自分が亡くなったあと、先祖のお墓や自分の位牌を誰に任せればよいのか?終活で必ず直面する問題です。核家族化、社会の多様化によりお墓、祭祀の承継は複雑な事情を孕む時代となりました。ここでは終活における供養の承継、祭祀承継者について説明します。自分のお墓を誰に継がせればよいのか、祭祀承継者の指定で悩んでいる人は参考にしてください。
祭祀承継者とは
祭祀承継者とは先祖から伝わったお墓や仏壇、位牌を引き継ぎ、供養や管理をする人です。代々伝わったお墓だけでなく、個人が生前に建てた一代目のお墓にも祭祀承継者が必要です。受け継ぐものは、お墓の他にも神棚、十字架、祭具、家系図などがあり、これらは「祭祀財産」と呼ばれています。
祭祀承継者は祭祀財産を引き継ぎ、先祖の供養や祭事を執り行います。相続財産と違い、民法で規定された相続人だけが承継するものではありません。親族、血族以外でも祭祀承継者に指定できます。承継後は実際に祭祀を行わなかったとしても、法的に罰せられることはありません。
お墓は引き継ぐ人がいないと、やがては無縁仏、無縁墓となってしまいます。実際に全国のお寺で無縁仏は急速に増えつつあります。終わりに向かって誰を祭祀承継者に指定するかは、重大な問題であり、生前に解決しておくべき終活の一環といえるでしょう。
祭祀承継者の役割
一定の年齢になると誰もが祭祀承継問題の当事者となります。祭祀承継者とは何をするのか、主な役割を簡単に説明します。
お墓の管理
祭祀承継者は引き継いだお墓の管理をします。お墓の掃除や草むしり、破損した際の修繕などが役割です。お寺への管理料、お布施などの支払いも負担します。
仏壇、位牌の管理
引き継いだ仏壇、位牌の管理を担います。お線香をあげる、お手入れをするなど、信仰上の作法に則り、御供物を捧げて供養します。
法要の実施
仏教では故人の命日から数えて、七回忌、十三回忌、三十三回忌、五十回忌など年回忌の法要を行うので、祭祀承継者はこれを主催します。菩提寺へ布施料を払って僧侶を呼び、参列者に声掛けして法要を営みます。
祭祀承継者の指定
祭祀承継者の役割は数多く、経済的負担と責任が伴います。自分が希望する供養を実現してもらうには、先祖供養の承継にふさわしい人物を指定しなければなりません。祭祀承継者に適した人とは以下の通りです。
家族・子ども
最も祭祀承継者に指定しやすい人は、自分の家族、子どもでしょう。結婚し別姓となった娘、息子でも承継できます。兄弟姉妹は後年を託せる可能性が低いので、祭祀承継者には不向き、といわれます。
地元に居住する親族
家族や子どもがお墓のある地域に居住していないと、祭祀管理は困難です。従って地元に居住している親族、分家の方などを指定する場合があります。
宗旨・宗派の同じ人
どのような祭祀を行うかは祭祀承継者の判断に委ねられるので、自分の望む供養、祭祀を行ってもらうには、遺言を残し、同じ宗旨・宗派の人、祭祀に理解のある人を指定するとよいでしょう。
生前に祭祀承継者を指定しないとどうなる?
生前に祭祀承継者を指定しないまま亡くなると、残された親族が集まり、合議で選ぶことが多いようです。中には合意に至らず、親族間で口論になる例もあります。祭祀承継者が決定しない場合は、家庭裁判所に祭祀承継者指定の申し立てをします。家庭裁判所は親族らの状況を総合的に判断して、祭祀承継者を指定します。指定された人は拒否できません。
祭祀の継続を望むなら、生前に祭祀承継者を指定しておく方がよいといわれています。お墓や祭祀、地域の慣習などを祭祀承継者に詳しく伝え、理解を得ておくべきでしょう。口頭でも伝え、遺言書やエンディングノートに記しておきます。
お墓や仏壇、位牌を管理する人を祭祀承継者と呼びます。終活では生前に祭祀承継者を指定し、お墓のこと、先祖のことなど詳しく伝えておきましょう。祭祀をめぐって親族が口論せずにすむよう、はっきりと祭祀承継者を指定しておくことが重要です。