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LGBTコミュニティの方々が経験する相続の難題~パートナーシップ制度だけでは不十分な現状~

LGBT(lesbian/レズビアン, gay/ゲイ, bisexual/バイセクシャル, transgender/トランスジェンダーの頭文字をとった言葉。以下「LGBT」に統一)の人にとって、「相続」は非常に大きな課題です。

パートナーシップ制度を利用した場合であっても、それだけでは相続人にはなりえないからです。

パートナーに財産を残す方法と、法定相続人との争いを避ける方法について模索していきます。

LGBTの人がパートナーに財産を残す方法

パートナーシップ制度が施行されて7年ほどが経ちましたが日本のパートナーシップ制度では未だ、「たとえパートナーシップ制度を結んでパートナーとなったとしても、法定相続人とはなりえない」というかたちをとっています。そのため、パートナーシップ制度を利用する・利用しないに関わらず、LGBTの人がパートナーに財産を残そうとすれば、ほかの法律・方法を利用する必要があります。

その方法として、以下のようなものが挙げられます。

1.養子縁組をする

2.遺書に記す

3.生命保険や信託を利用する

4.生前贈与や死因贈与を利用する

一つずつみていきましょう。

1.養子縁組をする

パートナーシップ制度が導入するよりずっと前から、同性のパートナー(や法定相続人たりえない人)に遺産を渡す方法として使われてきたのが、「養子縁組制度」です。

養子縁組を結ぶことで、「養子」となった人は「養親」の遺産を引き継ぐことができます。成人同士であれば届けを出すだけで認められるうえ、「子」は養子・実子問わず廃除・欠格されない限りは相続人となるため、非常に有効な手段です。

ただしこの場合、「養親」は「養子」よりも年上である必要があります。そのため、たとえば、「自分は家系的に長生きできないと思うので、自分よりも年上のパートナーを養子にして遺産を渡したい」ということはできません。

また、苗字が同じになってしまうなどの問題もあります。

2.遺言書に記す

遺言書は、旅立とうとする人が最後に示す意思です。そのため、正しく書かれた遺言書の効力は絶大です。遺言書に記しておけば、パートナーシップ制度を利用していなくても、養子縁組をしていなくても、パートナーに遺産を渡すことができます。たとえば、「自分には実子がいたが、実子は別れた妻が引き取り、30年以上没交渉。親もいないので、全財産をパートナーに残したい」とすることも可能です。

ただこの場合、実子が「遺留分侵害額請求権」を持ちます。これを行使することで、本来の相続人であった人は、定められた割合の遺産を受け取ることができます。

たとえば、遺産の額が1億円で実子が2人いた場合、「全財産はパートナーに残す」としたとしても、実子2人が「遺留分侵害額請求権」を行使することで実子が遺産の2分の1を受け取ることができます。

つまり、

パートナー:2分の1

実子1:4分の1

実子2:4分の1

の取り分となります。

3.生命保険や信託を利用する

生命保険の受取人をパートナーに指定したり、信託契約の受益者をパートナーにしたりすることで、パートナーに財産を引き継がせることができます。

ただしこの場合、税制上の優遇が受けられなかったり、初期費用がかかったりします。

またプランによって内容が大きく違うため、事前のチェックは必須です。

4.生前贈与や死因贈与を利用する

生前贈与でパートナーに財産を渡せば、確実にパートナーはそれを受け取ることができます。「自分の意思を最大限反映したい」ということであれば、この方法を取るとよいでしょう。ただし、年間で110万円以上の生前贈与を行う場合は贈与税が発生します。また、生前贈与のときに発生する贈与税は非常に税率が高いというマイナス点もあります(最大で55パーセント)。

「自分が亡くなったタイミングで、贈与を行う」とする死因贈与契約も、LGBTの人にとっては使いやすいでしょう。ただしこれにも相続税は発生します。遺言書によるときよりも税率は高いので、この点には留意しなければなりません。

法定相続人とトラブルにならないために

もっとも理想的なのは、法定相続人に自らの意志を伝えて理解してもらうことです。そしてそのうえで遺言書に記すなどの法的な方法を取ります。法定相続人・パートナー・残していく人の全員の合意があり、お互いの意向を理解しているのであれば、それがもっとも円満な解決方法です。

ただ、すべてのケースでこのような穏やかな解決に至れるわけではありません。その場合は、

上で述べたような法的な方法を使い、強制力を持って事に当たるしかないでしょう。このようなケースでは、公平な視点で判断して物事を進めていけるようにするために、弁護士などの公的な資格を持つ専門家の力を借りることを強くお勧めします。

相続は、法定相続人にそのまま引き継がせてなおトラブルが起きる可能性の残るものです。法定相続人がいるなかで、法定相続人ではない人に財産を残そうとすれば、その可能性はさらに高くなるでしょう。

そのトラブルを避けるためには、事前の準備が必要です。