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相続登記の義務化に関する完全ガイド:手順、期限、罰則規定、そして解決すべき問題点まで徹底的に解説



2024年の4月から、相続登記が義務化されました。
これにより、「相続登記をしなければならない期限」「相続登記を期限内にしなかった場合の罰則規定」が設けられました。

ここではこの「相続登記の義務化」をテーマに、

・相続登記に必要な手続きの方法とその流れ

・相続登記をしなかった場合のペナルティ

・相続登記に関する課題

について解説し、最後に相続登記のもたらす意味について解説していきます。

相続登記の意味と流れ、成立の背景について

「相続登記」とは、相続した不動産の名義人を変更~登録することをいいます。この相続登記は、2024年の3月までは、「○日以内にしなければならない」という規定が存在しないものでした。しかし2024年の4月以降は義務化され、それを守らなかった場合は罰則が与えられます(罰則規定については後述します)。

相続登記が義務化された背景には、「所有者が不明になっている土地が非常に多いこと」が挙げられます。

日本全土の約20パーセントが所有者不明の土地であり、九州全土よりも広い範囲の土地が「だれの物だかわからない状態」になっています。このような土地を放置しておくと、自然災害などが起きた時の救助の妨げになりますし、土地の有効活用もできません。このようなことから、相続登記の義務化がなされたのです。

相続登記の流れは、以下の通りです。

1.相続人を特定

まずは、「だれが相続人であるか」を特定します。この「相続人の特定」は、状況によって難易度が大きく異なります(後述します)。なお相続人の特定が難しい場合は、家庭裁判所に相談する必要があります。

2.不動産を確認

故人が持っていた土地や建物などの不動産を確認します。わかりやすい権利証などがそろっていれば楽ですが、そうでない場合は必要に応じて調査を行わなければなりません。

3.必要な書類の収集

相続登記に関係する書類を集めます。相続登記に関係する書類は、以下の通りです。

①遺言書……遺言書はもっとも重要な書類です。基本的には遺産は法定相続人(配偶者や子ども、孫、状況によっては親や兄弟姉妹、甥姪)が引き継ぐことになりますが、ほかの人(血のつながりのない第三者でもよい)が指定されていた場合は、その人に遺産を引き継がせなければなりません。※法定相続人は慰留相続分を請求できます

②亡くなった人の戸籍・除籍謄本(※2024年2月初旬現在では、今までの戸籍のあった住所の市町村すべてに請求しなければならなかったのですが、2024年3月からは本拠地以外でも取得できるようになります)

③相続する人の戸籍・除籍謄本

④そのほか、それ以外に必要な書類

4.申請書の作成

相続登記にあたり、登記申請書を作成します。なおこの登記申請書の様式などは、国のホームページで確認できます。

5.法務局に申請書を提出

法務局に登記申請書を提出します。なお、追加の書類がこの時点で必要になることもありますが、その場合は登記官の説明に従ってください。

ここまで、相続登記の流れについて解説してきました。

ただ相続登記に関しては、必要とされる書類が多いうえ、その手続きがかなり煩雑になることもあります。そのため、ほとんど知識のない人が一から自分で行うよりは、専門家の手助けを借りる選択肢の方が現実的です。特に「もめそうな土地がある」「親族にやっかいな人がいる」という場合は、初めから専門家の助けを借りましょう。

出典:東京ブロック管内法務局・地方法務局相続登記促進プロジェクト「【相続登記ガイドブック】相続登記の手続について(概要編)」https://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/content/001396081.pdf

相続登記を行った場合はどうなる? 知っておきたい罰則について

2024年の4月から始まる「相続登記の義務化」は、それまでとはまったく違う性質を持ちます。

大きな違いは下記の2点です。

・相続登記をしなければならない期間が定められた

・期間内に相続登記をしなかった場合、罰則が科せられる

それぞれ見ていきましょう。

2024年の3月より以前は、「相続登記は行わなければならないものだが、『○月○日までに必ず相続登記をしなければならない』と決められたものではありませんでした。つまり、「なんとなくめんどうだから、相続登記は後回しにしよう」「相続登記をしたことによって、固定資産税が発生するのは嫌だ」と考える人は、相続登記をなかなかしないことが多く、またしないことによる罰則もありませんでした。

しかし2024年の3月からは、「自分が不動産を取得したと知ったときから計算して、3年以内に相続登記をしなければならない」と定められました。さらにこの決まりは、「過去に引き継いだものに対しても例外ではない」とされています。

なおこの場合は、「自分が不動産を取得したと知ったときから計算して、3年以内」もしくは「2027年の3月31日」までのいずれか遅い方が期限として適用されます。

この「相続登記を行わなければならない期限」を正当な理由なく超過した場合、過料として10万円の支払いが求められます。「過料」は「罰金・科料」とは異なり、刑事罰ではありません。そのため、たとえ過料が課せられたとしても、前科がつくことはありません。ただそれでも、このように明確に「罰」が定められたのは、大きな違いといえるでしょう。

※「過料(カリョウ)」と同じ読み方の「科料(カリョウ)」も同じくお金を支払う制度ですが、科料の方は刑事罰であるため前科がつきます。混同しないように注意してください。

なお、「3年以内に相続登記を行わなければならない」とされていますが、その一方で、さまざまな状況からそれが難しいと判断される場合は、3年を超過しても咎められないケースもあります。いずれにせよ、早めに相談に行くとよいでしょう。

相続登記の義務化に伴う課題と、相続登記の義務化がもたらすもの

相続登記が義務化され、罰も設けられたことで、「きちんと相続登記を行わなければならない」と考える人は当然増えます。ただ、そのときに課題として出てくるのが、「相続人が分からない」「遺産の分割協議が長引く」という問題です。

「何十年も前に自分が相続したであろう土地はあるが、どこでどんなものだったかはっきり記憶にない……」「相続人と話し合わなければならないとされているが、次兄は20年も前に家を出て行って、それからだれも連絡をとっていない。生死さえ分からない」というような状況に陥っている人は、それほど少なくはありません。

ただこの場合でも、「その土地がどのようなところで、どんなものか」をはっきりさせなければ相続登記は進みません。また、たとえ連絡ができない環境になっていたとしても、法定相続人を排除して勝手に相続手続きを進めることはできません。

さらに、「相続人は全員そろっているが、意見が分かれている」という場合は、すり合わせができるまでしっかり話し合わなければなりません。

これを3年以内に行う必要があるため、今後「なんらかのトラブルを抱えている土地や財産、人間関係」がある人は、早め早めに今から動いておく必要があるでしょう。

ただ、相続登記の義務化は、「日本の国土の有効利用」「災害復旧を迅速に進める」という2点から考えた場合、非常に有用なものです。また土地を管理する側(相続する側)にとっても、土地の有効利用・売却・担保への設定などをできるようにするための初めのステップだといえます。