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【2023年度税制改正】相続時精算課税制度はどのように見直しされたのか?改正ポイントと併せて解説

2023年度税制改正によって相続時精算課税制度が見直されたと知りましたが、実際にどのように変わったのか詳しく知りたいという人も多いでしょう。

今回の税制改正によって生前贈与のやり方も変わってくるため、これから相続税対策を行おうと考えている人は必見です。本記事では、2023年度税制改正のポイントについてご紹介します。

2023年度税制改正のポイント

2023年度税制改正の内容は、2022年12月中に閣議決定されることになり、その中で生前贈与に関する内容が大幅に変わったため注目されています。大きく3つあるため、それぞれご紹介します。

相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が追加

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子どもまたは孫などに対して、贈与した財産のうち2,500万円までは非課税となり、非課税枠を超えた分の贈与について一律20%の贈与税が課税される制度です。

贈与財産の2,500万円までは非課税になるものの、将来相続となった場合、相続財産として贈与した時点の時価額で加算する必要があります。そのため相続税対策として利用する場合、将来相続が発生した際の価額が高額になる可能性があるものについて、相続時精算課税制度を利用して相続税の課税財産を減らす方法として利用されます。

ただし相続時精算課税制度を利用した場合、暦年課税制度と併用した利用ができず、一度選択してしまうと暦年課税制度を利用できません。また贈与する金額が毎年少額であっても贈与税の申告をしなければならないといった手間もありました。

2023年度税制改正の相続時精算課税制度の変更点として3つ挙げられます。

・年110万円の基礎控除
相続時精算課税制度を利用することで、毎年110万円の基礎控除を受けられるようになりました。そのため今まで暦年課税制度で行っていた相続税対策と同じことを、相続時精算課税制度で利用できるようになります。

・110万円の基礎控除額以内であれば申告不要
今まで少額であったとしても贈与税の申告が必要だったものの、新たに追加された110万円の基礎控除額以内であれば、贈与税の申告が不要になりました。現行の相続時精算課税制度よりも使いやすくなっています。

・災害によって被害を受けた金額分の控除
相続時精算課税制度を利用して贈与した財産のうち、災害などが発生して被害が出てしまった場合に、一定以上の被害であれば贈与した時の時価額から被害を受けた金額分を控除できるようになりました。改正前であれば、贈与時の時価額のまま相続財産に加算されていたため、現行の相続時精算課税制度よりも使いやすくなっています。

なお施行時期は、2024年1月1日以後の適用となります。

改正前から変わらない点として、2,500万円の非課税枠はあくまで贈与税がかからないものです。そのため相続が発生した際に相続財産として110万円を超える分を加算しなければなりません。また一度相続時精算課税制度を利用すると、暦年課税制度に戻せなくなる点も変わらないため覚えておくようにしましょう。

暦年贈与制度の相続財産への持ち戻し期間が亡くなる前3年から7年に延長

暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額に対して課税されるものの、110万円の基礎控除額以内であれば贈与税がかからない、または差し引いた金額に対して課税される制度です。

なお相続が発生した場合、亡くなる前3年以内の贈与した財産について、相続財産に加算しなければなりません。

暦年課税制度は、110万円の基礎控除枠があるため、毎年110万円以内の財産を贈与して、相続財産を減らすために活用することが多いです。

2023年度税制改正の暦年課税制度の変更点として2つ挙げられます。

相続財産への持ち戻し期間が7年
現行制度で3年間だった期間が、税制改正によって7年に延長されました。そのため暦年課税制度を活用して相続税対策を行おうとしても10年以上前からなど、かなり早い段階から始めなければ効果が少ないといえるでしょう。現行制度から見れば使いづらくなったと考えられます。

・亡くなる前4年から7年の間の贈与に100万円の控除を追加
相続財産への持ち戻し期間が3年から7年になったことに併せて、緩和措置として亡くなる前4年から7年の間の贈与に対して100万円の控除が追加されました。贈与された財産の合計額から100万円を控除することになります。

なお施行時期は、2024年1月1日以後の贈与からです。また生前贈与の加算対象期間は、次のように順次増えていくことになりました。

亡くなった時期生前贈与加算対象期間
2026年12月まで3年
2027年1月から12月まで最長4年
2028年1月から12月まで最長5年
2029年1月から12月まで最長6年
2030年1月から12月まで最長7年
2031年1月以降7年

教育資金の一括資金贈与は3年、結婚・子育て資金の一括贈与は2年、特例期間を延長

教育資金の一括贈与は、父母または祖父母などの直系尊属から、30歳未満の子どもまたは孫に対して学校や学校外に支払われる教育資金を贈与する場合、最大1,500万円(学校外の場合は500万円まで)までが非課税になる制度です。

また結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度は、直系尊属から、18歳以上50歳未満の子どもや孫に対して結婚や、出産、育児で支払われる費用を贈与する場合、最大1,000万円(結婚にかかる費用は300万円まで)までが非課税になります。

教育資金の一括贈与と結婚・子育て資金の一括贈与はともに、2023年3月31日までの贈与に限った特例措置でした。しかし2023年度税制改正によって、教育資金の一括贈与の適用期間が2026年3月31日までの3年間、結婚・子育て資金の一括贈与の適用期間が2025年3月31日までの2年間にそれぞれ延長されることになりました。

まとめ

2023年度税制改正によって、今後の生前贈与のやり方が変わると考えられます。現行制度では相続時精算課税制度は使いづらい制度だったこともあり、相続税対策をする場合暦年課税制度がよく利用されていました。しかし2023年度税制改正によって、相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が追加され、さらに110万円以内であれば申告の必要もなくなりました。

一方で、相続税対策として利用されていた暦年課税制度は、相続財産の持ち戻し期間が3年から7年になったことによって、たとえ亡くなる前4年から7年の間の贈与財産の合計額から100万円を控除できたとしても利用しづらい制度になったと考えられます。

そのため今後の生前贈与のやり方として、暦年課税制度よりも相続時精算課税制度の方が利用されやすくなったといえるでしょう。

最後に教育資金の一括贈与は3年、結婚・子育て資金の一括贈与は2年、それぞれ延長されることになったため、まだ利用されていない人は利用されることをおすすめします。