家族の在り方も多様化していった現在、「結婚しない」「結婚はしたけど子どもはいない」「結婚はしたけど離婚した」などのように、結婚・結婚後の家族構成も多様化していっています。
ここでは主に、「子どもがいない家庭」を取り上げていき、その相続の現実について解説していきます。
「結婚はしているけれど、子どもがいない家庭」の割合は6.2パーセント
「DINKS(“Double Income No Kids”)」という言葉は、それほど新しいものではありません。多様化していく現在の家族の価値観のなかでは、「結婚しても子どもを持たない」という選択肢を選ぶ人も増えていっています。また初婚年齢が上がったことで、子どもを持ちたくても持てない人も出てくるようになったと考えられます。
昭和50年には夫の初婚年齢は27.0歳でしたが、令和2年には31.0歳に上がっています。
また妻も、昭和50年には24.7歳であったのに対し、令和2年では29.4歳となっています。
子どもを持たない(持てない)家庭の割合も増え続けており、昭和52年には3.0パーセントだったのに対し、平成27年には6.2パーセントになっています。
このような傾向はおそらく今後も続いていくと思われます。
自分たちあるいは近しい人たちがこのような状況にある場合、「配偶者が死んだらどうするか?」「自分たちが死んだらどうするか?」を考える必要があります。
配偶者に先立たれた場合、配偶者の遺産はどこにいく?
「子どもがいない状態で、配偶者に先立たれた」という場合、法定相続人はだれになり、そしてその割合はどれくらいずつなのかをみていきましょう。
例1:亡くなった人に父母がいる
この場合、亡くなった人の配偶者が3分の2、亡くなった人の父母が3分の1の遺産を受け取ります。「父母が2人とも生きている」という場合は、3分の1をさらに2で割って、それぞれが相続します。
ここでは「父母」としていますが、「祖父母」などでも同じです。
例2:亡くなった人には父母がおらず、兄弟姉妹がいる
この場合、亡くなった人の配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1(複数いる場合は、4分の1をその人数で割る)の遺産を受け取ります。
「亡くなった人の兄弟姉妹はすでに他界しているが、兄弟姉妹の子ども(故人にとっては甥姪)がいる」という場合は、その甥姪が兄弟姉妹の受け継ぐはずだった遺産を受け取ります。
ただし、「兄弟姉妹は他界していて甥や姪も亡くなっているが、甥や姪の子どもはいる」という場合は、甥や姪の子どもは法定相続人にはなれません。直系卑属(自分の子ども)がいる場合は、「子どもが先に亡くなっていても孫に、孫が亡くなっていてもひ孫に」と受け継いでいけます。これは非常に大きな違いだといえるでしょう。
配偶者が亡くなって「おひとりさま」になった場合、私の遺産はどこにいく?
では、「配偶者が亡くなって、私が遺産の3分の2(あるいは4分の3)を受け継いだ。私が死んだとしたら、その後の遺産はどこへいくのか」についても考えていきましょう。
配偶者に先立たれその遺産を受け継いで「おひとりさま」になった場合でも、その遺産の相続の方法は「生涯独身で、ずっと『おひとりさま』であった人」とまったく変わりません。
子どもがおらず両親がいる場合は、両親がすべての遺産を引き継ぎます。両親がすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が受け継ぎます。「父母も兄弟姉妹ももういないが、甥や姪はいる」という場合は、甥や姪が受け継ぐことになります。
「配偶者が亡くなってその遺産を受け継いだ人」が、「おひとりさま」として亡くなった場合、「配偶者から受け継いだ遺産」もそのまま遺産相続の対象となります。
そのため、「自分は配偶者を亡くしておひとりさまになったが、私の親族は夫のことを嫌っていた。そんな人たちに遺産を渡したくない」などの希望がある場合は、遺言書をしたため、遺産の相続方法を指定するようにしましょう。
ただし、「全財産を慈善団体に寄付をする」としても、法定相続人には遺留分を主張する権利があります。この場合、遺留分は本来受け継げるはずの遺産の3分の1と決まっています。
たとえば、「夫が亡くなっておひとりさまになった人だが、父母はいる」という場合、「全財産を慈善団体に寄付する」としてあったとしても、父母が遺留分を主張すれば、父母の元に3分の1の遺産が入ることになります。
お子さんがいないご家庭の場合、配偶者死亡時の遺産相続の知識はもちろん、「配偶者に先立たれて、自分がおひとりさまになったとき」の相続の知識もつけておきたいものですね。