相続対策には手間と時間がかかることが多いため、多くの人が後回しにしてしまうことがあります。しかし早いうちから相続対策を始めることで、「あの時から始めといて良かった」というような将来的に大きなメリットにつながります。
本記事では、相続を面倒と思っている人に向けて、相続対策を早めに始めることの重要性についてご紹介します。
相続対策をしなかった場合のリスク
もし相続対策をしなかった場合に起こりうるリスクとして2つあるため、それぞれご紹介します。
相続税がかかる可能性がある
相続する財産が多い場合、相続税が発生する可能性があります。相続税には基礎控除があり、その控除額以内であれば相続税がかかりません。
相続税の基礎控除は、3,000万円+(600万円×法定相続人)で計算します。もし法定相続人が3人であれば、基礎控除額が4,800万円となるため、4,800万円以下の財産であれば相続税がかかりません。
相続する財産や相続人の数によっては、相続対策することで相続税を回避できたり、相続税を減らしたりすることができます。
相続人同士の争いが起こる可能性がある
相続対策をしなかった場合、相続人同士でトラブルの発生や、紛争にまで発展する可能性があります。例えば、住んでいる自宅不動産を相続する場合、配偶者が相続することが多く、もし預貯金や生命保険といった現金になるようなものがなければ、他の相続人と分割するのが難しいため、トラブルになることがあるでしょう。
相続人同士のトラブルが起きてしまうと、相続の分配が長引くことで、手続きが思うように進まず、相続税の支払いに間に合わなくなるような事態もあります。しかしあらかじめ相続対策を行っておけば、相続時に起きる可能性のある相続人同士のトラブルの回避が可能です。
早めに相続対策を始めるメリット
相続対策を早く始めることで、自分自身に万が一のことが起きたとしても、残された家族は相続によるトラブルを未然に防ぐことができる可能性があります。主なメリットとして3つご紹介します。
時間的余裕ができる
早いうちに相続対策を始めれば、自分が高齢になって亡くなるまでに時間的余裕ができます。期間をかけて法定相続人となる親族に贈与を行うことで、相続財産を減らす相続対策が行えます。
また早いうちに自身が保有する財産の価値を確認して、財産目録を作成し、遺言書を作ることで万が一に備えられるでしょう。ただし、財産価値は変動するため、定期的に遺言書の見直しが必要になるため注意が必要です。
相続税対策によって税の軽減につながる
相続税対策をすることで、本来かかるはずの税金が相続税の基礎控除以下に納まったり、基礎控除を超えてしまったとしても税負担の軽減につながったりします。相続税対策の方法として、例えば、生命保険の死亡保険金には非課税限度枠があるため、それを利用することで、現金や預貯金として受け取るよりも非課税限度枠分少ない計算となります。
なお生命保険の非課税限度枠は、500万円×法定相続人の数で計算します。
また相続税は原則現金納付となるため、相続税が支払えるように現金化しやすいものを相続させることも対策となります。
相続対策によって相続人同士のトラブルを未然に防げる
相続対策を早めに行うことで、相続人同士で起こりやすいトラブルや、紛争を未然に防ぐことが可能です。相続人同士で起こりやすいトラブルとして、分配しづらい相続財産しかない場合があります。例えば、不動産を多く所有しており、現金や預貯金、生命保険の死亡保険金などがない場合です。
不動産で相続税対策する人が多いため利用されやすいものの、相続税対策して残された家族への相続対策をしていなければ意味がありません。現金がなければ相続人同士のトラブルにもなりやすいため、不動産による相続税対策とともに、死亡保険金を準備するなど現金化できるものも相続対策として事前に行っておくと良いでしょう。
また相続財産の資産価値を調べて財産目録を作成し、その上で遺言書において、相続の取り分を明記することもトラブルを防ぐ方法となります。ただし遺言書作成にはルールがあるため注意が必要です。
相続対策の方法
相続対策の方法として、「遺言書の作成」や「贈与による相続税対策」があります。
遺言書とは、自身が亡くなって残された家族が財産を相続する場合、その財産をどのように分けるのかの意志を示した法的拘束力のある文書です。あらかじめ遺言書を作成しておくことで、相続人同士で起こりやすいトラブルや紛争を未然に防げます。
ただし、遺言書の作成には法律に規定されたルールがあります。もし法律の規定に則っていなければ、法的拘束力のない書面となってしまい、その記載内容によってトラブルが発生する可能性もあるため、書き方には十分注意して作成するようにしましょう。
贈与による相続税対策は、贈与税には1年間に贈与を受けた金額が110万円以下であれば贈与税がかからないため、その非課税枠を活用した方法です。毎年贈与を続けることで、相続財産を減らすことができるため、相続税の負担を減らせます。
贈与するにあたって、毎年贈与契約を結ぶ必要があります。ただし例えば毎年110万円ずつを10年間にわたって贈与すること決めた場合、「定期金給付契約」とみなされて、契約した時点に10年間分の1,100万円の贈与契約したものとなり、多額の贈与税がかかってしまうため注意が必要です。
「遺言書の作成」や「贈与による相続税対策」はあらかじめ専門家に確認するなど、適切に対策ができるようにすることが大切です。
相続対策は今すぐにでも行うべき
相続対策は、相続対象となる財産価値を調べたり、贈与による相続税対策を行ったりする場合、手間と時間がかかってしまいます。その手間と時間から、多くの人が後回しにしてしまうことが多いです。
しかし早いうちから相続対策を始めることで、自分が亡くなった後に配偶者や子どもたちが相続によるトラブルになることを未然に防ぐことができます。相続によって起こりうるリスクを回避し、家族の幸せを守るためにも、相続対策を早めに始めることをおすすめします。