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親族がいない独身者の遺産問題 – 配偶者や子供がいない場合、遺産はどのように扱われるべきか?

「自分が死んだら、そのまま配偶者や子どもが遺産を受け取ってくれればいい」

「自分はいわゆる『おひとりさま』だったが、兄弟姉妹がいるし甥と姪もいるので、彼らがそのまま遺産を引き継いでくれればいい」

「親戚縁者はだれひとりとして残っていない本当の天涯孤独だが、つつがなく老後を過ごせるだけの預貯金はある。余ったものはそのまま国庫に取り込まれるかたちで構わない」

このように考えている人の場合、遺言書を作る必要性や遺産に関する契約を結ぶ必要性は極めて薄いといえます。

しかし特定のだれかに遺産を引き渡したいと考えた場合、遺言書を作ったり契約を結んだりする必要があります。

今回はこのうちの「契約」に注目をし、遺産に関係する契約を2つ紹介します。

死因贈与の契約とは? その意味とメリット・デメリット        

死因贈与とは、「財産を渡したい側(以下『贈与側』)と財産を受け取る側(以下『受贈側』)が生前に契約を結び、贈与側が亡くなった場合に受贈側に財産がいくようにすること」をいいます。

これは「相続」「遺贈」とは似て非なるものです。

「相続」は、法定相続人のみを対象とした手続きです。そのため、「自分の面倒をみてくれた甥の子ども」「最後まで介護をしてくれたホームヘルパー」「自分を助けてくれた病院」などのような法定相続人以外を対象とすることはできません。

また、法定相続人は当然に相続の対象となりますから、受贈側の意思表示は必要としません。

「遺贈」は、法定相続人以外を財産を受け継がせる対象とできるという点では死因贈与と同じです。ただし遺贈の場合は贈与側が一方的に相手を指定できます。死因贈与の場合は受贈側の意思も必要ですから、この点で違いがみられます。

また、死因贈与の場合は「条件付きで遺産を譲る」というやり方をとることができます。「負担付死因贈与(契約)」と呼ばれるもので、「最後まで介護をしてくれたら遺産を渡す」「自分の死後、残していくペットを最後まで面倒をみてくれること」などの条件を履行することを遺産を受け取る条件とするものです。

負担付死因贈与は、遺産をひとつの「取引の材料」とするものです。「遺産を渡す」という条件で介護などをお願いした場合、受贈側が介護を放棄する確率は極めて低くなります。

また受贈側にとっても、贈与側の心変わりで「やっぱり遺産を渡さない」などのように言われることがなくなるというメリットがあります。

ただし、不動産を遺産とした場合、税制面で不利になるというデメリットがあります。

家族信託契約とは? その意味とメリット・デメリット                   

家族信託契約とは、「自分自身で財産を管理することが難しくなったときのために、財産を管理する権限を家族に与える契約」のことをいいます。

認知症などを患ったときのために設定するものであり、他人などに財産の悪用・搾取をされることを防ぐために結ばれるものでもあります。

権限を与えられた人(受託者)は、財産の管理を与えた人(委託者)の財産を責任を持って運営・売却・管理する義務を負います。

家族信託契約の受託者としてよく選ばれるのは、子どもや孫などです。彼らは遺産を受け取る法定相続人でもありますが、家族信託契約における受託者となることもできます。

受託者は、財産の運営・売却・管理によって得た利益を、委託者に渡すことになります。

また、受託者自身も利益を得ることが可能です。

加えてこれは、一般的な「遺言書での財産分割」とは異なるメリットを持ちます。

上では「認知症を患ったときのために設定するものとして、家族信託契約がある」としました。認知症を患った人の財産は、そのままにしておくと凍結されてしまいます。しかし家族信託契約をすることで、受託者が財産の管理ができます。

また、認知症を患った人のために「成年後見人制度」がありますが、家族信託契約の方がかかる手間が少なく、財産管理の自由度も高いといえます。

さらに、「自分の財産を、自分の思った人に与えられる」というメリットもあります。家族信託契約の場合は、2代目・3代目の人を受益者(利益を得る人)に設定することが可能なのです。

たとえば、「配偶者には婚姻歴があって、前の妻との間に子どもがいる。しかし自分が死んだ後の財産をそのまま夫と子どもに渡してしまうと、夫が亡き後には前妻との間の子どもにまで自分が作った財産が行くことになってしまう。自分の実の子どもにだけ財産を渡したい」という希望も叶えることができます。「受益者である夫が亡くなったら、次の受益者は自分の実の子どもとする」などのように設定することができるからです。

遺産に関する話や契約は、なかなか難解で入り組んでいるところが多いといえます。

しかしこれらの性質を知り、適切に利用していくことで、自分の望むかたちでの財産の継承を行うことができるようになるでしょう。