に制限がないのも大きな特徴です。

ただしこの方法の場合、不動産の所有権は、元々その住居を持っていた人の死亡を待たずに、買い取った側に移ることになります。また「所有権が移った物件」に住み続けることになるため、毎月の賃料も発生します。

老後の生活を滞りなく、人に迷惑をかけず、豊かに送るためには、「どのように資金を形成していくべきか」「足りない資金をどのように補うか」をよく考える必要があります。どの方法も正解・不正解といえるものではないため、比較検討をしつつ、自分たちのライフスタイルや経済状況にはどの方法があっているかを見定めていく必要があります。なおこれらは二者択一ではなく、併用することが可能なものも多くあります。

出典:
国土交通省「社会資本整備審議会住宅宅地分科会 中間とりまとめ案(たたき台) 参考資料」https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001351143.pdf
国土交通省「住替え、リバースモーゲージについて」
https://www.mlit.go.jp/common/000123003.pdf