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「法定相続」と「法定相続人」の概念から相続手続きまでを徹底解説 – 相続の基本を完全マスター

相続の基本として、「法定相続・法定相続人」があります。今回はこれについて取り上げて、

・そもそも法定相続・法定相続人とは何か
・法定相続人の順番と判定基準
・法定相続人が遺産を受け取るときの条件とその手続き

について解説していきます。

法定相続・法定相続人とは何か

法定相続とは、「遺言書がないあるいは遺言書の内容が無効であるときに、法律に従って相続を行うこと」をいいます。また、「遺言書がないあるいは遺言書の内容が無効であるときに、法律に従って、亡くなった人の財産を受け継ぐことのできる人」のことを法定相続人といいます。言い方を変えれば、効力のある遺言書を作ったり、事前に生前贈与などのかたちでほかの人に遺産(となるもの)を譲ったりしていない限りは、亡くなった人の財産はこの「法定相続人」に受け継がれることになります。詳しくは後述しますが、法定相続人となるのは、亡くなった人の配偶者や血がつながった人です。また、本来法定相続人となりうる人がすでに亡くなっている場合は、その子どもなどが「代襲相続」として、法定相続人になることもあります。

もうひとつ押さえておきたいのが、「法定相続人には遺留分が認められる」ということです。遺留分とは、「たとえ法定相続人以外の人が遺産を受け継ぐ立場に指定されたとしても、法定相続人ならば一定の財産をもらうことができる」という制度および権利、またその割合を指す言葉です。たとえば、「Aが亡くなった。Aには子どもなどはいないが、Bという配偶者がいる。しかしAは、遺言書で、Aの昔からの親友であったCにすべての遺産を渡すと記してあった」というケースを想定しましょう。この場合は遺言書に従えばCがすべての遺産を引き継ぐことになりますが、配偶者であるBが申し立てれば、Bは2分の1の財産を引き継ぐことができます。なおこの「遺留分の割合」は、亡くなった人との関係性や、法定相続人の数によって異なります。

このように、法定相続人の立場はかなり強固なものです。ただし、「被相続人(亡くなった人)に対して虐待を加えていたり、重大と認められる侮辱を加えていたり、その財産を勝手に処分していたり、大きな犯罪行為をしていた過去があったりする場合は、その相続人から相続人の立場を奪うことができる」とも決められています。これは「相続排除」と呼ばれる制度であり、これの対象となった場合は、上で挙げた「遺留分」もなくなります。

法廷相続人の順番と判定基準

ここからは、「それでは、どのような立場にある人が法定相続人となるのか「法定相続人となる判定基準」について解説していきます。

配偶者

まず、「配偶者」は常に法定相続人となりえます。つまり、夫Aにとっての妻B、妻Bにとっての夫Aは、常に法定相続人になるということです。

この「配偶者」は、「戸籍で記された相手」に限られます。いわゆる「内縁の妻・内縁の夫(内縁関係)」の場合は、たとえ数十年の間夫・妻として生活をしていても、周りからも夫婦同然だと扱われていたとしても、法定相続人とはなりません。このような内縁関係にある人に遺産を渡そうとした場合は、遺言書を書いたり、生前贈与をしたりする必要があります。

子ども

次に、「子ども」について見ていきましょう。

これは少し難しく、「どのような立場の子どもか」によって異なります。

1. 婚姻関係にある父母の間に生まれた子ども……「嫡出子」となり、法定相続人となります
2. 婚姻関係にない父母の間に生まれた子ども……母親が亡くなった場合は法定相続人となりますが、父親が亡くなった場合に法定相続人となるかはケースバイケースです。父親がその子どもを認知していた場合は法定相続人となりますが、認知していなかった場合は法定相続人とはなりえません。
3. 普通養子縁組で養子となった子ども……法定相続人となりえます。この場合、子どもは、「養父母が亡くなったときの法定相続人」にもなりますし、「実父母が亡くなったときの法定相続人」にもなり得ます。
4.特別養子縁組で養子になった子ども……特別養子縁組は、普通養子縁組とは異なり、実父母との法律上の関係が絶たれます。そのため、養父母の法定相続人にはなりますが、実父母の法定相続人にはなりません。
5. 再婚相手の連れ子……再婚した相手と養子縁組を結んでいれば法定相続人となります。

ただし、「親が再婚したものの、養子縁組にはしていない」という場合は、再婚相手となった人が亡くなった場合の法定相続人にはなれません。

なお、嫡出子であっても非嫡出子であっても、普通養子縁組を組んだ子どもであっても特別養子縁組を組んだ子どもであっても、また再婚相手の子どもを養子縁組で養子にした場合であっても、法定相続分の割合自体は変わりません。

加えて、「亡くなったAには子どものCがいたが、子どものCはAよりも先に亡くなってしまった。しかしCには、遺児であるDがいる」という場合は、DがCに代わり、Aの遺産を引き継ぐことができます。これを「代襲相続」といいます。

亡くなった人に子どもや孫などの直系卑属がいない場合のみ、直系尊属である父母が法定相続人となりえます。

なお、あまりないケースではありますが、「亡くなったAには、配偶者Bがいるが、子どもはいない。Aの両親は亡くなっているが、Aの祖父母は存命中である」という場合は、配偶者に加えてAの祖父母も法定相続人となります。

兄弟

「亡くなったAには、子どもも孫もおらず、また父母(とさらにその上世代)もすでに亡くなっている。しかしAには、配偶者のBと、Aの兄弟姉妹であるEがいる」という場合は、Eも法定相続人となります。また、「Eもすでに亡くなっているが、Eには遺児であるFがいる」という場合は、FがEに代わってAの遺産を代襲相続することができます。しかし直系卑属・直系尊属の場合とは異なり、この場合は「Aにとっての甥姪」までしか引き継ぐことができません。つまり、「EもFも亡くなっているが、Fには子どもがいる」という場合は、Fの子どもはAの財産を引き継ぐ立場にはなりません。

なお、法定相続人は立場によって引き継げる財産が異なります。

・配偶者と子どもが2人…配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつ
・配偶者がいて、直系卑属がおらず、父母がいる…配偶者が3分の2、父が6分の1、母が6分の1
・配偶者がいて、直系卑属がおらず、直系尊属がおらず、兄弟が2人いる…配偶者が4分の3、兄が8分の1、弟が8分の1

法定相続人が遺産を受け取る条件と手続き

遺産相続の手続きは、以下の通りです。

1. 死亡診断書を受け取り、死亡届を出す
2. 遺産および遺書、相続人の確認をする。「法定相続情報一覧図」と呼ばれる、法定相続人がだれかであるかを証明できる制度を使うと便利である
3. 3か月以内に、相続を放棄するか、単純承認をするか、もしくは限定承認をするかを決める
4. 遺産分割協議を行い、遺産分割協議書などを作成する
5. 名義変更などを行う
6. 必要に応じて相続税を収める。なお、3000万円+法定相続人の数×600万円までにおさまるようであるならば、相続税を納める必要はない

「法定相続人」という考え方は、相続にもっとも基本となるものです。「自分たちの場合はだれが法定相続人となるのか」などを事前に確認しておくとよいでしょう。