大切な家族が亡くなった時、故人が遺言書を残している場合があります。こういった遺言書の内容を実行するためには、遺言執行者と呼ばれる人物が必要になるのですが、ときにこの遺言執行者を選任するために家庭裁判所への申立てが必要となる場合があります。今回は、家庭裁判所への遺言執行者の選任申立て方法についてご紹介します。
遺言執行者とは
遺言執行者とは、相続財産の調査や財産目録の作成、被相続人の預貯金口座の解約など、遺言書に記載された相続内容を実現させるために必要な手続きを行う人物のことを指します。
未成年者と破産者以外であれば誰でもなることができるため、極端な話、相続人であっても遺産執行者になることができますが、遺産相続には様々な手続きが必要で、相続に詳しい人でなければスムーズに進めることが難しいため、弁護士や行政書士といった法律の専門家が行う場合が多いです。
遺産執行者の選任は必ずしも必要なわけではありませんが、先ほどお伝えしたように相続手続きが煩雑であったり、相続人の廃除など遺言執行者のみに権限のある手続きも存在します。そのため、遺産執行者が選任されていると相続の手続きをスムーズに進められるというメリットがあります。
家庭裁判所への遺言執行者の選任申立て方法
遺言執行者の選任方法には大きく2つあり、1つは遺言者が遺言の中で遺言執行者を指定する方法。もう1つは、家庭裁判所で遺言執行者の選任を申立てる方法です。今回は後者の方法について詳しくご紹介していきます。遺言書が見つかったけど、遺言執行者が指定されておらず、専門の方に相続の手続きを依頼したいという方は、この方法を参考にしてみてください。
まず、申立てに必要な以下の書類を準備しましょう。
・申立書(裁判所HPに書式があります)
・遺言者の死亡の事実が記載されている戸籍(もしくは除籍、改製原戸籍)謄本
・遺言書の写し
・遺言執行者候補者の住民票(もしくは戸籍の附票)
・被相続人との利害関係を示す資料(親族の場合は、戸籍謄本など)
戸籍関係の書類で、申立て前に準備が難しいものがある場合には、申立て後に追加で提出しても問題ありません。
書類の準備が出来たら、遺言者が最後に住んでいた地に存在する家庭裁判所へ申立てを行います。この時、申立てを行うことができるのは相続の利害関係者(相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた人物など)に限られますので、注意してください。また申立て費用として、収入印紙代800円と家庭裁判所から申立て者への連絡用の郵便切手代が必要になります。
申立て受付後は、家庭裁判所での審理ののち遺言執行者が選任され、申立人と遺言執行者本人に審判書が送付されます。審判書は、その後相続手続きを行う際に自身を遺言執行者として証明する書類になりますので、大切に保管しておきましょう。
遺言執行者を選任する際に注意したいこと
裁判所へ提出した書類の内容に特段問題が無ければ、遺言執行者の候補者がそのまま遺言執行者に選任されます。
ここで抑えておきたいポイントは、選任された人物は遺言執行者への就任を拒否することができるという点です。自分たちが希望した人物を候補者として申立て、無事選任されたとしても、その人物に就任を拒否されては意味がありません。
こういったことを防ぐためにも、事前に候補者の承諾を得てから申立てるようにしましょう。
また、相続などで得た財産の合計額がその基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要となります。相続税の申告は被相続人が亡くなった事実を知った翌日から数えて10か月以内に行うことが定められており、これを過ぎてからの申告になってしまうと、罰則として無申告加算税が課税されてしまいます。
こういった事態を避けるためにも、遺言執行者の選任は速やかに行い、相続税の申告が期限内に完了できるようにしましょう。
まとめ
今回は家庭裁判所への遺言選任者の選任申立て方法についてご紹介しました。
遺言執行者はスムーズかつ、きちんと遺言にのっとった相続を行う上で必要不可欠な存在です。被相続者が多くの財産を所有していた場合などは相続人同士でトラブルになる場合もありますので、そういった方はこの記事を参考にしていただき、遺言執行者の選任を検討してはいかがでしょうか。