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同性カップルや事実婚カップルの相続問題を解決!パートナーに遺産を渡せる4つのお墨付きの対策方法

現在は人の生き方も多様化していて、さまざまな生き方を個人が個人の選択によって選べるようになっています。また同時に、現在の法律上の問題から、現行の婚姻制度を選べない・選ぶことが難しい人もいることでしょう。

ここでは、現行の日本の法律における婚姻制度を取っていない・取ることが難しい・取れない人のために、「パートナーに遺産を渡すためにはどうするべきか」について解説していきます。

※本稿では、「同性のパートナーを持っている人」「事実婚のパートナーがいる人」を対象としています。また、本稿では「相続」のことのみを取り上げます。

同性婚事実婚の相続に関する課題・問題

「同性のパートナーを持っている人」「事実婚のパートナーがいる人」の場合、相続について格段の配慮をしなければなりません。なぜなら日本の法律において法定相続人となりうるのは、「入籍している配偶者(現在の配偶者)」「直系尊属」「直系卑属」もしくは兄弟姉妹(とその子ども)までだからです。つまり、どれだけ長い間一緒に住んでいたとしても、本人たちの間で合意が取れていたとしても、生前に対策をしていない限りは、パートナーに遺産を引き継がせることはできないのです。

たとえば、「同性のパートナーと10年以上一緒に住んでいる。両親はすでに他界済みで、自分に子どもはおらず、兄が1人いるが20年以上没交渉である」という場合でも、遺言書(後述します)などで対策をしていない限りは、兄が法定相続人となります。そのため、パートナーは権利を主張できず、遺産はすべて兄に引き継がれることになります。

また、「20年以上一緒に住んでいて、周りからも認識されている妻がいる。離婚した以前の妻との間に子どもが1人いる」という場合は、内縁の関係にある妻は法定相続人とはならず、子ども1人のみが遺産を引き継ぐことになります。

日本では、戸籍上の関係が非常に重要視されます。「パートナーとしての歴史」「実際の生活」は基本的には考慮されないということを覚えておきましょう。

パートナーシップ制度の解釈について

2015年に東京都の渋谷区で「パートナーシップ制度」が敷かれました。これは「結婚に相当する関係であることを認める」というもので、現在では100を超える自治体がこの条例を採用しています。ちなみにこのパートナーシップ制度を宣誓した場合、自治体からの受領証も出されます。

「渋谷型パートナーシップ制度」と呼ばれるこの制度を利用した場合、公営住宅に一緒に入居することができたり、生命保険の受取人に相手を指定したり、「家族カード」というかたちでクレジットカードを作ったりすることができます。

しかし、このパートナーシップ制度は「同性婚」とは意味が異なります。このパートナーシップ制度を結んだとしても、相手が法定相続人になることはありません。つまり、パートナーシップ制度を利用したとしても、法律婚の「配偶者は常に相続人となる」とする考え方は適用されないのです。

事実婚の解釈について

また、事実婚を選んだ場合、「離婚時に財産分与を行う関係になる」「社会保険の年金においては、法律婚と同じように扱われる(※配偶者控除は受けられない)」「生命保険の受取人に相手を指定できる」という状況を作ることができます。

しかし事実婚の場合も、パートナーシップ制度同様、「相手を法定相続人にすること」はできません。夫婦同然の生活をしていると判断される場合であっても、特段の対策をしていない限りは、遺されたパートナーは遺産の分配の主張をすることはできないわけです。ただし、これはあくまで「法定相続」の話です。

たとえば、「同性のパートナーあるいは事実婚のパートナーがいる。しかし法定相続人となるのは、兄1人である」という場合でも、兄が故人の遺志を尊重して、「遺されたパートナーに遺産をすべて渡したい」と考えれば、もちろん遺産をパートナーに渡すことはできます。なおこのときには、トラブルを防止するために、「相続分譲渡証明書」を作成することが望ましいといえます。

現時点での法律、改正の動向、それに備えた対策について

昔から日本では同性婚などに関する議論が続けられています。このため、将来的には法律が変わる可能性も十二分にあります。

しかしそれは、確定した未来ではありません。そのため、現在の法律に基づいた「遺産の渡し方」をしっかり考えておく必要があります。

ここからは、具体的に「同性パートナーもしくは事実婚のパートナーに財産を渡す方法」について解説していきます。

1.遺言書に記載する

もっとも確実な方法のひとつとして挙げられるのが、「遺言書に記載する」というものです。正確な形式を守った遺言書であれば、遺産を相続する相手を指定し、その人に遺産を引き継ぐことができます。

ただし、「パートナーであるAに遺産のすべて渡す」とした場合でも、法定相続人がいてかつその法定相続人が申し立てを行った場合、遺留分は法定相続人が獲得することになります。

2.養子縁組を結ぶ

「養子縁組」は、特に同性パートナーを持っている人によく選ばれる方法です。これは、年上の方が年下の方を「子(養子)」とすることにより、相手を法定相続人にするといったやり方です。

日本の法律では、養子であっても、実子と同じだけの法定相続分が認められます。つまり、「戸籍上の配偶者がおらず、実子がおらず、妹のみがいる」という立場の人が同性パートナーと養子縁組をした場合、養子縁組をしたパートナーのみを相続人とすることができるのです。

3.贈与を行う

贈与の形態のひとつとして、「死因贈与」と呼ばれるものがあります。これは、贈与をする人(亡くなった人)と贈与を受ける人(残された人)の間で結ぶものであり、「贈与をする人が亡くなったら、贈与を受ける人に財産が移行する」というものです。

なお遺言書は一方的に相手を相続人に指定するものですが、この死因贈与は「お互いの合意によって成り立つ」という違いがあります。ちなみにこれは口約束でも成立しますが、トラブル防止のために、死因贈与契約書を作成することが強く求められます。

また、「遺産」とは少し意味が異なりますが、「生前贈与」というかたちで財産を渡すこともできます。生前贈与は、「だれにいくら渡すか」を自分の意思で選ぶことができます。そのためこの方法を使えば、パートナーにあらかじめ財産を譲れます。

4.特別縁故者となれるかどうかを考える

上の3つの方法は確実性の高いものですが、「何も準備していないなかで、相手が突然亡くなった」という状況に陥るケースもあります。そのようなときは、「特別縁故者にあたらないか」を考えてみるとよいでしょう。

特別縁故者とは、
・亡くなった人と生計を一にしていた
・亡くなった人と非常に親しい関係にあった
・亡くなった人から金銭援助を受けていた
などの立場にある人がなれる可能性のある立場です。

特別縁故者だと認められた場合、亡くなった人の遺産のすべてもしくは一部を受け継ぐことができます。実際に、過去には事実婚の関係にあった人が、特別縁故者だと認められたケースがあります。ただし特別縁故者に遺産の相続が認められるのは、「亡くなった人に法定相続人がいなかった場合」に限られます。つまり、亡くなった人に直系尊属・直系卑属・兄弟姉妹あるいはその子ども(甥・姪)がいた場合は、特別縁故者には遺産は渡されません。

このため、法律婚の関係にないパートナーに確実に遺産を渡したいのであれば、上の3つの方法に頼る必要があります。