65歳定年制の導入
日本では2025年から定年退職の年齢が65歳に引き上げられる「65歳定年制」が導入されます。この政策は、高齢化社会の進展と労働力不足への対応を目的としており、多くの企業や労働者に影響を与えると予想されています。本記事では、高年齢者雇用安定法の概要、65歳定年制の説明、そしてそのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
高年齢者雇用安定法の概要
高年齢者雇用安定法は、高齢者の雇用機会を確保し、年齢に関わらず意欲のある労働者が働き続けられる環境を整えることを目的としています。
「65歳定年制」について、多くの人が誤解していますが、全企業の定年が65歳になるわけではありません。3つの雇用確保措置から企業が選択可能です。
企業が選ぶ3つの雇用確保措置
1. 定年の引き上げ
「65歳定年制」の通り、定年を65歳以上に引き上げるやり方です。
2. 継続雇用制度の導入
定年後も働きたい労働者に対して、再雇用の制度を導入する方法です。
3. 定年制の廃止
そもそも定年という年齢を理由にした雇用の停止をなくし、高齢者にも働き続ける権利を与える方法です。
65歳定年制のメリット・デメリット
最近では医療の進歩や、心身ともに健康意識の高まりによって、60歳、65歳でも若々しく元気な人も多いでしょう。実際に日本では2021年時点で60歳以上の就業者数が約909万人と報告されています(総務省統計局の「労働力調査」調べ)。
超高齢化社会に突入し、働ける期間が長くなることで、どのようなメリットとデメリットが考えられるのか解説します。
65歳定年制のメリット
労働力の確保
高齢者の就労機会が増えることで、慢性的な労働力不足の解消が期待されます。肉体に負担の少ない軽作業では実際に今も多くの高齢者が雇用されています。
経験や知識の継承
長年の経験や知識を持つ高齢者が職場に留まることで、若手社員へのノウハウの伝達が可能になります。これにより、組織全体のスキル向上が図られます。
経済的な安定
高齢者が働き続けることで収入が維持され、年金だけに頼らない老後の生活資金の安定が見込まれます。これにより、消費活動が活発化し、経済全体への好影響が期待されます。
65歳定年制のデメリット
企業の負担増加
高齢者の雇用継続に伴い、人件費が増加します。さらに、高齢者向けの職場環境整備や健康管理費用も必要となります。
若年層の雇用機会の減少
高齢者の雇用延長が若手の採用枠を圧迫する可能性があります。この問題は、組織内の世代間バランスに影響を及ぼすことが懸念されています。
高齢者の健康や生産性の課題
高齢化に伴い、健康問題や体力の低下が生じる場合があります。また、新しい技術や業務に適応する負担が大きくなることも課題の一つです。
社会保障制度との調整
定年延長により年金受給開始年齢が引き上げられる可能性がありますが、これが高齢者にとっての負担となる場合があります。
65歳定年制の行方は
65歳定年制の導入は、日本社会にとって重要な転換点となります。この制度が高齢化社会や労働力不足への対策として機能する一方で、企業や個人、そして社会全体に新たな課題を表裏一体に生み出すことも目を逸らしてはいけない課題です。
企業においては、柔軟な労働制度の設計や職場環境の改善が求められると同時に、高齢者の持つ経験を活用した人材育成の仕組みが重要となります。一方で、高齢者個人においても、定年後の働き方やキャリア形成について積極的に計画を立てて将来に備えることが必要です。