厳選 厳選

老後の安定した住まいのための資金計画



「老後にどのようなところに住むか」は、大きな問題です。なぜなら人も家も同じように老化していくものであり、それぞれにさまざまな対策が必要になってくるからです。

ここでは、「老後の住まい」に焦点をあてて、その維持にかかる費用などについて考えていきます。

60歳以上の人のうちの9割が持ち家に住んでいる

まず、「高齢者はどんな家に住んでいるのか」について考えていきましょう。

なおここでいう「持ち家」とは、「一戸建て」と「分譲マンションなどの集合住宅」の2つを含む言葉とします。

内閣府の撮ったデータによれば、高齢者のうちの約9割が持ち家に住んでいるとされています。特に80歳以上の場合は、持ち家率が91パーセントを超えています。「賃貸住宅に住んでいる」という人の割合はわずか8パーセント程度で、1割にも満ちません。

もっともこのデータは、「若年層に比べて、高齢者の方が圧倒的に持ち家率が高い」ということを示すものではありません。年代を問わないデータでも、持ち家率は88パーセント程度と、高齢者の持ち家率とほぼ一致しています。

「持ち家率の高さ」は、世代というよりも、「住んでいる都市の規模はどれくらいか」によって左右されるところが多いといえます。土地代が高くなりがちな大都市は中都市よりも持ち家率が低く、中都市よりも土地代が安い傾向にある小都市の方が持ち家率が高いことが、このデータでは示されているからです。

また、「配偶者の有無」も持ち家率の高さに関係してきます。

「現在既婚者で配偶者がいる」という人の約92パーセントが持ち家に住んでいるのに対して、「既婚者であったが、配偶者と死別した」という人の場合はこの割合が87パーセント程度にまで落ちます。さらに、「未婚である」という人の場合は持ち家率が78パーセントと80パーセントを切り、「既婚者であったが、離婚した」という人では54パーセント程度にまで落ちます。

「一人ならば広い家は必要ない」「もともと持ち家に住んでいたが、離婚に伴って持ち家から出てきた」などの理由が、このような数字に繋がっていると思われます。

出典:内閣府「第1章 高齢化の状況(第3節 1-1)」

固定資産税とリフォームの費用について考える

持ち家を維持しようとするとき、そこには固定資産税がかかります。ただしこの固定資産税は、その持ち家の価値が低くなれば低くなるほど下がるものです。そのため、「若い時に買った一戸建てに住み続けている」という場合は、土地の価値が非常に高いところではない限り、固定資産税はそれほど高くはありません。

なお固定資産税の計算式は、「固定資産税評価額(土地)×1.4パーセント+固定資産税評価額(建物)×1.4パーセント」で求められます。ただし固定資産税の税率は自治体によって異なります。また実際には、ここに減税措置(一定の条件を満たすことで、税金が安くなる制度)の考え方も適用されます。

このように考えれば、「家賃」を必要としない持ち家という選択肢は、老後の住まいの考え方として理想的であるかのように思われます。

ただ持ち家の場合は、「リフォーム」を意識しなければなりません。人と同じように建物も年を取っていくものであり、そして年をとれば建物も傷んでくるものだからです。

リフォームの種類や程度は非常に幅広く、「汚れた壁紙を張り替える」という程度のものから、「年齢を重ねた後でも安全に使えるキッチンやお風呂場にしたい」というもの、さらには「減築や、間取りの大幅変更を含む麹にしたい」という大掛かりなものまであります。

リフォームにかかる費用は、この「どの程度のリフォームをするか」によって大きく異なります。ただ、簡単な壁紙の張替え程度であっても10万円程度の予算をとっておく必要がありますし、大掛かりなリフォームになれば数百万円の出費が必要になってくることもあります。

このような不安を懸念してか、「住まいに不安を感じている」という人のうちの約27パーセントは、「リフォームなどの修繕費用を払えなくなることが不安である」としています。特に現役を退いた後は、預貯金からリフォーム費用を賄わなければならなくなるので、その心配もなおさら大きくなるでしょう。

持ち家に住み続けるのであれば、固定資産税とリフォーム費用(特に後者)の方はしっかり意識しておかなければなりません。

出典:

内閣府「第1章 高齢化の状況(第3節 1-1)」

三井のリハウス「固定資産税の計算方法は?評価額の決まり方や減税措置も併せて解説!」

賃貸住宅の選択とその課題

上記では、「持ち家を持っている場合は、リフォームが課題になる」としました。

それでは、賃貸住宅という選択肢はどうでしょうか。

賃貸住宅の場合、ネックとなるのが

・転居先が決まらない

・家賃の問題がある

の2点です。

高齢になった後に住宅を借りようとした場合、不安に思った家主により入居を断られる可能性があります。また、高齢者を特にターゲットに定めている物件以外の賃貸物件は、高齢者の生活のしやすさにはあまり焦点を当てていない可能性もあります。

さらに深刻なのが、「家賃」の問題です。

持ち家とは異なり、賃貸物件の場合は、毎月賃貸料が発生します。また賃貸料を何十年と払い続けたとしても、その賃貸物件が自分のものになることはありません。

引退をした後には年金を受け取ることになるケースが大半ですが、年金の額がそれほど多くはない場合、この「賃貸料」が生活を大きく圧迫する可能性もあります。

実際に、賃貸住宅に住んでいる人のうちの約20パーセントが「高齢期で物件の契約を断られることが不安である」としていて、約16パーセントが「世話をしてくれる人や、体が弱ったときに対応できる住宅を確保できないことが懸念材料だ」としています。また、家賃が払い続けられなくなるのではないかという心配を抱えている人も18パーセントを超えています。

出典:

内閣府「第1章 高齢化の状況(第3節 1-1)」

それ以外の選択肢も考えよう~リタイア後の住宅購入、高齢者施設

「転勤が多い職場に勤めていたので、現役時代はあえて持ち家を持たなかった。ただ、現役時代にしっかり貯金を作っておいた」などのような場合は、「リタイア後に、一括で住宅を購入する」という選択肢をとるのもひとつの方法です。

この方法には、

・現役時代とは異なり、会社へのアクセスのしやすさを考えなくて済む

・高齢期に入る人の場合、すでに子どもが手を離れている(あるいは子どもがいない)ため、子ども部屋などが必要ではなく、小さな住まいでも過ごせる

・持ち家の場合はリフォーム費用がネックになるが、リタイア後に築浅の物件や新築物件を購入した場合、リフォームの必要がほとんどない

・賃貸物件とは異なり、家が資産価値を持ち、月々の家賃も発生しない

というメリットがあります。

ただ、一括での購入は税金面での優遇が非常に少なく、また老後用の資金が目減りするという危険も持っています。このため、リタイア後に一軒家を購入する場合は、事前に綿密な計画を立てることが重要です。

「老後の生活の不安」は、資金面だけから来るものではありません。自分自身の体や認知能力の衰えに不安を抱く人も多いことでしょう。

この場合、高齢者施設への入居が選択肢として挙がってきます。終の住処として高齢者施設を選ぶ場合、現在持っている持ち家を処分して、そのときに得た売却金を高齢者施設の費用に充てることなども検討すべきです。

ただ、月額費用が安い特別養護老人ホーム(50000円程度から)は入居難易度が高いものです。また、高齢者施設の利用料金は施設によって大きく異なり、月額利用料が100万円を超えるところさえもあります。

高齢者施設への入居を考えている場合も、資金の計算はシビアなものとなるでしょう。