「遺言書」は、亡くなった人の遺志を確認できる手段のうちのひとつです。
また、エンディングノートなどとは異なり、法的拘束力を持つものです。
今回は、この遺言書を見つけたときの対応方法について解説していきます。
※下記では「自筆遺言書」について取り上げます。
封をしてある遺言書を見つけたら?
「遺品整理の最中に、封をしてある遺言書を見つけた」
「遺影に使う写真を探していたら、引き出しから『遺言書』と書かれた封印がしてある封筒を見つけた」
このようなケースは、比較的よくあります。
封をしてある遺言書を見つけた場合、その場で開封してはいけません。
これは「検認」を受ける必要があります。検認とは、「裁判所において、書かれている内容を確認すること」をいいます。この検認は、遺言書の改変や偽造を防ぐために行われます。
封をしてある遺言書を勝手に開けてしまうと、50000円の過料が科せられることもあります。また、たとえ改変・偽造をしなかったとしても、ほかの法定相続人から「勝手に開けたということは、改造・偽造する意思があったのだろう。たとえ改造・偽造をしても、本人は死んでしまっているからわからないし。ひょっとしたら、もう自分に都合にとって都合の良いように書き直しているかもしれない」と疑われる可能性もあります。
封をしていない遺言書を開けてしまった場合はどうなるのか
ただ、遺言書はわかりやすいかたちでだけ置かれているわけではありません。
「『遺言書』とも何も書かれていないうえに、封もされずにおいてあった便せんを開けたら遺言書だった」
「封印のしていない茶封筒だったので、中身を検めようと開けたら遺言書だった」
「そもそも目に入るようなところに、封筒にも入れずに置いてあった」
などのようなこともありえます。
このようなケースでは、たとえ開けてしまったとしても過料に科せられる可能性は基本的にはないと考えるべきでしょう。 未開封の場合は、遺言書の内容が目に入ってしまっても問題にはならないと考えられています。
ただし、未開封の遺言書であっても検認を受けることは必要です。封をしてあっても封をしていなくても、「検認」の手続き自体は必要なのです。
封をしていない遺言書は、封をしてある遺言書以上に改変・偽造が容易です。なおここでは「家族の立場で遺言書を見つけた」という状況を想定してお話をしていますが、自分が作る際は、必ず封をするようにしてください。
開けてしまっても遺言書の効力自体は変わらない~秘匿・処分・改変した場合の罰則
上記では「遺言書は基本的には開けてはいけない」としました。ただ、間違って開けてしまっても、その効力は失われません。たとえば「不動産をAに、動産をBに、美術品をCに」などのように書かれていて、Aが遺言書を発見・開封してしまった場合でも、不動産は変わらずにAが相続することになります。
ただ、問題があります。
たとえば下記のようなケースです。
・故人にとって、法定相続人にあたるのは私だけである
・そのままにしておけば、故人の遺産はすべて私の物になる
・しかし故人の遺言書を発見した
この場合、遺言書を開封することは「私」にとってのメリットにはなりません。
「『私』にすべてを残す、今までありがとう」などのような文面だけがあれば良いのですが、「『私』には財産の一部だけを渡して、残りは慈善団体に寄付したい」と書かれていた場合、「私」は本来は引き継げるはずだった財産を失うことになるのです。
このため、「どうせだれもこの遺言書の存在を知らないのだから、捨ててしまおう」「廃棄して、なかったことにしてしまえばいい」「遺言書を一度開けてしまえば効力を発揮するわけだから、私自身も中身を見ずに捨ててしまえばよい」と考えてしまう可能性も否定できません。
ただ、故人がほかの人に遺言書のことを話している可能性は低いかと思われますが、それでも、「絶対にだれにも言っていない」とまでは言い切れません。後でこのことが明るみに出てしまえば、遺言書を隠した場合は相続人の資格を失います。つまり「私」は、本来引き継げるはずだった遺産さえ相続できなくなってしまうのです。
また、「私一人で掃除をしているときに、遺言書を見つけた。私に不利な内容が書かれていたから、隠してしまおう」「ほかの人に相続させる、と書いてあるけれど、この部分を『私』に改変しよう」とした場合も、同様に相続人の資格を失います。
まとめると、
・封をしてある遺言書も封をしていない遺言書も、検認を受ける必要がある
・封をしてある遺言書は、開けてしまうと過料50000円が科せられる可能性がある。封のしていないものに関しては、過料は科せられない
・たとえ開封してしまっても、効力は変わらない
・破棄や隠匿、改変などを行うと、相続人の資格を失う
ということです。
遺言書を見つけたら、破棄・隠匿・改変をせず、速やかに検認を受けましょう。