厳選 厳選

資産を円滑に承継するなら死因贈与契約 – その仕組みや特徴、活用メリットデメリットを詳しく解説

相続や贈与は、非常に複雑です。「自分の資産を、Aに引き継がせたい」という状況は同じでも、「どのようなタイミングで」「どのようなやり方で」引き継がせるかで、取るべき選択肢は異なってくるからです。

ここでは主に「死因贈与契約」に注目し、その特徴やメリットデメリットなどについて解説していきます。

死因贈与契約の意味と、似た言葉との違いについて

「死因贈与契約(しいんぞうよけいやく。死因贈与とも)とは、ごく簡単に言うのであれば、「財産を渡す側が息を引き取った時点で、事前に定めていた財産を受け取り手側が受け取る」というものです。

これと似た言葉として、

・相続

・生前贈与

・遺贈

があります。

この単語との違いについて解説していきます(長くなるので、遺贈については別項を設けます)。

・相続……受け取り手側が財産を受け取るタイミングは、「財産を渡す側が息を引き取った時点」です。死因贈与は渡す側が受け取り手側を指定することができますが、相続の場合は法定相続人が受け取ることになります。

・生前贈与……この2つの違いは、「タイミング」にあります。名称からもイメージしやすいかと思われますが、生前贈与は「譲る側が生きているうちに行うもの」であり、死因贈与契約は「譲る側が亡くなってから行われるもの」です。

間違いやすい「遺贈」と「死因贈与契約」の違い

上記では、「相続と死因贈与契約の違い」「生前贈与と死因贈与契約の違い」について解説してきました。

ここからは、「遺贈と死因贈与契約の違い」について解説していきます。

「遺贈」と「死因贈与契約」は非常に似通っているものです。そのため間違えやすいものだといえるでしょう。遺贈も死因贈与契約も、「亡くなった後に、受け取り手側に財産が行く」という点では同じです。

ただ、それ以外の点では大きく異なります。

1. 死因贈与契約では受け取り手側の意思表示を必要とするが、遺贈では必要としない

遺贈と死因贈与契約のもっとも大きな違いは、「遺贈の場合は受け取り手側の意思表示を必要としない点」にあります。死因贈与契約では譲る側と受け取り手側の双方の合意が必要ですが、遺贈の場合は受け取り手側の意思表明は必要ありません。

譲る側が遺言書で「Aに全財産を残す」とした場合、Aは「受け取ります」と表明していなかったとしても受け取り手側になります。しかし死因贈与契約の場合は、譲る側と受け取り手側(この場合はA)の合意が必要となります。

2.死因贈与契約では取り消しが認められないこともあるが、遺贈の場合は取り消しが可能

また、遺贈の場合は「Aに財産を残す」とした遺言書が必要となりますが、死因贈与契約の場合は契約書は必要ありません。「死因贈与『契約』」としていますが、口約束でも成り立つわけです。

なお遺贈において重要な意味を持つ遺言書ですが、これは何度でも書き直すことができます。死因贈与契約の場合も基本的には取り消しができますが、「負担付き死因贈与契約(後述します)」の場合は取り消しが認められないこともあります。

3.死因贈与契約と遺贈では年齢の縛りが異なる

遺贈の場合、遺言書の作成が「15歳未満の者はできない」とされています。対して死因贈与契約の場合は、「未成年の場合であっても、法定代理人が代理するあるいは同意を行うのであれば契約を結ぶことはできる」とされています。また、法定代理人の代理あるいは同意なくして行われた死因贈与契約に関しては、法定代理人がこれを取り消すことができます。

なおこれ以外にも、不動産の登記を行う際の手続きなどにも違いがみられます。

死因贈与契約のメリットとデメリット

死因贈与契約の場合、「負担付き死因贈与」という方法を取ることができます。これはごく簡単に言うのであれば、「介護をしてくれて最後まで看取ってくれたのなら、財産をあなたに渡すよ」などのように条件を付けて交わす死因贈与契約のことです。

これにより譲る側は自分の意思と老後の世話(など)を受け取り手側に託すことができます。またこの負担付き死因贈与の場合、負担の一部あるいは全部が履行された場合、たとえ譲る側が撤回しようとしても撤回が認められないため、受け取り手側が「ちゃんと面倒をみたのに遺産をもらえなかった!」などのようになることもありません。

双方の意思と働きが反映されやすいかたちだといえるでしょう。

「死因贈与契約の場合、契約書がなくても成立する」という特徴があります。しかし口約束はトラブルになりやすいため、基本的には契約書を作成するべきです。

なお税制面においては、「死因贈与契約の方が、遺贈に比べて不利になる」という点も押さえておくべきでしょう。

死因贈与契約にも相続にも遺贈にも生前贈与にも、それぞれメリットとデメリットがあります。「自分たちにより適した方法はどれか」と考えから選ぶべきでしょう。