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見つけた遺言書の取り扱い方を知ろう!遺言書の強力な効力から種類、検認の必要性までを網羅的に紹介

「遺言書」は、非常に強力なものです。書き方を守って書かれた遺言書があれば、法定相続人以外に遺産を渡すことができますし、子どもを認知することすらできます。

このように強力な遺言書を、自宅で偶然見つけてしまった場合はどうすればよいのでしょうか?

遺言の基本~3つの遺言と、検認の必要性について

遺言書の種類はいくつかありますが、平時においてみられるのは「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」のうちのいずれかでしょう。

そのうち公正証書遺言の場合は、原本が公証役場で保管されているため、だれかに改ざんされたり破棄されたりすることはありません。またこの公正証書遺言の場合は、検認(相続人に対して、遺言が存在することとその内容を示すことをいう。改ざんや偽造を防ぐために行われる手続き)は必要ありません。

しかし、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、この検認を受けなければなりません。そしてこの検認は、家庭裁判所で受けることができるものなのですが、これは遺言書を発見したときにすぐにでも行わなければならない(※ただし具体的な日付は定めず)とされています。

検認なしで開封した場合、過料が科せられることもある

この「検認」は、非常に重要な意味を持ちます。検認なしで遺言書を開封したり、「遺言書に書かれているから」として遺言書の内容通りの行動をとったりした場合、50000円以下の過料に科せられる可能性があります。

また、遺言書を発見した人間がその中身を勝手に確認して、「自分に不利なことが書かれていた!」として、遺言書を隠したり改ざんしたり処分したりした場合、さらに重いペナルティが科せられます。

このような行動をとった人物は、「相続欠格」となり、相続人としての立場を奪われます。

たとえば、「自分には弟がいて、この度父が死亡した。父の配偶者であり自分の母であった人もすでに亡くなっているので、父の遺産は自分と弟で2分割するはずだった。しかし掃除中に遺言書を発見して開封してみたところ、『遺産はすべて弟に渡す』とされていた。遺留分を請求するにしても取り分が4分の1になってしまうので、弟に知られないうちに破棄をした」などの場合は、この「自分」は相続欠格と判断され、すべての財産を「弟」が引き継ぐことになります。

なおここでは大きくは取り上げませんが、ほかに「相続欠格」となる事由としては、「ほかの相続人や、被相続人を殺そうとした」「被相続人が殺されたことを知っていたのに、告発しなかった(※ただし殺人者が自分にとって直系の血族や配偶者の場合は除く)」「詐欺行為や脅迫行為を働いて、遺言書を作成させた。もしくは遺言書を変更させた」が挙げられます。

間違って開封してしまっても、相続人としての権利は失われない

このような決まりがあるため、遺言書は「見つけたら決して開封せず、家庭裁判所において検認を受ける」が唯一の正解です。

しかし、「何も書いていない封筒を掃除中に見つけて、開いてみたら遺言書だった!」「大切な家族が亡くなって混乱しているときに、遺言書を見つけて思わず開けてしまった」などのような「事故」は起こる可能性があるものです。

上記では「遺言書を見つけたときに勝手に開封してしまった場合、過料50000円が科せられる」としましたが、知らずに開封してしまったり、混乱のなかで開封してしまったりした場合は、過料が科せられるケースはまれだといえるでしょう。また、そもそも検認手続きが必要だという認識を持っていない人も多いため、これが大きな問題になることはあまりありません。

このように過料に処される可能性が低いことからもイメージできるかと思われますが、意図せずに遺言書を開封してしまったとしても、相続欠格になることもありません。加えて、開封をしてしまった場合であっても遺言書の効力は失効することなく、効力を発揮します。

問題となるのは、「遺言書を開封して、それを改ざんや処分した場合」です。自分に不利益な遺言書であったからという理由でこのような行為を取ると非常に大きな問題になりますが、「知らなかった」「不注意で開けてしまった」などのような場合はそれほど大きな問題にはなりません。

もっとも、このようなトラブルを避けるためには、遺言書を作成する側の注意も求められます。封筒にはしっかりと「遺言書」と記しておき、発見した家族が戸惑わずに済むようにしておきましょう。

また封をしていない遺言書であっても効力は発揮します。しかし封をしていない状態だと、発見した人がほかの相続人から「封をしていないのをいいことに、お前が自分に都合の良いように改ざんしたのではないか」と疑われてしまう可能性が高くなります。このようなトラブルを避けるためには、きちんと封をして、分かりやすいところに保管しておくことが求められます。