遺言は書き残すだけでなく、所在を明らかにしておくことが重要です。相続の分配が終わったあとに、遺言書がみつかると決定した遺産協議は無効となる場合があり、色々な手続きが必要となります。遺言書はどこに保管しておけばよいでしょうか?ここでは公的機関、公証役場や法務局で遺言書を保管する方法と、遺言書を確認する方法について説明します。
遺言書の種類と保管方法
遺言書は亡くなる前に、自分の意志をまとめて文書にしたものです。遺言書はエンディングノートと違って法的効力があり、死後に自分の希望が叶えられます。相続において、大きな法的効力を発揮するので、書いたあとは信頼できる人、場所に保管しておくべきでしょう。保管者が遺言書を公にしなければ、「遺言は無い」ものとして、相続の手続きが進行してしまいます。従って書きあげた遺言書を誰に保管してもらうか、どこに保管しておくかは終活において、大変重要な問題なのです。遺言書は手書きで作成する「自筆証書遺言」、公証人が作成する「公正証書遺言」、遺言の有無だけを証明する「秘密証書遺言」の3種類があり、保管方法としては以下の3つがあげられます。
信頼できる人に預ける
遺言書を書いた本人がそのまま保管する例もありますが、万が一のことを考えて、他者に預ける人が多いようです。この場合、破損、紛失、改変、破棄、隠匿のリスクが高い、とされています。これらのリスクを防ぐため、有料で弁護士に預ける人もいます。
公証役場で保管する
「公正証書遺言」は公証役場で遺言者の口述をもとに公証人が作成するので、原本をそのまま公証役場に保管します。謄本(写し)が渡されるので、自分で保管するか身内に保管させます。
法務局で保管する
自筆証書遺言を法務局の遺言保管所で保管できます。遺言書原本は死後50年間、データは150年間保管されます。紛失や破損、改変がないので安心です。遺言者には保管証が渡されます。
公証役場や法務局で遺言書を保管、確認する方法
遺言者がこの世を去ったあと、家族、遺族は遺言の有無を確認しなければなりません。日頃から遺言があることを話しておいたり、保管証を見せたりしておくことが大切です。エンディングノートには遺言の有無を正しく記載しておきます。遺言の存在を秘密にしておきたい人は秘密証書遺言を残しておき、遺言があることを証明してもらいます。遺族は秘密証書遺言を元にどこかに保管されている遺言を探し当て、相続の法的資料とします。公証役場で作成した公正証書遺言は相続者が請求すれば、遺言の有無を確認できます。法務局で保管された自筆証書遺言を確認するには、遺言書情報証明書の交付を願い出ます。
公証役場や法務局で遺言を保管するメリット・デメリット
公証役場や法務局に遺言を保管しておくと、遺言者が死亡するまで、相続人の目に触れません。謄本や保管証が残っていれば、遺族はすぐに遺言の有無を確認できます。遺言を預けている間は、紛失、破損、改変の心配がなく、安全に保管してもらえます。公証役場、法務局に保管された遺言は遺言者の死亡後、家庭裁判所での検認が必要ありません。相続人が全員揃えば開封できます。また法務局は遺言者の死亡が分かれば通知してくれるシステムとなっています。公的機関に遺言を保管するデメリットは費用がかかること、です。公証役場は16,000円以上の手数料がかかり、証人が2人必要です。法務局は公証役場よりも若干お得に利用できますが、作成時に遺言内容のチェックはありません。
まとめ
遺言の保管は自己保管、人に託す、公証役場や法務局に預けるなど、複数の方法があります。公証役場、法務局は紛失、破損、改変の心配がなく、正しい遺言を残しておけます。遺言書は公証役場、法務局に預けられたものであれば、すぐに確認でき、家庭裁判所での検認も必要ありません。遺言の保管場所を示しておくことは、終活においてとても重要な必須項目です。遺言書を預けた際の保管証と合わせて、正しくエンディングノートなどに記してください。