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「おひとりさま」でも家族信託で希望の老後を送れる

生き方の多様性が認められるようになり、家族の形もさまざまな時代となりました。

結婚をしない人の割合も増え、熟年離婚を選択するケースも珍しいことではない今の日本では、老後を「おひとりさま」で過ごす人がこの先増えていくことが予想されます。

おひとり様が感じる将来の不安

おひとり様が感じる将来の心配事はいくつかあると思います。

その中でも、特に自身の老後のこと、そして死後の財産の行方については多くの方が不安を感じているのではないでしょうか。

家族がいれば誰かが何とかしてくれるかもしれませんが、おひとり様の場合はそう簡単ではありません。

そこで、今回、そのようなおひとり様の不安を軽減できるかもしれない「家族信託制度」についてみていきましょう。

「家族信託」のしくみ

家族信託は信託銀行などが有料で行っている信託業務とは違い、営利を目的としない信託です。

「信託」という言葉の意味は、様々な手続きや決定を包括的に他者に託すこと。

したがって、言葉通りにとらえれば、家族信託は、自分の意思を信頼できる家族に託すこと、となります。

家族信託という言葉から、血縁がなければ成立しないと思われるかもしれませんが、血縁者がいないおひとり様であっても、信頼できる友人・知人など第三者に自分の意思を信託することが可能です。

たとえば、おひとり様の不安に思うことのひとつが相続問題。

おひとり様が亡くなったあと、法定相続人がいない場合でも、家族信託というかたちで第三者に自分の意思を信託していれば、自分の希望に沿うかたちで財産の処分が可能となります。

信託銀行や信託会社との違い

「信託」といえば、信託銀行や信託会社などを真っ先に思い浮かべる人が多いかもしれません。

おひとり様であっても、そうでなくても、信託銀行などを利用して金銭面を管理してもらうことはもちろん可能です。ただし、銀行に信託できるのは、金銭の管理・運用だけです。

一方、家族信託では金銭の管理以外に日常の細事、身の回りのことについても信託が可能となっています。

また、信託銀行などへの信託ですと、生涯にわたり信託報酬などのランニングコストがかかり続けますが、家族信託ではランニングコストはかかりません。

これらの違いが、家族信託が注目され始めている要因のひとつかもしれません。

「おひとりさま」が家族信託を利用することでできること

家族信託を利用することで、多くのおひとり様が感じている次のことについて、不安を軽減できます。

老後の介護に関することや認知症対策など

本人の希望に沿った医療、介護を受けることが可能となります。

葬儀やお墓問題

おひとり様が何の意思も残さないまま亡くなると、死後の事務手続きを含め、葬儀やお墓問題がスムーズに進まないこともありますが、その問題もクリアできます。

相続対策

預貯金、株、不動産などの財産について、自分の希望に沿うかたちで譲渡、寄付などができます。通常、法定相続人がいないと財産が国庫へ帰属してしまう、つまり財産が国のものになってしまいますが、特定の誰かに譲ることや、寄付をすることなども可能となります。

家族信託はオーダーメイドで内容を作成しますので、本人の希望に合わせ、さまざまな内容を盛り込むことができます。

家族信託を作成することは、自分のこれからと向き合うきっかけにもなりそうです。

おひとりさまが家族信託を利用するときに注意すべきポイント

おひとり様でも家族信託を締結することで、自分の希望に沿った老後や、財産の管理・処分ができることは前述したとおりです。

ただし、注意すべき点もあります。家族信託には、身上監護権ありません。

身上監護権とは、判断能力がなくなった人に代わって契約や解約などの法律行為を代行できる権利です。

たとえば、自分が判断能力を失った状態で、病院への入院や介護施設への入所が必要な状態となったとき、家族、親類がいれば、本人の代理で入院や入所契約ができますが、まったくのおひとり様の場合には、家族信託だけではカバーしきれないのは事実です。この点については留意しておきましょう。

もうひとつ注意すべき点は、信託を受けた人への報酬の規定がないため、信託を受けた人が長期間にわたりその役目を担わなければならなくなったときに、人によっては負担と感じることがあるかもしれないということです。

特に、信託を受けた人が血縁者でない第三者の場合は慎重になる必要がありそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

おひとりさまが不安としてかかえている、老後問題と相続問題は家族信託制度により、軽減される部分が多い事がお分かりいただけたかと思います。

ただし、法律的な契約行為など、家族信託制度でカバーしきれない部分もあります。

制度を理解し上手に家族信託制度を利用できるといいですね。