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家族信託の導入で心配なく資産を引き継ぐ – 信託法改正後の新しいファイナンシャルプランニング

はじめに

「家族信託」という制度をご存知でしょうか?

2007年、信託法改正により信託の幅が広がり、新しい財産管理の仕組みとして最近注目されています。

元気なうちに自分の老後の預貯金や不動産などの財産管理を家族に託すため、本人の意向が反映されやすく資産を円満円滑に引き継げるとして広がっています。

家族信託をより有効に活用するためには、正しい知識を持つことが必要です。

家族信託とはどのようなものなのか、わかりやすく解説していきます。

家族信託を活用する

身近な家族間の信託だからこそ、活用すれば生じる利点があります。

ここでは、4点の活用例をご紹介します。

認知症になっても資産を使える

親が認知症になり意思能力が無いとみなされると、通常預金が解約できず、金融資産が凍結されたり、不動産を売ることが出来なくなります。

親が元気なうちに財産の管理者として子供などと家族信託の契約を結んでおけば、親の判断能力が低下したと判断されても、親の生活費や入院費などを信託財産から動かすことができます。

また契約内容によっては、納税の資金のために信託財産の不動産を処分することもできます。

信用できる身内に頼める

家庭裁判所に選任の判断が委ねられる成年後見制度を利用すると、親族以外の第三者が選定されるケースが8割に上ります。

弁護士や司法書士などの専門家は、当然報酬が発生し、毎月管理費として数万円の支払いが必要になります。

第三者に財産管理を任せることに抵抗がある場合も、成年後見制度と同様の効果が得られる家族信託を選択する方が多くなっています。

不動産の売却ができる

家族信託を活用すれば、親が将来、認知症になり施設に入居するなどして、現在居住している家や土地を売却したい場合も、タイミングのよい時期に不動産を売却することができます。

預貯金が足りない時は、売却することにより療養費を捻出できます。

子どもに財産を託すことができる

財産管理ができない障害のある子供がいて、自分たち両親が死んだ後の将来に不安があるケースでも、家族信託は有効です。

両親(委託者)が財産の管理を、信用できる親族(受託者)などに任せ、子供(受益者)は財産管理で生じた利益を得るように組むことができます。

家族信託の注意する点

家族信託は利点ばかりでなく、デメリットもありますので注意が必要です。

権利の濫用

受託者は、財産管理、運用を行うことができる大きな権利を有しているため、逆にその権利を利用し、私利私欲のために使い込みをするリスクがあります。

委託者、受託者、受益者の三者間の信頼関係により、成り立つ制度が家族信託です。受託者の暴走により、家族信託が破綻してしまわないように、あらかじめ受託者の監視を行う信託監督人、受益者を支援する受益者代理人を選任して、抑止する方法もあります。

節税のための制度ではない

家族信託は、財産の所有者の意思に基づき財産を確実に移転することを目的としています。不動産を売却し、節税対策になる場合もありますが、相続税を節税する効果は基本ありません。

税金が発生する

家族信託は、利益を受ける受益者が課税対象になります。信託財産の所有者は実質受益者になるため、贈与税が発生します。

ただし、委託者自身を受益者に設定すると、自益信託の場合は贈与税が課税されません。

賃貸不動産など信託財産を受託者が運用し利益が生じれば、受益者に所得税が課税されます。

固定資産税は登記簿上の所有者である受託者に通知されますが、信託契約書では受益者が納税するとされることが一般的です。

初心者が進める手順について

家族信託を始めるには、信託契約書を作成して、公証役場で公証します。信託契約書の内容に基づき、対象の信託財産の登記も必要になります。

ただし、信託契約書を作成する際は、事前に家族内で十分に相談し、家族全員が納得した内容で行わなければ思わぬトラブルに発展することになります。特に初心者の場合は事前に専門家に相談し、手続きを進めた方が確実で安心です。

一番身近で大切な家族の将来のためにも、家族信託を上手に利用し大事な財産を有効活用していきましょう。