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おひとりさまの終活、課題と計画について – 寄付、生前贈与、相続、親戚・友人・知人などを詳しく解説

現在は結婚をせずに一生を過ごす人の数も非常に増えています。このような人の場合、「自分が死んだ後の遺産をどうするべきか」について、生前からしっかり考えておかなければなりません。

おひとり様の相続課題について

内閣府が出したデータによれば、2020年段階の50歳時の未婚率は、男性は28.3パーセント、女性は17.8パーセントだということです。つまり男性の3人~4人に1人が、女性の5人~6人に1人が、50歳のときに未婚だということです。

ちなみにこの「50歳時の未婚率」は、多少の増減はあるものの、基本的には右肩上がりに推移しています。たとえば1970年の段階では50歳時に未婚だった男性の割合は1,7パーセント・女性は3.3パーセントでしたが、2000年にはこれがそれぞれ12.6パーセント・女性は5.8パーセントに、2015年にはそれぞれ24.8パーセント・14.9パーセントに上昇しています。そして今後もこのような状況は続いていくものと思われます。

もちろん、結婚(あるいは子どもが生まれた)としても、相続の問題が起こる可能性は十分にあります。場合によっては、おひとりさまで生涯を過ごすときよりも多くのトラブルに見舞われることもあるでしょう。

しかしおひとりさまの場合、「常に法定相続人となる妻がいない」「自分よりも長生きするであろう可能性が極めて高い『子ども(やそのさらに子ども)』がいない」ということで、結婚している人とは異なる問題が出てきます。配偶者がおらず、かつ子どもがいない人が亡くなった場合、その遺産は親や祖父母にわたることになります。しかし親や祖父母がいなかった場合、亡くなった人の兄弟姉妹にわたることになります。なお兄弟姉妹がいなかった場合は、その子どもである甥・姪が引き継ぐことになります。「自分の直系の尊属(父母や祖父母、さらにその上)や直系の卑属(子どもや孫やひ孫)」がいた場合は、何代上にさかのぼっても、また何代下にさかのぼっても、その直系尊属もしくは直系卑属がいる限り、遺産はその人に渡されます。

しかし兄弟姉妹しかいなかった場合は、その兄弟姉妹もしくは甥・姪までが法定相続人となり、甥・姪の下の世代に相続権が引き継がれることはありません。「現在自分には配偶者がおらず、子どももいない。兄弟姉妹はいない」という場合は、「法定相続人がいない」という状況になってしまいます。このような状況にある人が、遺言書を残さなかったり、「特別縁故(後述します)」と認められる人がいなかったり、寄付をしなかったりした場合、亡くなった後の遺産は国家の物とされてしまいます。

また、高齢で亡くなった場合、「亡くなった後の手続きをする人がだれもいない」という状況になりかねません。このような状況になることを避けるためには、事前にきちんと対策をしておく必要があります。

どのように終活を行うべきか

おひとりさまの場合、特に「終活」が重要です。おひとりさまの就活では、以下の点に気をつけるべきです(※本稿では、あくまで「財産の継承」ということに限って解説していきます)。

財産目録を作る

まずは財産目録を作りましょう。現金や不動産はもちろん、株や保険などについてもまとめます。このような財産目録の作成においては、いわゆる「エンディングノート」が非常役立ってくれます。

またこの財産目録を作る場合は、「どの財産がどこにあるのか」「銀行口座の口座番号」「土地の権利書」などの場所も記しておくと便利です。

法定相続人が本当にいないかを確認する

上でも述べたように、自身に配偶者や子どもがいなくても、親や兄弟姉妹は法定相続人となり得ます。そのため、まずは「本当に自分には法定相続人はいないか」を確認しましょう。

なお法定相続人となるのは、
・直系尊属
・直系卑属
・兄弟姉妹
・兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、兄弟姉妹の子どもまで(兄弟姉妹の孫などは法定相続人にはならない)
・養子にした者
までです。

遺言書を作成する

遺言書は、自分が亡くなった後の遺産の行く末を指定できる力を持つものです。またここでは大きくは取り上げませんが、法定相続人となる子どもの認知もできます(「遺言認知」)。この遺言書に、「自分亡き後の遺産の行く末」を書いておくとよいでしょう(後述します)。

死ぬまでの金の使い方/死後どうするか計画、寄付等

ここからは、より細かく、「おひとりさまの財産の管理と、遺産の渡し方」について解説していきます。

生前贈与を行う

「生涯独り身だった。法定相続人として甥がいるが、遺産を渡したくない」「生きているうちに、感謝の気持ちを込めて人にお金を渡したい」という希望を持っているのであれば、生前贈与を検討しましょう。これは、その名前の通り、生きているうちに人に財産を渡すことをいいます。

生前贈与の場合は、「だれに渡すか」「いつ渡すか」「いくら渡すか」を自分で選ぶことができます。血縁関係のない人に行うことももちろん可能です。

遺言書について

「配偶者も子どももおらず、両親も他界している。妹が一人いるが、妹には遺産は渡したくない」「入籍こそしなかったが、内縁の妻がいた」「姪っ子はいるが、没交渉のまま数十年経つ。姪っ子ではなく、最後まで一緒に過ごしてくれた親友に遺産を渡したい」などの希望があるのなら、それを遺言書に記すようにします。

ただし遺言書に描かれていたとしても、法定相続人は「遺留分」を請求することはできます。そのため、「おひとりさまではあったが、親は存命である。遺産は全部親友に渡したい」として遺言書を書いても、両親が遺留分の訴えを起こせば、両親は遺留分を取得できます。

なお、エンディングノートは法的拘束力がないため、これに記しておいても法的な力を発揮することはできません。また遺言書はその書き方を間違えると無効になってしまうので、専門家に手助けしてもらうのが安心です。

「特別縁故者」とは何か

上で取り上げた「特別縁故者」について解説していきます。

この「特別縁故者」とは、「故人と特別な関係にあった人」を意味する言葉です。特別縁故者として認められた場合は、法定相続人でなくても、遺産の一部もしくは全てを受け取れる可能性があります。

なお、特別縁故者として認められるのは下記の事例に当てはまるような人たちです。
・亡くなった人と生計を一にしていた
・亡くなった人と非常に親しくしていた友人である
・亡くなった人から金銭援助を受けていた
・亡くなった人が深く関わっていた法人(故人が私財を投げ打って運営していた学校など)
・亡くなった人の介護や看護をしていた

ただし彼らが遺産の一部を受け取れるのは、「法定相続人がいない場合」に限定されます。また、家庭裁判所への申し立てなどが必要です。そのため、「自分を介護してくれていた人に遺産を確実に渡したい」という場合は、遺言書に記しておく方が確実です。

寄付という選択肢もある

遺産の渡し先として、「寄付」という選択肢があることも押さえておきましょう。たとえば、「社会福祉事業に役立てたい」「社会貢献のための活動をしている公益事業者に遺産を寄付したい」などのようなものです。

このような「寄付」は、遺言書で指定することができます。また法定相続人がいた場合でも、法人に寄付した場合は一部の例外を除き、法定相続人が相続税を負担する必要はありません(寄付された事業者も、2年以内に公益事業にこれを使用した場合は、相続税が非課税となります)。