家族が亡くなったとき、残された家族にとって必要な手続きはたくさんあります。
故人が締結していた契約の名義変更もその一つです。
頻繁に行うことではないため、手続き方法がわからない方も多いでしょう。
この記事では、死亡後に必要な契約名義の変更について、手順や注意点を解説いたします。
死亡後に問題になる契約名義の変更とは
契約者本人が亡くなったとき、民法では「相続人が財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めています。
相続する権利義務は、契約上の地位も含まれます。
何らかの契約をしたまま契約者が死亡すると、原則として相続人が契約を引き継ぎます。
普通に生活しているだけで、人は案外多くの契約をしています。
契約者が亡くなった場合は、名義変更または解約をしなければなりません。
名義変更または解約が必要な契約には、以下のようなものがあります。
・賃貸契約(賃借人・賃貸人それぞれ)
・電話・携帯電話
・公共料金
・インターネット回線・プロバイダ
いずれも世帯主が契約者となることが多い契約です。
家族が引き続き利用する場合には、忘れずに名義を変更しましょう。
死亡後に故人の契約名義を変更する初心者向け手順
ここでは、死亡後に必要な契約名義の変更方法を具体的に解説します。
賃貸契約の名義変更方法
賃貸契約は、賃借人(借りている人)と賃貸人(貸している人)が存在します。
それぞれの立場での名義変更手順を説明していきます。
賃借人の場合
1. 新賃借人を決める
賃借人が亡くなった場合、借りる権利は相続人が引き継ぎます。
相続人が複数いる場合は話し合いで、新賃借人を決める必要があります。
2. 賃貸人に通知する
契約者の死亡後、賃借人としての地位は当然に相続されます。
賃貸人への通知義務はありませんが、トラブルを防ぐためにも連絡はしておきましょう。
賃貸契約書を作り直し、名義変更しておくと安心です。
3.支払方法を変更する
賃借人の名義変更が終わったら、家賃の支払い方法を変更します。
契約書に定めがない場合、支払方法は賃貸人と相談して決めることになります。
賃貸人の場合
1. 新賃貸人を決める
賃貸人が亡くなった場合、その地位は相続人が引き継ぎます。
相続人が複数いる場合は話し合って、新賃貸人を決める必要があります。
2. 賃料の振込先を変更する
賃料が故人の口座に振り込まれてしまうと、払い戻しの手続きが必要です。
新賃貸人が決まったら、まずは賃料の振込先を決めましょう。
3. 賃借人に通知する
賃貸人が変わったこと、振込先情報を賃借人に通知します。
相続により賃貸人が変わったことがわかる覚書を締結しておくとトラブルが少なくなります。
電話・公共料金やインターネット関連契約の名義変更方法
固定電話や携帯電話、電気やガス・水道を継続して利用する場合は、名義変更が必要です。
また、インターネット関連の契約は、回線業者とプロバイダそれぞれに名義変更の連絡が必要です。
1. 各サービス機関に連絡
名義変更を行いたいサービス機関に連絡し、契約者死亡のため名義変更をしたい旨の連絡をします。
手続きの際、お客様番号等の識別番号が分かるとスムーズに行えます。
固定電話 :NTT(東日本・西日本)
携帯電話 :契約しているキャリア
電気・ガス :契約している会社
水道 :自治体が管理している水道局
インターネット:回線業者とプロバイダ(セットの場合あり)
2. 必要書類を提出
名義変更には、
・契約者死亡の事実を証明する書類
・契約者と新契約者との相続関係が確認できる書類(戸籍謄本など)
・新契約者の本人確認書類
が必要です。
その他、所定の届け出書類が必要な場合もあります。
3. 支払方法を変更
名義変更が行えたら、支払方法を変更します。
口座引き落としまたはカード払いとする場合、手続きが完了するまでにタイムラグがあります。
名義変更後1~2回程度は、請求書を送付してもらいコンビニ等で支払うことになります。
故人の契約名義変更で失敗しないために
契約名義の変更で分からないことがあれば、放置せず契約相手や専門家に相談することが大切です。
特に例外のある契約や複雑な契約は、注意して名義変更の手続きを行うようにしましょう。
死亡時に契約を引き継がない契約もある
契約は原則として相続の対象になりますが、原則にはいくつか例外があります。
例えば、契約時に「死亡時に相続人に契約を引き継がない」という内容に合意の上契約した場合、契約が引き継がれることはありません。
アパートなどの賃貸借契約で契約を引き継がない場合は、契約者の死亡後は契約を解除しアパートを引き払う必要があります。
マンションでの回線・プロバイダ契約は複雑
マンションでのインターネット関連の契約方法は次のように様々です。
契約方法が分からない場合、管理会社に問い合わせれば教えてもらえます。
・建物全体で回線・プロバイダ共に契約している場合
・建物全体で回線を契約・プロバイダは個人契約
・回線・プロバイダ共に個人契約
また、建物全体で回線・プロバイダ共に契約していても、個別に回線・プロバイダ契約をしている場合もあります。
契約書は1冊のファイルなどにまとめておくと安心
公共料金の利用など、「契約」と意識をせずに使っていることがあります。
いざという時に慌てないために、契約書は1冊のファイルにまとめておくと安心です。
大切な人が亡くなったときでも、やらなければならない手続きはたくさんあります。
1つずつ確実に対応していけるよう、日頃から大事な契約は家族・親族で共有出来るようにしておきましょう。