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2023年度税制改正で注目!暦年課税制度を活用した相続税対策の活用方法と注意点を詳しく解説

暦年課税制度は、相続税対策の1つとして利用を考えている人も多いのではないでしょうか?

相続税対策は10年以上前など早い時期から始めることで効果があります。本記事では、暦年課税制度を利用した相続税対策の活用方法や、注意点、2023年度税制改正について解説します。

暦年贈与について

暦年贈与は、1月1日から12月31日までの1年の間に受けた贈与において、贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからないため、その制度を利用した贈与方法です。毎年110万円以内であれば非課税で、自身の財産を移せるため、相続税対策として利用されています。また現金だけではなく、不動産や動産なども贈与の対象にすることも可能です。

例えば、暦年贈与を利用して配偶者に100万円、子どもに50万円を贈与する場合、110万円の非課税枠に収まっているため贈与税はかかりません。しかし子どもが同じ年度に父親から100万円、母親から50万円贈与を受けた場合、それぞれ110万円に収まっていると考えてしまいますが、子どもが受けた贈与は210万円となるため贈与税が発生してしまいます。

贈与税の税率は「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に分けられており、贈与する人が父母や祖父母などの直系尊属であり、贈与を受けた人が18歳以上の場合、特例贈与財産の税率が適用されます。税率は次のとおりです。

基礎控除後の課税価格税率控除額
200万円以下10%
400万円以下15%10万円
600万円以下20%30万円
1,000万円以下30%90万円
1,500万円以下40%190万円
3,000万円以下45%265万円
4,500万円以下50%415万円
4,500万円超55%640万円

例えば、祖父から孫に500万円を贈与するとしたら、次のような計算になります。

500万円-基礎控除額110万円=390万円
390万円×税率15%-控除額10万円=48万5,000円

つまり500万円を贈与すると、48万5,000円の贈与税が発生します。

暦年課税の活用方法と注意点

暦年課税制度を利用して、毎年110万円以内を贈与する場合、贈与契約書を作成しておく方が良いです。贈与契約は口頭で成立するものの、相続税対策として利用する場合、税務調査が行われた際に事実を主張できます。

贈与契約書は、「いつ」「誰から」「誰に」「いくら」贈与したのかを示すものです。贈与契約書の内容は次のような内容で作成すると良いでしょう。


贈与契約書

贈与者○○(以下、「甲」という)と受贈者□□(以下、「乙」という)は、以下のとおり贈与契約を締結した。

甲は、現金○○万円を乙に贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

上記契約を証するため本契約書を作成し、各自署名押印する。

令和〇年〇月〇日

贈与者(甲)

住所を記載する

氏名を記載し押印する

受贈者(乙)

住所を記載する

氏名を記載し押印する


贈与契約を締結する際の注意点として「名義預金」と「定期贈与」と見なされないようにすることが重要です。

名義預金は名義上子どもの預金ではあるものの、実質的な持ち主が親の場合であり、税務調査において相続税を回避するために名義を子どもにしただけと見なされてしまいます。相続税が課税される可能性があるでしょう。

定期贈与は相続税対策のために10年に渡って毎年110万円ずつ贈与することを約束した場合であり、税務調査において贈与税を回避するために1,100万円の贈与を10年に分けただけと見なされてしまいます。その場合、贈与した最初の年に1,100万円の贈与があったものとして課税されます。

贈与契約書を作成する場合、贈与した現金は贈与を受けた人が使える状態にし、また贈与は毎年同じ日付にしないようにしましょう。毎年同じ日付にしてしまうと定期贈与とみなされる可能性があります。

暦年課税制度と併用できるその他の贈与税の非課税制度

相続税対策として利用できる暦年課税制度は、その他の贈与税の非課税制度と併用することが可能です。併用できる非課税制度として4つあります。

・贈与税の配偶者控除
・住宅取得等資金の非課税制度
・教育資金の一括贈与
・結婚・子育て資金の一括贈与

贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用不動産や居住用不動産を取得するための費用の贈与が行われた場合、基礎控除額110万円の他に最高2,000万円までが控除できます。

住宅取得等資金の非課税制度では、父母や祖父母などの直系尊属から居住用家屋の新築や取得、増改築などの対価に充てる費用を取得した場合、省エネなどの住宅であれば1,000万円、それ以外の住宅が500万円までの贈与が非課税となります。

教育資金の一括贈与は、父母や祖父母などの直系尊属から子どもや孫へ授業料などの教育費を贈与した場合、最大1,500万円まで非課税にできます。なお利用する場合、信託銀行などの金融機関に拠出して行わなければなりません。

結婚・子育て資金の一括贈与は、父母や祖父母などの直系尊属から子どもや孫へ結婚にかかる費用や妊娠、出産、育児にかかる費用を贈与した場合、最大1,000万円までを非課税にできます。なお教育資金の一括贈与と同様に、信託銀行などの金融機関に拠出して利用しなければなりません。

暦年課税制度は以上の4つの制度と併用することが可能です。なお暦年課税制度と併用できない制度として、相続時精算課税制度があります。相続時精算課税制度は、父母や祖父母から20歳以上の子どもや孫に贈与された財産の2,500万円までの贈与税が非課税になります。しかし相続時に相続財産として加算するため、相続税が発生します。

また一度相続時精算課税制度を選択すると暦年課税制度に戻せないため注意が必要です。

2023年度税制改正について

暦年課税制度は、2023年度税制改正において変更されることになりました。変更点として次の2つがあります。

・相続財産への組み入れ期間が7年以内
・亡くなる4年から7年以内の贈与に100万円の控除額が追加

暦年課税制度では、亡くなった3年以内の贈与財産が相続財産へ組み入れられています。その期間が7年に延長されます。ただし緩和措置として亡くなる4年から7年以内の贈与は、100万円の控除額が追加できるようになります。

例えば、1人に10年間暦年課税制度を利用して110万円の贈与を行った場合、現行制度であれば、770万円分の相続財産を減らせました。しかし2023年度税制改正によって7年以内に延長されることになるため、1,100万円-770万円-控除額100万円=430万円分しか減らせなくなります。

暦年課税制度は利用しやすい制度であり、早い時期から始めることで相続税対策としての効果も大きい制度です。しかし2023年度の税制改正によって、その効果は薄くなってしまいます。もし今後利用していくためには、10年以上前から早いうちに暦年課税制度を利用できれば、薄くなる効果を和らげることにもなるでしょう。